第10話 天才魔法使い、国力を強化する

「おはよー」


「今日のお昼ご飯はなんじゃ?」



 お昼を食べるために食卓に座っていると、目をこすりながらルカとシエラが歩いてきた。



「そんな夜更かししてると身長伸びないぞ」


「う~ん。女の子って身長必要?」



 このぐらいの年ならそう言うの気にするものだと思ってたんだけどな。失敗だったか。



「リク殿、二人にも後で話しておいてくれないか」


「分かりました」


「「何の話(じゃ)?」」


「リク様が持ち帰った資料の話」



 お昼を食べ終えて、二人に話してみた。



「そんなことがあったんだ……」


「それは大変じゃな」



 ルカはともかくシエラの反応うっすいな。



「まぁ、主様と一緒に行動してるせいじゃな。真面目な話、主様が勝てないような敵が現れたら妾は普通に諦めるぞ」


「リク様の傍にいてそんなことはあり得ない」


「確かにそうだね。心配するならお兄ちゃんがいない間の国の方?」



 毎回思うけど、皆僕のこと過剰評価しすぎだと思う。



「そこなんじゃ。リク殿が付いているルカはともかく、国の兵力が今のままでは心もとないのだ」


「そこでリクにお願いがあるんだが――」



 僕はその願いを聞き入れた。この間のドラゴンの騒ぎの後、なぜか急増した志願した兵が沢山いるとのこと。彼らにも魔力の扱いを教えて欲しいとのことだ。人数を聞く限りかなり時間がかかりそうだけど、この国がそれで守れるのならそのぐらいの労力を惜しむつもりはない。

 まぁ、丁度いいからアイテムボックスに大量にあるガノード島の食材をのんびり消費するとしよう。どうせ街に出てもまともに歩けないし、数時間で終わった休暇の続きといこう。



「では、儂も見学に行こう」


「なら僕も」



 と、言っていたのだが、大臣に引っ張られて奥の部屋へと連れていかれた。風のうわさで聞いた話ではガロンさんたちが二人の尻拭いとして公務を手伝っているらしい。





「じゃあ魔力の説明は皆受けてるの?」


「「「「「はい!」」」」」



 おぉ、元気いいな。皆の気に押されながらふと思ったことを隣にいたゼナに気になったことを聞いてみる。ちなみに、アイラとルカはシエラに引っ張られて街へと出て行った。



「ねぇ、これってゼナたちじゃできないの?」


「一度試してみたんですけど、私たちが流せる魔力では出来ませんでした」



 まぁ、魔力を集めるのと体の外側を通して循環させるのとではまた違う難しさがあるし仕方ないか。



「じゃ、取り敢えず一列に並んでください」



 一人一人にいつかと同じように体に魔力を流し、感知させていると彼らのひそひそ声が聞こえてきた。



「俺、このために兵士を志願したんだ」


「私もいつかリク様みたいにこの国を……」


「リク様に手を握られた……」


「夢が……叶った……」



 うん、なんというか……この国の兵士たちは大丈夫なんだろうか。



「師匠の影響力考えたら、このぐらい普通だと、思います」


「よく考えてみてください。勇者含め、この国の全線力を注ぎ込んでも勝てなかった相手を、一人で、しかも一発の魔法で消し飛ばしたんですよ?」



 なんかそう言われたら確かに凄そうに聞こえる。が、街を歩けなくなるのは本当に困る。次の街まではそれりに距離があるし、静かにしていれば普通に街を観光出来るはず……。



「これ後何日続けたら終わると思う?」


「この人数を毎日となると一週間以上はかかると思いますよ」



 明日からは午前中だけ出勤することにするとして、午後は自堕落な時間を過ごす。どの道全員に教えるまでは次の街に進むつもりはないし、そうすることにしよう。

 全員に魔力を感知させた後、皆の訓練を眺めたり、ゼルとヴァンの相手をしたり、ゼナやユニと魔法についての話をしたりして、その日の訓練を終えた。

 その後、夕食へと向かった。そこで、訓練をしながら考えたその予定をみんなに話した。



「要は食べて寝るだけの生活をするのじゃな?」



 シエラが笑顔でそんなことを言う。だがちょっと待って欲しい。僕は午前中は働いているからその言い方は間違っていると思う。



「じゃあ、私はリク様が訓練に言ってる間に、ガノード島の食材で何か作ってみる」


「楽しみにしてるよ」



 いや、マジで。この休暇中の一番の楽しみかもしれない。



「私はお兄ちゃんに魔法教えてもらう!」


「僕に出来ることならいいよ」



 多分ないけど。ルカはまだ魔力の集まりが弱いので、一人でもできると思う。



「リク殿がいるのなら、その間は平和そうじゃな」


「くっ。公務さえなければ僕も訓練に参加するのに」


「まだかかるのですか?」


「リク殿が初めて来てから暫くサボっておったからな」


「リクが帰った後も、ゼルやヴァンと剣を交えたりしていたんだ。あまりできない経験だったから公務を後回しにしてもらってたんだ」



 まぁ、確かにあんまりできない経験ではあるな。



「その公務をそろそろやろうと思った矢先にドラゴンの群れが来てな。さらにリクが持ってきた資料や例の孤児院のこともあるし」



 何か悪いことしたな。



「まぁ、そちらは大臣に全て丸な……ゴホン、大臣たちが全てやってくれておるんじゃがの」



 今丸投げって言おうとしました? 僕が謝るべきはこの人たちではなく大臣の方だったか。



「恐らく僕らの方は後三日ほどで落ち着くと思う。その時はまた一戦頼みたい」


「僕でよろしければ」


「お父さんはやらないの?」


「そうじゃな。では、儂もその時に一戦させてもらおう」



 本当に楽しそうだな、この二人。



「そういえば、森の大部分消し飛ばしちゃいましたけど、あの場所どうするんですか?」


「あれだけ広いと何かに使えそう」



 ガノード島からこちらに戻ってきたときにちらりと見たが、草木も生えていない状態だった。なんか罪悪感を感じる。



「そういえば大臣の一人がリクの像を立ててはどうかと言っていたような……」


「すいません、それは本当に勘弁してください」



 皆がくすくすと笑っている。全然笑い事じゃないんですけど。そんなことされたら恥ずかしすぎてこの街に来れなくなる。



「やはりリク殿ならそう言うと思っておったよ。儂から断っておこう」


「ありがとうございます」


「その話の続きなんだが、リクが寄付してくれたお金で建て替えた孤児院があるだろ? そこの子供たちが凄い熱心に学習してくれているんだ。だから、そのための施設をそこに作るという話が今挙がっているんだ。広さを考えると一部分だけになるだろうがな」



 まぁ、王都とあんまり広さ変わらない気がするし、そんなものか。



「お兄ちゃんそんなことしてたの?」


「あれ、言ってなかったっけ?」



 そう言えばこの話を相談したの陛下と大臣だけだった気がする。そうなった場合、建て替えしたのはどうするんだろうと聞いてみると、まださほど進んでいないらしいので今なら間に合うそう。

 とにかく、少しやり過ぎたと思っていたが迷惑になったりせずに済んで良かった。

 話したいことも話せたので、適当に話を切り上げた。シエラは心なしかホッとしている。まぁ、こんな話興味ないよね。

 明日のアイラの料理を楽しみにしながら、僕は眠りについた。

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