123─イズミ─

M柴

第1話 神風の誕生


俺の名は神風 平太。

かの有名な、 神風家の一応次期当主だ。

まずは俺の家、 神風家について話したいと思う。



神風家が、 世間に名を知られるようになったのは、 1274年だ。

文永の役である。

日本は突如、 モンゴル帝国に攻撃を仕掛けられたのである。

当時、 日本はかなり苦戦を強いられていたらしい。

そしてもはや勝機はない、 誰もがそう諦めた時、 現れた。



…………………

1274年博多。



「伝令伝令! 少弐 景資しょうに かげすけ様! 元軍が赤坂を占拠したとの報せあり! 」



「なんと、 対馬、 壱岐に留まらず。 よもや我らが最後の砦か。 皆の者、 ここで我らは迎え撃つ! 」



「伝令!伝令! 」



「今度は何事じゃ!? 」



「はぁはぁ景資様! 肥後国の菊池 武房殿が、 赤坂に陣取る元軍にて、 攻勢をかけたと報せが。 」



「何と! ええい! 手柄を取られてはならん! 皆の者、 馬引けえい! 」



…………



「菊池 武房様、 戦の準備が整いました。 」



「そうか、 すまんな。 秀徳よ、 我らは勝てるか? 奴らに。 」



「必ずや。 」



「お前がそう申すなら。 皆の者! 今こそ我らの手で、 勝利をつかもうぞ! 」



「おぉおおおおお! 」



「やってやりましょう! 」



「俺たちの力を見せるんだ! 」



「この戦いに勝利したら、 俺は結婚するんだ! 」



皆、 士気が高まっている。

菊池 武房様の為、 私は修羅になる。



……………



菊池 武房勢の猛勢により、 元軍を赤坂より追い出すことが成功した。



「皆の者よくやってくれた! このまま我らにも、 元軍の追撃の任を与えられた! 私は1度鎌倉に戻らねばならない。 この先はこの秀徳に任せる。 皆の武運を祈っている。 」



「武房様。 私に指揮を預けるとは、 一体どういうことですか? 」



「不安か? 何心配ない、 主なら必ずや成し遂げよう! もし生きて戻れば十分な褒美を取らせよう! 」



「はっ! 身に染みる喜び! 必ずや武房様のご期待に答えてみせます! 武房様もどうかご無事で! 」



「はっはっはっはっ! 期待しておるぞ! ではさらばだ! 」



武房様は鎌倉へと、 向かわれてしまった。

重大な任を任せれてしまった。

何としても武勲を上げ、 武房様の期待に応えねば。



「秀徳! 先の戦い見事だったな! 獅子奮迅の働きとは、 まさにお主のことだな! 」



「敬之ではないか! 主も見事な戦いぶりだったぞ! 」



「それにしても、 追撃の指揮を預かるとは。 やっと主の働きが認められたのだな! 」



「運が良かったのだろう。 敬之、 主は追撃に参加するのか? 」



「秀徳あるところ、 敬之あり! 任せろ! 」



「心強い! では早速出立の準備をしよう! 」



私たち追撃部隊は、 早速準備を整え、 追撃へ向かうことにした。



……………



そして遂に私たちは、 元軍に追いつくことに成功した。



「伝令! 秀徳殿、 元軍は麁原山にて潜伏との報あり! 小勢は塚原に逃れたとの事です! 」



「塚原か、 そちらの方は確か、 竹崎 季長殿が布陣なされてたな。 さてどう動くか………。 」



「伝令! 竹崎勢が突撃を開始しました! 」



「なんだと! 竹崎殿、 功を焦ったか? 」



「秀徳殿、 我々も突貫しましょう! 手柄が取られてしまいます! 」



「まあ待て、 死んでしまえば手柄も元も子もない。 今は時を待て。 白石 通泰殿がもうすぐ合流するだろう。 我々は合流の後に攻勢をかける。 」



竹崎勢が動いた数刻後、 白石殿らが合流した。



「時は来た! 今こそ攻勢の時! 皆の者続け! 」



私たちは白石勢と協力し攻勢をかけた。



…………



竹崎勢にわずかながら、 被害を被ったが、 何とか元軍を退かせることに成功した。



「流石は白石殿! 見事な突撃でした! 」



「何を申す! 秀徳殿の助力があってこそ! これで奴らも、 より苦戦を強いられるでしょう! 」



「恐らく鳥飼潟で雌雄が決するのではなかろうか? 」



「恐らくはな。 九州の主要な御家人が参加する。 一大決戦となろう。 」



「それでは戦略会議でも如何かな? 」



「なるほど、 それは名案ですな! 白石殿は元軍をどう評価しておられるので? 」



「ふむ、 そもそも我々とは根本的に違うな。 あいつらは矢に毒を塗っている。 威力はそんなに無いが、 かすればそれだけで致命傷になろう。 そして銅鑼やあの鉄ハウ? とか言う物。 馬が驚いて言うことを聞かん。 そして我らは今まで、 大将との1体1で戦うことを美学としていた。 だが彼らは総力戦をしてくる。 それで今まで苦戦を強いられてきた。 」



「えぇやはりそうお考えでしたか。 確かに毒矢は厄介ですね。 ひとつ私に考えがあります。 馬に耳栓をすると言うのは、 どうでしょうか? 」



「なるほど! 確かにそれなら暴れる確率を減らせられるやも。 やはり我らの主戦力は騎馬兵。 やはり秀徳殿は噂通りの方だ。 武房殿が目をかけているだけはある。 」



「武房様が? 」



「武房殿は貴殿に期待しておるぞ。 某もお主の将来楽しみだ。 」



「なんと、 身に余る光栄です! 」



「この先の戦いも、 貴殿の腕に頼らせてもらう! 頼んだぞ! 」



「はっ! 」



…………



元軍は鳥飼潟に、 戦力を集めてるとの報せが入った。

我々日本軍も九州の主要な御家人を集め、 反攻の準備を整えていた。



「随分と集まったな。 」



「はい武房様。 」



「恐らくここが天王山。 ここを越せば、 あやつらもしっぽを巻いて国に帰ろうぞ。 」



「秀徳よ、 今1度力を貸してくれ! 」



「御意。 武房様の為に、 我が命果てるまで戦い申し上げます! 」



「はっはっはっ! お主は死なんでくれよ? まだ褒美を取らせてなかろう? それにこれからも私の傍で尽くしてくれ。 」



「ありがたき幸せ! 」



「伝令! 元軍、 攻勢を始めました! 先遣隊の竹崎勢が苦戦。 敵の弓兵に足止めをくらってる模様です! 」



「ううむ、 例の毒矢か。 予想はしていたが苦戦をしそうだな。 今は風向きも悪い。 このまま突撃すれば無駄死によ。 」



何故だろう、 はっきりとは分からない。

だがもう少しで風向きが変わる?

そんな気がしている。

それも強風だ。

私はその一重の希望にかける!



「武房様、 私は行きます! 」



「何を申す! 今は危険だ! 」



「大丈夫です。 何故かは分かりませんが、 風がそう告げるのです。 」



「……分かった。 皆の者! 秀徳に続くぞ! 今こそ好機! 全軍突撃! 」



「武房様。 」



「お主1人に無理はさせんよ! さあ行くぞ! 」



皆馬を駆り、 元軍に突撃をする。

元軍の弓兵隊が弓を構える。

スンスン、 風が来た。

先程まで向かい風であった風向きが、 追い風に変わった。

時は来た。



我々に向け放たれた矢は、 強風にはばかれ見当違いに飛んでいく。

これなら弓兵を恐れる必要は無さそうだ。



「何と! 秀徳の申した通りだ! 皆の者、 今こそ好機だ! 突撃! 」



…………



突如吹いた強風のお陰で、 日本軍の勝利に終わった。



「秀徳、 敬之よ! 見事な働きであった! 」



「はっ! ありがたきお言葉。 」



「さて秀徳、 敬之お主らに褒美を与えよう! 2人には土地を与える! さらに姓を与える! 」



「ま、 誠ですか!? 土地も姓も貰えるのですか!? 」



「もちろんだ。 敬之もそれくらいの働きをしている。 相応な褒美だと思うが? 」



「あ、 ありがたき幸せ! 」



「武房様、 感謝致します! 」



「まずは敬之、 お主は.........。 虎牙という姓を与える。 」



「はっ! ありがたき幸せ! 此度より敬之、 虎牙 敬之と名乗らせて貰います! 」



「うむ、 して秀徳。 お主は…………。 神風の姓を与える! 此度の獅子奮迅なる働き、 そして強風をも味方にする力、 正しく神風! 」



「はっ! 神風、 身に余る光栄です! 」



「うむ、 気に入ってくれたか! これからも私に仕えてくれ! 」



「はっ! 」



「御意! 」



……………



こうして神風家が誕生した。

神風家はその後、 様々な時代で有力な武家に仕え、 その手腕を振るってきた。

足利 義満、 今川 義元、 織田 信長、 徳川家康等。



そして2024年現在、 神風家の現当主。

俺の父親、 神風 天災は大日本帝国の1個大隊の隊長を務めていた。

神風家は昔から戦いに準じてきた。

俺も、 もちろん軍に所属している。

まあ俺が暮らしている大日本帝国は中立国家。

戦争とか、 正直関係ないものだと思っていた。

あの日が来るまでは。



大日本帝国は世界でも有数の、 貴重な資源コモンメタルと言うのが取れるらしい。

今まではそれぞれの国と条約を結び、 上手く付き合ってきた。

しかし戦争が起きた。

そして大日本帝国も今まで通り、 とは行かなくなってきた。



大日本帝国は立地も、 資源も、 どの国もヨダレが出るほど欲しいのだ。

そして遂に大日本帝国は東のアメリカ東部連合と、 西のロシア西部連盟の板挟みとなってしまった。

まず攻勢を仕掛けてきたのは、 ロシア西部連盟だった。

そうして中立国家である、 大日本帝国が戦争に巻き込まれたのである。

そして事件は起こった。

…………





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