第14話

「お茶で良いか?」


「あ、うん。ありがとう」


「あんまりジロジロ見てないで、座っててくれ」


「はいはーい」


 俺はキッチンに行きグラスに飲み物を注ぐ。 片付けはしたが、八島のやつ忘れ物とかしてないだろうな?

 俺はそんな心配をしながら、飲み物を上屋敷の目の前に出す。


「ほらよ」


「ありがと! 意外だな~もっと部屋とか散らかってるかと思ってたのに」


「そうか? 一応週一回は部屋の掃除をしてるからな」


「私の部屋なんて足の踏み場も無いよ?」


「それは女子としてどうなんだよ……」


 他愛も無い話しをしながら、俺たちは休日を過ごした。

 去年の俺では考えられない話しだな、女子と休日に部屋でお話するなんて……。

 強に言ったら羨ましがられそうだ。


「ねぇねぇ、さっきから気になってたんだけどさ……」


「ん? なんだ?」


「机の上にあるあれは……木川君の趣味?」


「え?」


 そう言われた瞬間、俺は上屋敷が指を指す、俺の勉強用のデスクを見る。

 その上にはこの前強が置いていった、エロゲーが置きっぱなしになっていたのだ。

 

「あ、いや! こ、これは違う!!」


 しまったぁぁぁぁぁぁ!!

 ちゃんと片付けたはずなのになんで!?

 ま、まさか八島の奴か!?


「へぇ~こう言うのが良いんだぁ~……男の子だねぇ~」


「違うって言ってんだろ!! これは友達が持ってきたんだよ!」


「分かってるって……一人暮らしだもんね、そりゃあ自由にこういうのもプレイ出来るよね」


「その息子を見守るような母の目をやめろ!!」


 強の奴ぅ……余計な物を置いていきやがってぇ~……。

 次のゴミの日に絶対捨ててやる!


「でも、以外だったなぁ……やっぱり木川君もこう言うのは興味あるんだ」


「人並みにはあるが、それは俺の趣味では断じてない!!」


「えぇ~でも少しは期待したんじゃない? 隣が綺麗な大学生のお姉さんだったらどうしよう……とか」


「考えてねぇ!」


 実際居たのは何も出来ないダメダメな全裸の女の子だったけど……。

 上屋敷はニヤニヤしながら俺をからかって遊んでいた。

 早く帰らないかな……こいつ。


「実際隣の人ってどんな人だったの?」


「別に……普通の人だよ」


「普通? 普通ってどんな?」


「普通は普通だ」


「何歳くらい?」


「……学生だ」


「へぇ~! 大学生?」


「あぁ……多分」


 嘘は言ってない。

 高校生も学生だし。

 多分って言ったし。


「女性? 男性?」


「女性だったが……」


「え! 本当!? 綺麗系? 可愛い系?」


「もういい加減にしろ! どんだけうち部屋の隣人について聞いてくるんだよ!」


「そんなの気になるからに決まってるじゃん。もしかした恋が始まるかも!」


 恋?

 俺と八島が出会って始まったのは、八島の世話なんだが……。

 そんな甘酸っぱいストーリーなんて絶対来ないと思う。


「はぁ……何バカな事言ってんだか……」


「だってだって! 若い男女が一つ屋根の下に居るんだよ!」


「アパートだから当たり前だろ」


「えぇ~本当に何もないのぉ~?」


「ねぇよ、何を期待してんだ」


 そう言うと上屋敷はつまらなそうな顔で、コップの飲み物を飲む。


「それにしても……」


「今度はなんだ?」


「なんか女の子みたいな良い匂いがするね」


「え?」


 思わず俺はドキッとしてしまった。

 まさか、八島を家に入れているからだろうか?


「ベッドからする……もしかして木川君……」


 ま、まさか女の子を度々部屋に入れてる事がバレたか?

 

「女子用のシャンプーとか使ってる?」


「は?」


「いや、なんかそんな匂いだったから。男の子でも気にする人が居るから、そうかなーって」


「あぁ……ま、まぁそんな感じだ」


「そうなんだ! なんか部屋が片付いてたり、良い匂いがしたり……私が木川君に危機感を感じないのって、木川君が女の子みたいだからかな?」


「別に女っぽくないだろ?」


「いや、十分女子っぽいよ。あ、だから早乙女君とも友達なの?」


「あいつとは友人だが、決してそう言う意味では無い」


 そんな話しをしている間に時間は過ぎていった。

 いつの間にか夕方になり、上屋敷が帰る時がやってきた。


「今日はありがとね! おかげで楽しかったよ!」


「それは良かったよ」


 こっちはメチャクチャ疲れたけど……。


「また来ても言い?」


「だめ」


「なんで!?」


「良いから、早く帰れよ。もうそろそろ日も暮れるぞ」


「まったく……木川君は私に対して冷たすぎるよぉ~」


「そんな事は無いと思うが……」


「まぁ、いいや。じゃあ私は帰るから」


「おう、じゃあな」


「うん」


 上屋敷はそう言って自分の家に帰って行った。


「はぁ……休みのはずだったのに……なんか疲れたな……」


 俺はがっくりと肩を落としながら、自分の部屋に戻りベッドの上に寝転がった。


「……確かに良い匂いだ……」


 先程まで八島が寝ていたからだろうか?

 俺のベッドはバラのような良い香りで包まれていた。

 

「さて、晩飯作るか……」


 俺は夕食を作ろうとベッドから立ち上がる。 すると、立ち上がった瞬間、俺の部屋のインターホンが鳴った。

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