第3話 その三

 パッと目覚めた。

 寝汗がすごい。怖い夢を見てしまった。動悸がおさまらなかった。

「大丈夫か?」

 お兄様に声をかけられた。

「ええ」

「また悪夢でも見たのか」

 お兄様の顔を見て、少し落ちつく。

「自由に夢の中を楽しめるのは好きなんですけど、たまに見る恐ろしい夢だけは……」

「しかし面白いな。私の見る夢は白と黒か、セピア色だけど、エヴァの夢は色がついているのだろう?しかも自分の好きなようにできる。私のはただ見るだけ。コントロールなんてできない」

「特権ですね」

 赤ちゃんの如く純粋な笑顔を向ける。

「人それぞれだね」



 




 毛虫になった。キャベツを食べている。顔はパンダ。ナンダ、パンダ!ナンダ!パンダ!ナンダ!パンダ!

 バッタの顔もパンダ。パンダの顔が雪のように空から降ってくる。


 地震!氣をつけて地震よ!私は建物の近くに行った。壁が崩れてくる。とっさに瞬間移動をする。開けたところは地割れで裂ける。どこに逃げればいいのかわからない。


 お兄様の腕に抱かれている。

 人のあたたかさはおちつく。

 総一にも抱きしめられたいと、マリアに悪いけれど思ってしまう。

「私の夢はお兄様と結婚すること」

「それこそ、夢だね」

 二人は笑いあう。

 他に人がいたら、こんなに絵になる兄妹がいるだろうかと思われるほどの宇流波志(うるわし)さだった。


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