体育祭

 僕の学校には三大イベントと言われるものがある。体育祭と文化祭、音楽祭だ。


 その中でも入学して数ヶ月、気温がだんだん上がり始める6月半ばに行われるのが体育祭だ。


 あの出来事からちょうど2週間、彼女とは話せずにいる。

 なんだか恥ずかしい、というのもあるが、それ以上に僕の障壁となっているのは,彼女はクラスの陽キャと呼ばれるグループに属したことだ。

僕のような中の下のやつとは接点なんてない。


 あん時はいい感じだと思ったんだけどな……。


 なんて思いながら、同じカーストのやつ4人と教室の後ろで固まりながら話している。いや、話を聞いているの方が正しい。さっきからこいつらの話は全く頭に入ってこない。

 それもそうだ。


 僕の意識は完全に僕らの対角線にいる陽キャグループ。その中の彼女に向いている。


 うちのクラスの陽気キャグループは、元々男子3人と女子2人のグループだったが、そこに彼女が加わり、バランスの良いグループになった。

 そこに彼女が関わっているというだけなら僕はこの心臓が冷たくなる感覚に、いつ何時もこの感覚に襲われていることはないだろう。


 誰でも僕と同じ立場だったらなるはずだ。


 なんでかわかるか?


 

 それは、彼女が転校してきたタイミングと同時にクラス中で……いや、学年中で騒ぎが起こったことだ。


 学年一のイケメン、だとか王子とか影で言われているあいつ、高橋海斗が、中学から付き合ってた彼女と別れたのだ。


 そしてあろうことか、鈴木さんと高橋がいい感じとか付き合ってるという噂が流れ始めた。


 一緒に下校してたとか、よく2人でいるのを見かけるとか、所々で聞く。


 それがあって僕は気が気でない。


 あの時、連絡先交換しとけば……。


 人間、気づいた時にはもう遅い。いろんな場面で聞くが、それを実感できたのは今回が初めてだ。 


 いずれあと2人は本当に付き合うのか、そんなことを思い続けて、最近は熟睡できていない。


 まぁ、結局僕はここまでだったんだ。


 いつも中途半端で、三日坊主で、最後までやり遂げられない。やろうやろうと思っても結局やらない。


 それが僕にはちょうどいいのかもしれたいな……。


 さらば、僕の1日だけの、数時間の青春……。



 中学の時から少女漫画を読みあさって、憧れでいた青春、高校生活は無事に終了しましたとさ。

 

 こんな時、僕以外の周りみんなは本当は人間じゃなく、ロボットなんじゃないかと思う時がある。

 佐藤進という人物の人生という物語を描く神様がいるんじゃないか、そして僕以外の人はみんなモブキャラなんじゃないかなんて思う。


 まぁ、そんなことはあり得ないんだけどな。


 まぁ、これもある意味、少女漫画の無駄にうざくて、主人公とヒロインの恋を邪魔する負けキャラというポジションをもらえているのかな。


 ならば僕は彼らの恋を邪魔するしかない。


 なんて考えながらをしながら僕は席へと着席した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢現の君へ 桐ヶ谷 @kirigaya_kaho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ