自身の気持ちに素直になって
ヒロ坊くんは本当に素晴らしい男性です。
五年生ですが体は小さく、いまだに二年生三年生に間違われることもしばしばで、かつ優しい顔立ちをしているので女の子に間違われることも少なくありません。
本人はそれを好ましくは思ってらっしゃらないようで、『可愛い』と言われることはあまり好きではないようです。
その辺りはやはり<男の子>ということなのでしょう。
ですが、彼が通っている小学校では、身体的なこと、外見的なことで他者を貶めるような言動については見逃されることがなく、そのような発言をすればその時点で、
「そういう言い方はよくないことです」
と指導が入るそうです。
世の中にはそれを『過保護だ』とおっしゃる方は少なくないでしょう。
『子供同士のことは子供自身が解決するべきだ』
という言葉もよく耳にします。
けれど、今の私は思うのです。
『本当にそれが正しいのでしょうか?』
と。
確かに何もかも大人が先回りして解決してしまうのは好ましくないのかもしれません。それでは自ら問題を解決する力がつかないこともまた事実なのかもしれません。
しかし、問題解決のヒントさえ与えずにただ任せていたのでは、間違った方法で解決しようと思い立ってしまった場合に、それを放置してしまうことになるのではないでしょうか。
また、他人を蔑み、嘲笑い、貶めるような振る舞いをした子供がいた時にその場で、
『それは良くないことだ』
としっかりと学ばせなければ、他人を蔑み、嘲笑い、貶める行為を正当なものとして認識してしまう場合があるのではないでしょうか?
現に、ネット上などに溢れている、流言飛語、罵詈雑言の類はまさに、それは良くないことであるという認識が乏しいが故にそのようなことになってしまっているのではないでしょうか。
世の中には、
『自身の気持ちに素直になることこそ素晴らしい』
といった認識があるようですが、だからといって、
『自身の気持ちに素直になって他人を罵る』
のが本当に正しいことなのでしょうか? 自分がそうやって他人に罵られれば被害者ぶるのに?
かつての私は、
『相手に落ち度があれば何を言ってもやっても構わない』
などと考えていたのが分かります。自身では気付いていませんでしたが、そうやって自らを正当化し、他者を攻撃していたのです。
それが結果としてかえって人間関係を拗らせ、次の問題の芽を育てることになるとも知らずに。
世の中の犯罪も、そういうことの積み重ねが原因になっているものが多いのではないでしょうか?
被害者はただ一方的に被害者なだけであり、加害者だけが一方的に悪いという事例しか存在しないのでしょうか?
少なくとも玲那さんの事例についてはそうではないでしょう。
だからといって犯罪を行っていいと言ってるのではありません。
犯罪行為そのものが、
『自身の気持ちに素直になって他人を攻撃する』
という形で行われているのではないでしょうか?と、今の私は思うのです。
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