――終章――



 サイパン島では、いまでも亡霊となった歩兵隊が活動している。そんな噂が根強く残る島は手入れされることなく、戦後約一年間放置されたままだ。


 島の状態は酷いもので、地形が変わるほどの砲撃を浴び続けたせいか遺体らしい遺体は残っていなかったが、幾らかの白骨、錆びて朽ちかけた戦車や機銃が至る所に鎮座しており、ざっくりと爪痕は残っていた。最後の激戦が繰り広げられた北部も、まだそのままの状態で保持されている。


 時代錯誤の癲狂てんきょう隊だと蔑まれていた424部隊の特徴といえる首輪と刀剣もそのままで、錆びて煤けながらもなお光り、その存在をしぶとく主張し続けているように見えた。


 しかしその具合は、当時と大きく違っているように思える。ギラつき禍々しさを感じていたはずのそれらは、暖かな日光と柔らかな海風を浴びて、穏やかに光っていた。


                                               【完】

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LAST-IMPACT 志槻 黎 @kuro_shiduki

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