想いを新たに
帰りの電車では、さすがに疲れてしまって、気付いたら眠ってしまっていました。
私にもたれて、千早もぐっすりです。何気なく視線を向けると、ヒロ坊くんはイチコにもたれて、カナとフミも互いにもたれ合って、眠っていました。沙奈子さんも山下さんにもたれて眠っています。
山下さんだけは、スマホを操作していましたが。おそらく、絵里奈さんや玲那さんと連絡を取り合っているのでしょう。
その穏やかな表情は、相変わらず良好な関係を窺わせます。家族の関係が良好だからこそ、沙奈子さんも玲那さんも救われているのだと改めて実感します。
本当に素晴らしい家族です。将来、私が目指すべき形がそこにあるだと素直に思えるのです。
そしてヒロ坊くんとなら、理想の家庭を築けるに違いありません。
そんなことを思いつつ、千早の重みと
「いや~、楽しかった楽しかった」
帰りは結局、行きの時のようなことは起こらず、無事に帰ってくることができ、ヒロ坊くんの家に戻ってカナがそう声を上げました。
私にとってはそれこそが何よりです。
しかし、今回のことは私にとっても大きな教訓となりました。犯罪加害者家族の置かれている状況の一端を改めて垣間見ることになったのですから。
許されざる犯罪行為を行った当人と、その家族を混同することは、非常に理不尽な行いであるという実感を再度得ました。
また同時に、今回、カナが経験したようなことを沙奈子さんや山下さんにもたらさないようにする為に一緒に海に行くことを諦めざるを得なかった玲那さんと、玲那さんを一人にはできないということでやはり残られた絵里奈さんのことも、考えさせられました。
玲那さんの場合は<加害者本人>ではありますが、それに至る経緯というものを抜きにして考えることはできないでしょう。
私は、ヒロ坊くんが幸せに生きられる世の中を作っていきたいのです。
その為には犯罪を減らしていくことも考えなければいけないと感じています。
ですが、それを実現するにはただ犯罪者を罰すればいいわけではないことも、玲那さんの事例から学びました。
犯罪に繋がる芽そのものを摘み取る為の方法を考えないといけないのです。
事件は、起こってしまってからではなかったことにはできません。加害者を罰しても、起こった事実そのものは消えることはないのです。
また、玲那さんは加害者であると同時に、被害者でもあります。犯罪被害者が次の犯罪の加害者になってしまうということも、決して少なくないでしょう。
ヒロ坊くんとの海を楽しみつつ、私は、彼がこれからも幸せでい続けられるようにする為にこそ、様々なことを考えていかなければと、想いを新たにしたのでした。
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