第2話 血のクリスマス
それは12月25日のこと。
そうクリスマスである。
何故か我が国では、 海外の文化を楽しむ人が多かった。
特に若者はそういったイベントに、 異常なまでの反応を見せる。
誰もが浮き足立つであろうクリスマス。
その日に事件は起きたのだ。
与那国島が突如、 ロシア西部連盟により占拠並びに、 沖縄の軍港に無差別爆撃が行われた。
我が国の軍部は、 沖縄に機影を認めるまで気づかなかったようだ。
決して怠惰な訳では無い。
ロシアが今回使用した爆撃機は、 かなりの高性能なステルス機を使用していたのだ。
突如、 予期せぬ登場をしたステルス爆撃機に、 沖縄はものの数分で、 主要な軍港に多大な損害を受けていた。
──12月25日 沖縄軍本部──
けたたましい警報音が鳴り響いている。
「何が起きた! 状況を教えろ! 」
「本田司令! 与那国島がロシアに占拠、 そして沖縄の主要な軍港に、 爆撃を行っています! 」
「な、 なんだと! 何故今になって気づいた! 」
「それが高性能なステルス機のようで……レーダーにもセンサーにもかからなかったようです! 」
「おのれ……よもやロシアから攻めてこようとは。 アメリカよりも先に動いたか! 第1級先頭配備だ! 本国にも応援要請! ここで食い止めるぞ! 」
「は、 はい! こちら沖縄本部。 各戦闘員に通達。 現在当方はロシア西部連盟に、 無差別攻撃を受けています。 このままでは沖縄は占拠されます。 何としても阻止してください! これは訓練ではありません、 実戦です! 繰り返しますこれは、 実戦です! 」
「凪、 各被害状況を教えて? それと本国に応援要請もお願い! 」
「本国への応援要請は、 既に完了しております。 至急増援部隊が派遣されます。 到着予定は早くて2時間、 と言った所でしょうか。 現在主要な軍港は全て、 80パーセント以上の被害を受けています。 」
「流石は凪だ。 うむ2時間か。 何としてもそれまでは持たせねば。 敵の予想戦力はどうだ? 」
「はい、 ステルス爆撃機は既に戦線を離脱を確認。 すぐには使用出来ないかと思われます。 となれば空挺部隊か、 海兵が出てくるかと思われます。 想定戦力は恐らく1個大隊かと思われます。 」
「1個大隊か。 一応空域に偵察機を巡回。 西部海岸沿いに、 兵を固めよ! 西への被害が大きい。 そのまま西から来るだろう。 」
「了解! 各員へ、 主力を西部沿岸部に集中。 残りの部隊は北部、 南部に近い位置で待機。 情報連絡を密にお願いします! 」
──沖縄本土防衛隊 本隊 西部沿岸キャンプ──
「お前たち! 聞いたな? 増援部隊は2時間後に合流する! それまでは俺たちでここを守るぞ! 」
「御意! 」
「うむ、 敵の戦力は1個大隊と推定されている。 恐らく奴らは海上から西部に上陸、 侵攻してくるものと思われる。 ボルシチやマトリョーシカなどの、 機甲部隊も配備されているだろう。 各員気を引き締めろよ! 」
「御意! 」
「それでは各隊、 ブリーフィングを開始しろ! 散開! 」
──防衛隊第2部隊──
「さて面倒臭いことになったな。 せっかくのクリスマスに襲撃とは。 」
「ロシアが攻めてきたってのは、 本当なんでしょうか。 アメリカなら可能性はありますが……。 」
「それだけ奴らの戦争が、 思った以上に苦労しているんだろうな。 だが俺たちが黙ってやられていい理由にはならん! 返り討ちにするぞ。 ブリーフィングを始める。 賢介、 頼む。 」
「了解しました。 皆様もご存知の通り、 今現在我々は、 ロシアにより攻撃を受けています。 ロシアの先制攻撃により、 主要な軍港が被害を受けています。 これにより我が軍は20パーセントの損失、 海軍に80パーセント以上の損失を受けたと予測されます。 ロシアの狙いは沖縄の占拠にあると思われます。 そこで我々は本国の増援部隊合流まで、 敵の足止めが目的となります。 我々第2部隊は、 敵の上陸部隊の足止めの命がおりてます。 最前線での戦いとなります。 十分に気を引き締めてください! 」
「ありがとう、 賢介。 聞いての通りだ。 重装甲戦車、 25式を前面に押し出し防衛戦を張る。 お前たち生きて帰れよ! 」
「やれやれまた危険な役割ですかい。 これじゃ命がいくつあっても足りんですよ! 」
「お前たちには苦労をかける。 すまんな。 」
「何言ってるんですか! 立花隊長だからこそ、 俺たちはついていけるんです! 一緒に生き残りましょう! 」
「ありがとう! よしお前たち、 生きて帰ろう! 総員戦闘準備! 」
それぞれ兵たちは戦車に乗り込み、 担当区域へ前進を開始した。
──無差別爆撃から1時間後──
「こちら第2部隊、 立花。 現在海岸沿いに異変なし。 」
「こちら第4部隊、 獅童。 こちらも同じだ。 」
「こちら第6部隊、 田中。 今のところはこちらも動きなし。 」
どうやらまだどの部隊も、 会敵してないらしい。
恐らくそろそろ動くと思うが。
上空も未だ動きはないらしい。
制空権はこちらが握っているから、 上空は航空勢力に任せておけばいいだろう。
「しかし静かだな。 妙だ。 嫌な予感がするな。 」
「皆さん、 海中に不穏な動きが探知されました。 気をつけてください! 」
「海中だと!? 」
双眼鏡を構え、 一面を凝視する。
すると突如波を突き破り、 大きな輸送車が現れた。
「あれはマトリョーシカです! 」
「こちら第2部隊! 敵勢力と会敵! マトリョーシカが海中から現れた! 交戦する! 」
「こちら第6部隊、 こちらも敵と会敵。 交戦開始! 」
「第4部隊! こちらも敵と会敵! 交戦する! 」
3箇所同時攻撃か!
マトリョーシカから、 兵や様々な戦車が現れる。
「さあ地獄のパーティだ。 お前たち生きて帰るぞ! 」
遂に戦いが始まったのだ。
沖縄防衛戦、 大日本帝国に多大な被害を被った、 死の戦いが。
──大日本帝国増援部隊 大分上空──
「隊長、 本部より入電です。 」
「泉、 なんてきている? 」
「はい、 先程沖縄西部沿岸にて、 防衛隊とロシア軍が接敵。 戦闘が開始したとの事です。 」
「そうか、 やはりお前の予測通りだな。 流石だな。 」
「い、 いえ。 こちらは後30分程で到着予定です! 」
「分かった。 それなら少しは被害を抑えられそうだな。 」
「隊長が居れば敵無しです! 」
「買い被りすぎだ。 よし少し飛ばすぞ。 他の奴らにも伝えてくれ。 」
「了解です。 」
頼むぞ、 もってくれよ。
──さらに数分後──
「これなら何とか耐えれそうか? 」
「た、 隊長! あれを! 」
「なんだあれは! 戦車なのか? それにしてはでかいぞ! しかも4本足? 」
「あれはデータにないです! 皆さん気をつけて! 」
「全車! 対象を未知の兵器に照準! 」
「うてぇぇぇい! 」
「流石にこれなら……隊長! 」
「なん、 だと!? 」
「目標、 損傷軽微! 」
「賢介! APFSDS弾に変更! 」
「うてぇぇぇい!! 」
「そん、 な! APFSDS弾も効かないだと! 奴は化け物か! 」
「後退を推奨します。 現在の装備では歯がたちません! 」
「ええい! 後退するぞ! あの大砲、 食らったら一溜りもないだろう! 」
「こちら第4部隊! 未知の兵器により前線崩壊。 撤退する! 」
「第6部隊、 こちらも前線が崩れてきた! 後方部隊に合流します! 」
「他の部隊も後退か。 よもやあんな兵器があろうとは。 」
──沖縄防衛隊本部──
「緊急入電! 前線からです! えっこれは! 」
「どうした! 」
「ぜ、 前線が崩壊した模様です……。 」
「なんだと! 一体何が! 」
「未知の兵器が突如出現。 その兵器により甚大な被害を受けた模様! 今映像出します! 」
「これは一体! こんな恐ろしい兵器があろうとは。 以後この兵器を、 4つ足と呼称する! 早急にデータを集めるぞ! 増援部隊にも情報を送るんだ! 」
「了解です! 」
──ロシア西部連盟沖縄侵攻部隊 ──
「ガッハッハッ! 日本の猿どもめ、 ハンターには手も足も出んか! ガッハッハッ! 」
「先程までは押されていましたけどね……。 」
「なに? 何か言ったか? 」
「いえ何も。 ハンターの投入で戦況は変わりました。 ご指示を。 」
「指示も何も、 このままハンターを主軸に猿どもを押し込めい! 」
「サー。 」
──鹿児島上空──
「隊長! 緊急入電です! 沖縄本土防衛隊の前線が崩壊! 後退を余儀なくされたようです! 」
「なんだと、 何が起きた。 」
「どうやら新手の兵器のようです。 今情報を見せます。 」
「なんだこいつは。 APFSDSをものともしないのか。 こいつは骨が折れそうだ。 泉! データをメモリに焼き付けておいてくれよ? 頼りにしてるぞ。 」
「おまかせを! 」
「07部隊各位へ、 沖縄では既に甚大な被害を被っている。 一刻も早く俺たちが助けに行くぞ。 戦場では今まで見た事のない、 新手の兵器が好き勝手してるらしい。 お灸をすえてやるぞ! 」
「御意! 」
「承知! 」
「07部隊、 推力全開! 沖縄へ直ちに急行する! 」
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