第20話


 休日明けの月曜日、俺が学校に登校すると、俺の席には既にとある人物が座っていた。


「おい」


「あ、おはよう木川君!」


「あぁ、おはよう……じゃなくて、そこ俺の席なんだが……」


「まぁまぁ、硬いことは気にせずにさ」


「気にするわ! 俺の席だぞ!」


「床なら座り放題だけど?」


「かけ放題みたいに言うな! 大体お前何しにきたんだよ……」


「そんなの絢葉ちゃんに会いに来たに決まってるじゃない!」


 絢葉ちゃんって……。

 上屋敷はそう言って、俺の隣の席の八島に抱きつく。

 こいつら昨日で随分仲良くなったみたいだな……。

 

「いやぁ……やっぱりこの胸は揉み心地が良いねぇ……」


「朝から何してんだよ!」


 上屋敷はそう言いながら、八島の胸を揉む。

 俺はそんな上屋敷の頭を叩いて止める。


「イテッ! な、なにするんだよぉー! 乙女の頭の細胞が今結構な数死んだぞぉー!」


「乙女……ねぇ……フフ……」


「おい、今鼻で笑ったな! こんな可愛い子を馬鹿にしたな!」


「可愛い乙女は同性の胸を揉まねーよ」


 俺は上屋敷にそう言いながら、机の上に鞄を置く。

 その瞬間、誰かが俺の襟を引っ張ってきた。


「おい、琉唯! お前なんで上屋敷さんと知り合いなんだ!!」


 襟を引っ張ったのは強だった。

 朝からこいつは元気だなぁ……。

 そういえばこいつには言ってなかったな、上屋敷の事……。


「あぁ、いやただ委員会が一緒ってだけだ」


「おいおい、親友だろ?」


「お前は黙ってろ、おっぱい星人」


「それは酷くない!?」


 口を挟んできた上屋敷に俺がそう言うと、上屋敷は涙目で八島に抱きついていた。

 八島はそんな上屋敷の頭を撫でる。

 こいつら、本当に仲良くなったんだな……。


「な、なんで琉唯が……琉唯がこんなに女の子と仲良く……」


「そんな驚くことか? 言っておくけど、こいつは見た目だけのただの変態だぞ?」


「最高だろ!!」


「どこが?」

 

 ダメだこいつ、モテなさ過ぎて女なら誰でも良いみたいな感じなってる……。

 

「おはよん! あら、貴方この間の……」


「あ、師匠! 今日も素敵なメイクですね!」


「うふふ、ありがとう。この薄化粧に気が付くなんて、腕を上げたわね!」


「はい!!」


 そう言えば早乙女と上屋敷は面識があったんだった……。

 てか、師匠って……。

 

「おい! なんで早乙女まで仲良さそうに話てんだよ!」


「あぁ……この前上屋敷と買い物に行ったときに会ったんだよ」


「はぁ!? じょ、女子とお買い物だと!? デートじゃないか!!」


「ちげーよ馬鹿」


 一緒に買い物に行ったと聞いた瞬間、強は鬼のような形相で俺に詰め寄って来た。

 

「いやぁ、木川君の友達は面白い人が多いねぇ~」


「そうか? バカばっかりだぞ」


「お前もな」


「貴方もよ琉唯ちゃん」


「うん……木川も馬鹿」


「おい、八島……ようやく口を開いたと思ったら悪口か? えぇ?」


「うっ……い、イタイ……」


 俺は八島の頭を鷲掴みにする。

 さっきまで一言も喋らなかったくせに……大体なんでこいつは俺にだけ文句を言うんだよ。


「お前! いつの間にか八島さんとまで仲良くなりやがったのか!」


「あら、それは私も知らなかったわ。何がきっかけなの? 琉唯ちゃん」


「あ、いや……まぁ……隣の席だしな……」


 やばい、いつもの流れで八島に接してしまった!

 上屋敷との関係はバレても問題ないが、八島とは別だ。

 あんまり学校でも仲良くしすぎると色々勘繰られるかもしれない……。


「まぁ、確かにもう席替えして二週間だしな」


「隣の席なら自然よね」


「あ、あぁ……そういうことだ」


 ふぅ……なんとか危機は脱したようだ。


「だよねぇー、アパートも隣の部屋だったら仲良くなるよねぇ~」


「「え?」」


 この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!

 上屋敷の野郎!

 さらっと秘密を暴露しやがった!!

 俺が上屋敷の顔を見ると、上屋敷は自分が何を言ったか気が付いた様子だった。

 口に手を当てて、真っ青な顔をし、手を合わせて平謝りしてきた。


「隣の部屋?」


「おい、琉唯。確か隣の部屋って……」


「ち、違うの! 私の言い間違い! 隣の席よね! うん!」


「あぁ、なんだ言い間違いか」


「でも、そうよね? 隣の部屋は別に人ですもんね」


「そ、そうそう! いやぁ、私ってばオッチョコチョイでさぁ~」


 なんとかごまかせたようだ。

 ふぅ~危ない危ない。

 上屋敷の奴、気が緩んだら口を滑らせるタイプだな……。


「ん? 隣で……あってる」


「「え?」」


 今度はお前か馬鹿八島ぁぁぁぁぁ!!

 なんでお前はこういうどうでも良いときに声を出すんだよ!

 いつもは黙ってるくせに!

 頼むからこれ以上怪しい発言をしないでくれぇぇぇぇぇ!!

 てか、俺八島に言ったよね!?

 隣同士の部屋ってことは誰にも言わないようにしようって!


「えっと……八島さんそれどういう……」


「ん……」


 そう強が八島に尋ねた瞬間、始業のチャイムが鳴った。

 助かった、これでひとまずは安心だ。


「ほ、ほら! ホームルーム始まっちまうぞ?」


「あ、あぁそうだな」


「ほら、強ちゃん席に戻るわよ」


「じゃあ私も自分教室に戻るから!」


「お、おう」


 そう言って三人は俺と八島の席から離れて行った。

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