第20話
*
休日明けの月曜日、俺が学校に登校すると、俺の席には既にとある人物が座っていた。
「おい」
「あ、おはよう木川君!」
「あぁ、おはよう……じゃなくて、そこ俺の席なんだが……」
「まぁまぁ、硬いことは気にせずにさ」
「気にするわ! 俺の席だぞ!」
「床なら座り放題だけど?」
「かけ放題みたいに言うな! 大体お前何しにきたんだよ……」
「そんなの絢葉ちゃんに会いに来たに決まってるじゃない!」
絢葉ちゃんって……。
上屋敷はそう言って、俺の隣の席の八島に抱きつく。
こいつら昨日で随分仲良くなったみたいだな……。
「いやぁ……やっぱりこの胸は揉み心地が良いねぇ……」
「朝から何してんだよ!」
上屋敷はそう言いながら、八島の胸を揉む。
俺はそんな上屋敷の頭を叩いて止める。
「イテッ! な、なにするんだよぉー! 乙女の頭の細胞が今結構な数死んだぞぉー!」
「乙女……ねぇ……フフ……」
「おい、今鼻で笑ったな! こんな可愛い子を馬鹿にしたな!」
「可愛い乙女は同性の胸を揉まねーよ」
俺は上屋敷にそう言いながら、机の上に鞄を置く。
その瞬間、誰かが俺の襟を引っ張ってきた。
「おい、琉唯! お前なんで上屋敷さんと知り合いなんだ!!」
襟を引っ張ったのは強だった。
朝からこいつは元気だなぁ……。
そういえばこいつには言ってなかったな、上屋敷の事……。
「あぁ、いやただ委員会が一緒ってだけだ」
「おいおい、親友だろ?」
「お前は黙ってろ、おっぱい星人」
「それは酷くない!?」
口を挟んできた上屋敷に俺がそう言うと、上屋敷は涙目で八島に抱きついていた。
八島はそんな上屋敷の頭を撫でる。
こいつら、本当に仲良くなったんだな……。
「な、なんで琉唯が……琉唯がこんなに女の子と仲良く……」
「そんな驚くことか? 言っておくけど、こいつは見た目だけのただの変態だぞ?」
「最高だろ!!」
「どこが?」
ダメだこいつ、モテなさ過ぎて女なら誰でも良いみたいな感じなってる……。
「おはよん! あら、貴方この間の……」
「あ、師匠! 今日も素敵なメイクですね!」
「うふふ、ありがとう。この薄化粧に気が付くなんて、腕を上げたわね!」
「はい!!」
そう言えば早乙女と上屋敷は面識があったんだった……。
てか、師匠って……。
「おい! なんで早乙女まで仲良さそうに話てんだよ!」
「あぁ……この前上屋敷と買い物に行ったときに会ったんだよ」
「はぁ!? じょ、女子とお買い物だと!? デートじゃないか!!」
「ちげーよ馬鹿」
一緒に買い物に行ったと聞いた瞬間、強は鬼のような形相で俺に詰め寄って来た。
「いやぁ、木川君の友達は面白い人が多いねぇ~」
「そうか? バカばっかりだぞ」
「お前もな」
「貴方もよ琉唯ちゃん」
「うん……木川も馬鹿」
「おい、八島……ようやく口を開いたと思ったら悪口か? えぇ?」
「うっ……い、イタイ……」
俺は八島の頭を鷲掴みにする。
さっきまで一言も喋らなかったくせに……大体なんでこいつは俺にだけ文句を言うんだよ。
「お前! いつの間にか八島さんとまで仲良くなりやがったのか!」
「あら、それは私も知らなかったわ。何がきっかけなの? 琉唯ちゃん」
「あ、いや……まぁ……隣の席だしな……」
やばい、いつもの流れで八島に接してしまった!
上屋敷との関係はバレても問題ないが、八島とは別だ。
あんまり学校でも仲良くしすぎると色々勘繰られるかもしれない……。
「まぁ、確かにもう席替えして二週間だしな」
「隣の席なら自然よね」
「あ、あぁ……そういうことだ」
ふぅ……なんとか危機は脱したようだ。
「だよねぇー、アパートも隣の部屋だったら仲良くなるよねぇ~」
「「え?」」
この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!
上屋敷の野郎!
さらっと秘密を暴露しやがった!!
俺が上屋敷の顔を見ると、上屋敷は自分が何を言ったか気が付いた様子だった。
口に手を当てて、真っ青な顔をし、手を合わせて平謝りしてきた。
「隣の部屋?」
「おい、琉唯。確か隣の部屋って……」
「ち、違うの! 私の言い間違い! 隣の席よね! うん!」
「あぁ、なんだ言い間違いか」
「でも、そうよね? 隣の部屋は別に人ですもんね」
「そ、そうそう! いやぁ、私ってばオッチョコチョイでさぁ~」
なんとかごまかせたようだ。
ふぅ~危ない危ない。
上屋敷の奴、気が緩んだら口を滑らせるタイプだな……。
「ん? 隣で……あってる」
「「え?」」
今度はお前か馬鹿八島ぁぁぁぁぁ!!
なんでお前はこういうどうでも良いときに声を出すんだよ!
いつもは黙ってるくせに!
頼むからこれ以上怪しい発言をしないでくれぇぇぇぇぇ!!
てか、俺八島に言ったよね!?
隣同士の部屋ってことは誰にも言わないようにしようって!
「えっと……八島さんそれどういう……」
「ん……」
そう強が八島に尋ねた瞬間、始業のチャイムが鳴った。
助かった、これでひとまずは安心だ。
「ほ、ほら! ホームルーム始まっちまうぞ?」
「あ、あぁそうだな」
「ほら、強ちゃん席に戻るわよ」
「じゃあ私も自分教室に戻るから!」
「お、おう」
そう言って三人は俺と八島の席から離れて行った。
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