「確かに、学園祭みたいな雰囲気がありますね」

会場を見た山下さんがそう呟きます。それに対して私も、

「私も、お祭りには付き合いで何度か行ったことがありますが。それらとも少し違うのは分かります」

と応えさせていただきました。と言うのも、私自身はそれほど興味がなかったために自らすすんで行ったことはないのですが、両親のお客様の歓待に私も協力した際、＜日本の伝統行事としてのお祭り＞を案内させていただいたことはあったのです。

そういう形で見たものと比べ、いかにもな屋台が並んでいる点では共通点もありながら、今回のお祭りの＜目玉＞となるお笑い芸人によるライブの為のステージが組まれ、山下さんのおっしゃったようにどちらかと言えば＜学園祭＞に近い雰囲気のある感じだというのが正直な印象でした。

しかしそれでいてちゃんとした＜お祭り＞になっているのを感じます。

しかも、会場が大きすぎないというのがまたいいのです。なにしろ、会場全体が一目で見渡せる程度の大きさなので、たとえはぐれたとしてもすぐに見つかるのですから。

さらには、PTAや近所の町会の有志による警備や見回りの方々の姿もあちこちに見られ、人の目が行き届いてるのが感じ取れました。

これなら安心して楽しめるでしょう。

その上で、私自身も警戒を怠りません。こういう不特定多数の人が集まるところには、不埒な輩が紛れ込む可能性は常に付きまといますので。

私を警護してくださっている警備会社もさすがにこの会場内には入ってこれませんし（小学校の近くで待機はしてくださっていますが）。

そうして周囲に目を配っていたことに気付いたらしく、山下さんが私を見ていることに気付きました。

何か言いたげな様子にも見えましたので、

「不審者がいないかどうか、チェックしています」

と応えさせていただきます。

すると山下さんも「ああ…！」と納得されたようでした。

なお、会場には、スーパーボールすくい。ヨーヨー釣り。射的といった定番の屋台が出ていたのですが、同じく定番であろう金魚すくいはありませんでした。聞くところによると、生き物を扱うにはいろいろクリアしなければいけない点があり、そこまでする必要性はないと判断されたようですね。

それでも、ヒロ坊くんも千早も沙奈子さんも楽しそうでした。

夕食を兼ねてフランクフルトを買い、焼きトウモロコシを買い、ヤキソバを買って次々とそれらを平らげ、その上さらにお好み焼きにたこ焼きも食べると、さすがに十分にお腹も膨れました。

しかし千早とヒロ坊くんは加えてかき氷を買い、それからスーパーボールすくいでは初めてにも関わらず千早がいくつものスーパーボールをすくってみせて、

「えっへん！」

と胸を張り、綿菓子を買い、射的をしと、本当にお祭りを満喫していたのでした。

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