シラノ・ド・ベルジュラック

概要

 およそ120年前、フランスの劇作家エドモン・ロスタンによって作られた戯曲。(おそらくは)いわゆる古典悲劇に準拠するロマンス騎士物語であり、主人公シラノ・ド・ベルジュラックは騎士道精神、高潔な魂の体現者として描かれている。


あらすじ

 シラノ・ド・ベルジュラックは詩人にして剣客、理学者にして音楽家という非常に多彩な青年。またその性格は豪傑の一言に尽きるような勇ましさであり、貴族にも全く臆さず立ち向かう彼を多くの仲間が慕っていた。

 しかし彼の鼻はあまりにも醜く、それ故に女性との色恋沙汰はトンと縁のない話だった。

 彼自身そのことを強く自覚していたが、それでも従妹のロクサーヌへの恋慕の想いをなかなか捨てきれずにいる。

 そんなある日、ロクサーヌは彼を呼び出して彼の同僚である美男子クリスチャンに恋をしたと告げる。クリスチャンもまたロクサーヌのことを愛していたが、彼には恋心を詩的に伝える才能がなかった。

 そこでシラノはクリスチャンのゴーストライターとして活動し、クリスチャンとロクサーヌの恋の応援をするために奮闘することを決意するのだった……


オススメポイント

 「不細工だが心優しい青年が、好きな女子と美男子の恋愛を影ながら応援する」

 120年前の作品とは思えないほど少女マンガ的・ライトノベル的な設定で、今時の学生が読んでも間違いなく面白いと思えるだけの作品です。また恋愛作品としてのロマンスと、騎士物語としてのロマンスを融合させているため、男性女性問わず楽しめること間違いなしです。

 特にシラノは全編通して男前であり、彼の才知溢れる行動と献身的な態度には何度も感動させられます。それでいてクリスチャンが嫌な雑味を放ちすぎないというバランス感覚の良さがストレスなく物語へ没入させてくれます。

 またこの作品は全体的に語感がよく整えられていて、黙読していても自然と頭にリズムが生まれてきます。戯曲独特の台詞回しは短歌や漢詩のような心地よさを感じさせ、長い物語の時間を忘れさせるでしょう。

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