第15話

「ん? なんだ八島か」


「ん……忘れ物」


「え? そんなのあったか?」


 八島はそう言うと部屋の中に入ってきて、俺のベッドに潜って何かを探し始める。


「なんだ? 何を忘れたんだ?」


「ん……あった、これ」


「お、お前!? なんでそんな物を忘れるんだよ……」


 八島がそう言って布団から出したのは、女性物の下着だった。

 恐らく八島の物であろう。

 てか、さっき上屋敷が居た時もそれあったの!?

 それを考えるとなんかぞっとするな……見つらなくてよかった。


「寝てるときに脱いだ……」


「器用だな……なんで良いけど早くしまえ」


「うん……わかった」


「っておい! 何ここで履こうとしてるんだよ!! てか、お前ノーパン!?」


「ん……そう」


「だぁぁぁ! 向こうで履いて来いバカ!」


「ん……今日の木川は強引……」


「お前が悪いんだろうが!!」


 俺は八島を風呂場に押し込んだ。

 まったく、あいつに羞恥心は無いのか?

 はぁ……家に帰ったら今度は八島の世話か……。

 俺がそんな事を考えながら、昼食の準備をしているとまたしても家のインターホンが鳴った。


「ん? 今度は誰だ?」


 俺は何も考えずに玄関の扉を開ける。


「はーい……」


「あ、ごめんごめん。忘れ物しちゃってさぁ~」


 バタン。

 

「え!? なんで閉めるのぉ!?」


 まずい……これは非常にまずい。

 部屋にやってきたのは上屋敷だった。

 忘れ物を取りに来たと言っていたが何を忘れたのだろうか?

 って、今はそんな事を考えてる場合じゃない!

 部屋の中には今八島が居る!

 どすうる!?

 こんな状況上屋敷に見られてみろ!

 絶対に面倒臭いことになる!!


「ねぇ! 開けて欲しいんだけど! あ! もしかしてエッチなゲームでもやってた? じゃあちゃんと隠してから入れてくれれば良いからぁ~!」


 してねーよ!!

 だ、だがそう言うことにして置いて、八島を隠した方が良いかもしれない……。


「八島……お前とりあえず浴室に……って居ねーし!!」


 どこに行った?

 俺は居なくなった八島を探した。

 そして気がついた。

 八島も忘れ物を取りにきたはず……忘れ物が見つかったならあとは帰るだけ……。


「まさか!!」


 俺が気がついた時には遅かった。


「え……」


「ん……」


 八島は玄関の戸を開け、上屋敷と対面していた。

 そりゃあ、忘れ物取ったら帰るよなぁ……。

「え? き、木川君? 女の子だったの? しかも……おっぱいすっごい……」


「んな訳あるか!!」


「……誰?」


「あ、私は上屋敷佐恵です。よろしくお願いします」


「ん……八島絢葉(やしまあやは)……よろしく」


 え!?

 てか、八島の下の名前って絢葉って言うの!?

 始めて知った……ってそうじゃない!

 この状況をどう説明したら良いんだ!?


「えっと……八島さんはなんで木村君の部屋に?」


「ん……忘れ物取りに来た」


「あ、そうなんだ! 私と一緒だね!」


 よかった、なんかうやむやに出来そうな感じだぞ!

 よし、これで八島と上屋敷が入れ替わりで帰れば、後は俺が適当に説明出来る!


「あ、木川……」


「ん? な、なんだよ八島? 早く帰れよ……」


「今日の晩ご飯は?」


「え?」


 まずぅぅぅぅぅい!!!

 何こいつさらっと爆弾発言してるの!?

 こんなの『一緒にご飯よく食べてます!』って言ってるようなもんじゃん!!


「ご飯? そう言えば……木川君と八島さんってどんな関係?」


「そ、それはだな上屋敷!」


「隣人……」


「おいバカ!!」


「え? じゃあ八島さんって……」


「うん……隣の部屋……」


 あ……終わった……俺の学園生活……。

 明日から俺は、八島の裸を見た変態男として学校内で酷いいじめに合うんだ……。

 俺はそんな事を考えながら、がっくりと膝を付く。


「終わった………」


「何が?」


「俺の……学園生活が……」


「そうなの? なんで?」


「お前のせいだよ……」


 はぁ……これから上屋敷から質問責めされるんだろうなぁ……。

 俺はそんな事を考えながら、上屋敷の顔を見る。

 すると、上屋敷は何やら難しい顔で考え事をしていた。


「え? 隣人? ご飯?」


 どうやら、まだ俺たちの関係をまとめきれて無い様子だ。

 まぁ……時間の問題だろうけど……。


「はぁ……とにかく中入れよ。説明する……八島も居ろよ」


「お腹空いた……」


「あとでたらふく食わせてやるから!」


 俺は二人にそう言って、二人を家に上げた。 俺と八島が並んで座り、正面には上屋敷を座らせた。


「実はだな上屋敷……これには深い事情が合ってだな……」


「え? ただのお隣さんじゃないの?」


 お?

 もしかしてただのお隣さんだとしか思ってないのか?

 それだったら余計な事を言う必要は無さそうだな……。


「あ、あぁ……そうだ。お隣さんだし、お互い一人暮らしだから互いに助け合ってだな……」


「お風呂に入りに来てる……」


「お前は余計な事を言うな!!」


「え!? お風呂!? も、もしかして……二人で?」


「違う!!」


 ヤバイ……八島が居ると逆に説明しにくくなってしまうかもしれない……。

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