第3話 決死の防衛ライン

──沖縄防衛隊本部──



「ええい、 第2防衛ラインまでも突破されたか! 増援部隊はまだなのか! これでは壊滅は免れぬ! 」



「しかし増援部隊でも、 あの4つ足は手に余るのでは? 」



「奴らは対空武装を、 持ち合わせてないみたいだ。 空から一方的に撃てばもしくは。 」



「しかし、 我が隊の航空隊では手も足も出なかったですよ! 」



「きっと増援部隊なら大丈夫だ! それに来てくれるのは07部隊だ。 」



「07部隊? 神風大佐ですか! それなら希望はあるかもしれませんね! 」



「司令! 沖縄東部の上空に熱源反応有り! このシグナル、 味方です! 通常の五式重戦闘機の5倍以上の速度で、 向かってきます! 」



「来たぞ!神風くんだ! 彼が来たなら安心だ! 全隊に告げよ! 神風が来たぞ! 」



「はい! 」



──沖縄防衛隊第3防衛ライン──



「緊急入電! 嘘! 07部隊が、 神風大佐が救援に来てくれました! 」



「なんだと! よし、 これで少しは形勢逆転と行くといいが! よしここで踏ん張るぞ! 」



「おぉ! 神風大佐が! 」



「あの伝説の!? 勝てるぞ! 」



「総員、 死ぬなよ!! 」


──沖縄第3防衛ライン──



「お前たち聞いたな! 神風大佐が来て下さるぞ! 」



「あの無敵の07部隊が! 神風大佐が!? 」



「よし頑張りましょう! 」



「もう奴らはすぐそこまで来てる! すぐに足止めに行くぞ! 今アイツらがいる場所は、 開けている。 なるべくあそこに縛るぞ! 」



「御意! 」



全戦力を投入し、 何が何でも増援部隊到着まで、 時間を稼ぐ。

神風隊が来ると知って、 全隊員の士気が上がった。

それだけ信頼されているのだ。



07部隊、 別名神風隊。

隊長が神風大佐だからその名がついた訳では無い。

07部隊が戦場に舞い降りれば、 どんな状況でも覆す。

まるで神風が吹いたかのように。



「総員倒そうと思わなくていい。 足を止めるんだ。 何が何でも、 神風大佐が来るまでもたすぞ! 」



「御意! 」



「総員、 粘着弾装填! 」



「放てえ!! 」



トリモチに足を取られ、 少しばかり進行が遅くなった。

だが少したつとすぐに、 元の速さで進行を再開する。



「くっ、 どんどんうてぇぇぇい! 第1、 第5、 第8部隊! APFSDS弾をひとつの足に集中して撃て! 」



「承知! 」



トリモチに足を取られ、 動きが鈍くなっている4つ足に、 APFSDS弾の一斉斉射が浴びせられる。

心做しか先程より、 進行速度が遅くなってきている。



「どうやら少しは効果があるようだ! 」



「隊長! あれを見てください! 」



「なんだ? おぉ! あの真緑のカラーリング、 あの機体、 あの編隊飛行! 皆の者! 神風隊がきたぞ! 攻勢を強めよ! 」



「神風隊だ! 」



「行けるぞ! 」



「待たせたな。 こちら07部隊、 遅くなってすまない。 これより援護する。 」



「隊長、 目標が足止めを受けているようです。 」



「陸上部隊も頑張ってるみたいだな。 俺達も負けてられねえぜ! 隊長やってやりましょう! 」



「ああ、 行くぞ! 各機、 一体を集中して狙う。 私に続け! 」



「御意! 」



「承知! 」



「泉、 どいつが1番損傷がでかいか分かるか? 」



「左翼の1機が1番損傷しています。 と言っても軽微、 と言ったところですが。 」



「わかった。 各機、 左翼を叩く! 疾風迅雷の陣で行くぞ! 」



「了解続きます! 」



神風大佐を先頭に、 後続機がピッタリくっついて追従する。



「泉、 2人の機体に目標の座標を。 」



「既にすんでます! 」



「流石だ。 行くぞ! 」



神風大佐が機銃を掃射しながら突っ込み、 ギリギリでミサイルを放つ。

そしてそれと同時に離脱する。

それに続くように後続機も、 ミサイルを放ち離脱する。



「すげぇ! 神業だ。 あんなの普通出来ねえだろ。 」



「ああ、 見事な連携だ。 いくら人工知能のサポートがあるとはいえ。 」



「これで奴らも…… なんだと! 」



「少し損傷は負ってるみたいだが、 ピンピンしてやがる! 」



「神風大佐、 どうやらこちらの火力を持ってしても、 足りぬようです。 」



「うむ、 あれをやるしかない。 お前たちはあの兵器以外をやってくれ。 私はあれをやる。 泉、 操縦任せる。 」



「了解! ご無理をなさらずに! 」



「了解! 」



「分かりました。 操縦はお任せを! 生きて戻ってくださいね! 」



「おい! 大佐が機体から出てきたぞ! 何を考えてるんだ? 」



「なんと! あれをやるのか! 総員4つ足への攻撃やめ! 大佐を援護する! 」



「何をするんだ? 」



「いいからとにかく命令通りにやるぞ! 」



大佐は低空飛行をして、 真っ直ぐ4つ足に突撃をする。

何やら刀のような物を抜いていた。



「果たしてこれでやれる物なのか、 試して見ねば分かるまいな。 我が国の技術を信じるぞ。 そろそろ頃合だろう。 泉、 今だ! 」



「分かりました! ご武運を! 」



大佐の乗る戦闘機が、 4つ足の上を通過したと同時に、 大佐が飛び降りる。



「すぅー、 天山発破! 」



大佐が刀を振り下ろすと、 4つ足の足の1つが綺麗に落ちた。



「すげぇ! 刀であの兵器を斬りやがった! 」



「流石は神風大佐! 」



「これなら勝てるぞ! 」



「隊長、 どうやらその刀なら装甲を貫けるようです! 」



「泉、 どうやらそのようだな。このままこいつをおろして、 次に行く。 準備していてくれ。 」



「了解です! 」



神風大佐は流れる湯水の如く、 軽やかな身のこなしで、 4つ足を無力化した。

そしてすぐさま自分の機体に飛び乗り、 次の4つ足へ、 そしてまた同じようにまるで赤子の手をひねるかのように、 無力化していた。



「次で最後か! 」



そして遂に最後の1機も、 抵抗虚しく無力化されていた。



「なんだ! アイツは! バケモノか!? 」



「ハンターが、 容易く! 」



「ひい! 撤退撤退! 」



そしてその様をまじまじと、 見せつけられたロシア兵たちは、 蜘蛛の子を散らすように撤退していった。



「敵、 撤退を確認。 本部、 どうしますか? 」



「こちら本部、 こちらも敵の撤退を確認した。 これより我々は与那国島を奪還する。 厳しい戦いになると思うが、 頼む。 武運を祈る。 」



「07御意。 動ける部隊は我らと共に、 与那国島奪還へ向かう! 皆の者、 もうしばらく共に戦ってくれ! 」



「おぉ! 大佐と戦えるのなら光栄です! 」



「最後までお付き合いしますぜ! 」



「すまんな、 礼を言う! 泉、 まだやれるか? 」



「勿論です。 今、 本部がこちらに2式輸送航空機を、 手配しています。 その間に我々も補給を行いましょう。 」



それから輸送機が到着するまで、 補給やらを皆、 行った。

そして2式輸送航空機が到着した。

2式輸送航空機、 それは大日本帝国の主要輸送機である。

それなりの人員と、 戦闘車両数両を一度に輸送できる、 最新鋭機である。



その見た目からは想像出来ない、 航続距離、 速度、 搭載武装。

正しく空飛ぶ拠点である。



「よし、 これより我々は与那国島奪還へ向かう! 総員気を引き締めよ! 」



「おぉ! 」



「日本バンザイ! 」



不思議なことに、 なんの迎撃も受けずに与那国島へ着陸することが出来た。



「うむ、 妙だな。 人の気配がしないな。 泉、 どうだ? 」



「ソナーに反応ありません。 どうやら既に逃げ出しているようです。 」



「なんとも他愛ない。 周辺海域に巡洋艦を走らせてくれ。 我々は念の為、 島内をくまなく探索するとしよう。 」



「了解です。 本部にも連絡をしておきます。 」



結局ロシア兵達は、 1人も見つからなかった。

ある程度の荷物やら物資やら、 キャンプの散らかり具合から察するに、 早々に逃げていったようだ。



こうしてこの事件は終息したのだった。

辛くも日本の勝利で。

沖縄の主要な軍港を役80パーセント、 そして沖縄戦力、 役45パーセントの損害を受けて。

ただ、 失うものばかりではなかった。



日本軍にこれ程までの被害をもたらした、 4つ足の悪魔。

神風大佐が完全に、 破壊せずに無力化したため、 研究することが可能になったのだ。



そしてこの事件から僅か数ヶ月後、 4つ足の研究が大詰めになってきた頃、 再び事件は起きた。



死のホワイトデーである。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

123─イズミ─ M柴 @msiba0079

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ