第6話魔獣化した子Ⅵ
見た目は市役所などと変わらない、現代建築。私はてっきり魔法が出てくる映画のように古風で伝統ある格式貼った建物かと思っていた。
しかし、よくよく考えてみれば岸浜市でそんな建物は見た事がなかったと納得した。
正面玄関を入ると、吹き抜けの大きなロビー。
受付にはお揃いの制服に身を包み、済ました顔した職員さんが私の事に気づくと微笑みかけた。
「あの、すみません、11時から登録科の加藤さんとお会いする約束をしていまして…。」
「ハイ!かしこまりました。登録科の加藤ですね?少々お待ち下さい。」
受付のお姉さんは受付端末で何かを確認すると、電車内線で指示を仰いでいる。
その間、私はキョロキョロと辺りを見渡す。日本人以外にも様々な国の人がいるのわかる。魔導管理局とは言うものの、本当に市役所や病院のように清潔感と開放感がある、至って普通の内装だと思った。
「…くさま。お客様?」
「あ、すみません、こう言うところ慣れてなくて…。」
受付のお姉さんは、うふふと微笑む。
「大丈夫ですよ。アポイント確認出来ました。3階の登録科までお願いします。右手の赤いラインを進んでいただくと、突き当たりにエレベーターがございますので、エレベーターを降りて右手側に登録科がございます。」
「あ、ありがとうございます。」
エレベーターで3階まで上がり、登録科に入る。入り口すぐの職員さん対応してくれた。職員さんは加藤さんのとこへ行くと、私が来ている事を伝えてくれた。
「お、優子ちゃん!いらっしゃい!じゃあこっち座って!」
案内されたには間仕切り方の応接ブース。椅子に腰掛け、やっと一息つけた気がした。
「いや〜今日はわざわざご足労いただいきありがとうね。じゃあ早速なんだけど、単刀直入に検査結果を伝えるね。」
「あ、はい…。」
「まず、優子ちゃんは間違いなく、魔眼保有者だね。しかもやっぱりオリジナルの魔眼だ。ここの数値が異常に高い。これは体内の魔結晶が多い事を示しているんだけど、義眼などの後天性魔結晶はここまで高くならない。つまり優子ちゃんは先天性、生まれつきの魔眼保有者って事。」
「はあ…。」
「いきなりこんな事言われもよくわかんないよねえ。まあ簡単に言うと、優子ちゃんは特別って事だね。」
「特別…ですか。」
今までそんな事言われた事がなかったので、何ともこそばゆい。見せられた用紙には、数値の他にも、アルファベットの表記があった。
「こっちの『C』とかは何ですか?」
「鋭いね。こっちは、簡単に説明すると、魔眼の殺傷性や危険度を現してるんだ。」
「殺傷…!?」
「大丈夫、ランクは4種類しかなくて、一番低いのがCランクだよ。優子ちゃんの魔眼は
「良かったです。」
「そしてそのとなりのAランクは、成長度を表しているんだ。」
「私の魔眼は成長は結構上なんですか?」
「オリジナルは成長が未知数だから自ずと成長度は高いんだ。」
「私の魔眼が成長するとどうなるんでしょうか?」
「そうだな…例えば、より広範囲で複数の心が見えやすくなるとか、色だけではなく『嘘』を見抜くことができるとか、悪用されたまずそうだけど、人の心もコントロールできるようになる…とかかな。」
「それはちょっと…。」
「もし、人の心がコントロールできるようになったら、危険度はAに格上げされちゃいそうだね…。」
「格上げされたらどうなるんですか?」
「隔離もしくは摘出…かな。」
「私、成長したくないです…。」
「絶対とは言えないけど、魔眼の成長は、それこそ心と環境に左右されやすい。アルと行動を共にしてればきっとそういったヤバい成長はしないと思うよ。」
一通り説明を受けて、何となくスッキリした気持ちになった。今まで私が体験してきた心がみえる現象の原因がやっとハッキリしたからかもしれない。私は今までこの現象は良くないものとして捉えて生きてきた。
♦
物心ついた頃から、私は人の心の色が見えていた。
ある日、お母さんの心が真っ赤に染まった時があった。私は悪気なく、なんでそんなに真っ赤なの?と尋ねた。お母さんの心はさらにどす黒い赤へと変わった。
変な事言ってないで、自分の部屋に行きなさい!宿題は終わったの!?
私は唐突に、人の心の色を言うのは変な事、いけないことなんだと認識した。それから私は、人の心の色が見えることを誰にも言わず、隠すことにした。
小学校、中学校と年齢が上がるにつれて、人は表情と違う心の色をしている事に気づいた。高校の時、クラスでイケメンと言われている男の子から告白されたが、彼の心は青かった。初めての告白だった。後から知ったが罰ゲームだったそうだ。それから私は人の表情を見ずに心の色を見る事だけを意識した。その日から景色は灰色になり、心の色だけが鮮明に映るようになった。そして、私にとって不利益なりそうな人間関係は極力避けるようになった。避け続けた結果、私の周りには友達がいなかった。
大学生になっても同じだった。私は何もかもが嫌になり、大学3年の時、親に黙って休学届を学校に提出した。だが、地元を大きく離れる決心もつかなった私は隣の市である岸浜市にやってきた。
行く当てもなく、ブラブラ駅前を歩いていると、彼が通り過ぎた。そう、アルフレッドだ。
私にとってこの出会いは本当に衝撃的だった。
今まで灰色に染まっていた風景が、一瞬で元の色に染まっていくようだった。
♦
アルフレッドは怒らない 岡崎厘太郎 @OKZK
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