俺が社会復帰を目指す理由

椎名大和

プロローグ

とある森林にある男が全速力で駆け抜ける。


腰まである背丈の草を掻き分け、木々の枝葉を潜り広い平原へとたどり着く。


「あ、あれ?ここらへんのはずなんだが・・・」


男は手に持ってるマップを確認しながら、何かを探している様子。


すると突然、背後から大きな咆哮が地響きのように辺り一帯に響き渡る。



「━━━━っ!!」


男は血相を変え振り返る。


振り返った先に目にしたものは神話のケンタウロスを連想されるような見た目。そして醜悪な見た目をし、見ただけでも威圧感を感じるほどの大物。右手に棍棒、左手に鋼鉄の盾を持ち、今にも男にその混紡を叩きつけようとしてる。


「ようやく出てきやがったな。邪神・・・・・・長年待ったぜこの時をっ!お前を打つこの時をな!!」


男は背中に大きな大剣があるにもかかわらず、それをぬこうとはしていない。


その代わり、右手のひらをモンスターに向かってかざし力を込める。


「この地を守護する炎の精霊よ、我が問に答えよっ!」


すると小さな種火が周囲から右手のひらへと集まり、形を成す。


それは、とても小さく淡く揺らめく赤色の火であった。


「ゆけっ上級魔法!!ギガファイヤー!!」


男が大きな声で唱えると、手のひらの炎・・・・・・もとい小さな火はゆっくりと心もとない感じにモンスターのものへと進んでいき、膝小僧あたりにかすった。


すると次の瞬間


「ぐぉぉぉぉおおおお!!!」


と言う咆哮とともに醜悪なモンスターは崩れ去った。


「・・・・・・くっ!!さすがは長年追い求めた邪神っ!!長く険しい戦いであった。」


「何が”険しい戦いだった”よ、なんてどんな火力してんのよあんた。」


「っていたのかよ!・・・いつからそこに?」


「ようやく出てきたな邪神・・・・・・辺り?」


「割と序盤じゃねぇか!」


━━とゲームの世界のだだっ広い草原手前で、くだらないやりとりしている男女二人組の姿があった。


「なに・・・中二病でも発症したわけ?・・・・・・キモっ」


男の心をえぐらんばかりの冷たい視線が男に向けられている。


「ちょ、ちげぇよ!!こういう茶番じみたことでもしないと最近面白くないんだよ。」


男が慌てて弁解するも叶わず、冷たい視線のまま距離を置かれてしまう。


「あの、なんで離れていくんですかね。普段パーティ組んでるくらいなんだから弁解くらい聞いてくれたっていいんじゃないですかね?!」


「必死すぎて引くんですけど。」


「ひどい!!」




男・・・名前:マル 種族:人間 レベル:200


髪は短く、黒色をしており青色をメインとした騎士を連想させる防具を来ている。


西洋を連想させる騎士風の服装は決まってかっこいいのだが、彼が着用しているその服はなぜかものすごくダサい。


そのダサい服装とは裏腹に、防御力が高い・・・・・・と思われたが実際そうでもない。



女・・・名前:ユイ 種族:エルフ レベル:120


メイン色を鮮やかな赤色としているその鎧は、とてもスマートな形をしており防御力・俊敏性の両方を兼ね備えた汎用性の高い装備のようだ。唯一背中に女性らしいひらひらがついているのだが、赤から紫へと綺麗なグラデーションのかかっている髪が、ちょうど腰まであるせいで一切見ることができない。



「それは置いといて。」


「置いとくのかよ。」


マルのツッコミも虚しくスルーされ、ユイは話を続ける。


「もう少しで発表ライブが配信される頃なんじゃない?見なくていいの?」


「え、なんのライブだっけ」


「前に言った次世代ゲーム機のライブ発表のこと。」


しばらくの沈黙の後、ようやく思い出し口にする。


「あぁー・・・そういえば今日だっけ?」


その言葉に呆れたのか、ユイはメニューウインドウを開き言う。


「もう一時間もしないうちに始まるからそろそろ落ちるけど。あんたはどうすんの?まだその変な遊び続ける気?」


変な遊びと言われたからか、少しムキになり言葉を返す。


「別に興味ないから見なくてもいいんだよ。」


「そう・・・セイゼイがんばりなさ~い。」


と言う言葉を発したすぐ後にログアウトする、まるで反論をさせないかのように素早く。


「クソ・・・言いたいだけ言って行きやがって。」


「次世代ゲーム機ねぇ・・・。」


少しの沈黙の末、ムキになっていた感情より”次世代ゲーム機”と言う好奇心の方が優ったのか、メニューウインドウを開きログアウトボタンを押していた。

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俺が社会復帰を目指す理由 椎名大和 @siinayamato

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