外伝3 その3 「バカは勝手に自滅するから自分で手を下さないですむ」
ぶおりのやったことは、なんだかすごい騒ぎになってしまった。レミのケガは思ったより深くて保健室じゃダメだったみたいで、救急車が呼ばれた。そしたら警察まで来てぶおりは連れていかれた。あ~あ、やっちまったなぶおり。これでお前の人生終わりだよ。
レミには悪いことしたけど、ぶおりみたいなバカを終わらせられたからいいよね。でもお母さんは、
「なにメンドクサイことやってんだこのバカ!」
って言って私を叩いた。
なんで? 私はお母さんがやってたのと同じことしただけだよ? そしたらぶおりがキレただけだよ。私、なんにも悪いことしてないじゃん!?
お母さんは警察に話聞かれたりするのがメンドクサイと思ってたみたいだった。それが嫌で怒ったみたいだった。だったら私に言わないで警察とかに言ったらいいのにさ。
そうだよ。私たちは被害者なんだよ? 被害者がメンドクサイのっておかしいじゃん。もっと大切にされるべきって思う。法律がおかしいよな。
それからぶおりは学校に来なかった。
誰かが警察に逮捕されたって言ってたけど私は知ってる。小学生じゃ逮捕とかされない。補導っていうやつだよな。やっぱり法律がおかしいって私は思った。私たちは殺されそうになったんだよ? ぶおりは私たちを殺そうとしたんだよ? そんな奴、死刑でいいじゃん。あんなの生かしといても税金のムダだよね。
そう言えばレミもあれから学校に来なくなった。ケガがそんなに酷いのかな。お見舞いとか行く?ってミトに言ったけど、どこの病院にいるのか分からないから行けなかった。
あと、マスコミが来た。テレビも来た。インタビューされた。大事な運動会の練習の時に体操服忘れて迷惑かけられたから注意したらキレてカッター振り回してきたって言っておいてやった。目つき危なかったしいつかこんなことするんじゃないかと思ってたって言っておいた。
事件のことがテレビでやってた。でもテレビではなんかイジメがあったって話になってた。マスコミは嘘を流すってホントだったんだって思った。イジメなんかなかったよ。私たちはぶおりがみんなに迷惑かけるから注意してただけだよ。それをイジメとか、ありえない。きっと、ぶおりの親とかが嘘を言いふらしまくってるんだって思った。子供が子供なら親も親だって思った。
だってネットを見たら、みんな、
「こんなクソガキ生かしといたらまたやるだろ。死刑一択!」
「少年法とかマジ要らねーよな。廃止しろ!」
「体操服忘れて注意されて逆ギレ? マジクソすぎだろ。タヒねよ」
とか言ってくれてるよ? これが世間の本当の意見だよ。ネットの中には本当があるんだって、みんなは分かってくれてるんだって私はなんだか元気になった。
一か月くらいして、レミがやっと登校してきた。ほっぺたにすっごい大きなバンソウコが貼られてた。まだケガが治ってないんだって思った。ぶおりがホントにヒドイことしたんだって思った。でも、
「レミ、大丈夫?」
って私が話し掛けたら、なんかすっごい顔でニラまれた。しかも、
「あんたのせいだからね!? ぶおりが狙ったのはあんただったのに、あんたが避けるから!」
って言われた。
なによそれ!? 私のせい!? 私は避けれたんだから、避けれなかったのはレミがドンクサイからでしょ!?
ムカツク! せっかく心配してあげてんのになのその態度!? あんたがそういう態度ならいいわよ。勝手にしたら!!
だからもう、その日からレミとは口も利かないようにした。そしたらミトも最近なんか様子がおかしくて、私のこと避けるようになってきた。あ~もう、メンドクサイ!
でも私は平気。ネットにぶおりの事件がアップされるたびに、みんながぶおりのことを叩いてくれる。少年法のせいでぶおりの名前とかマスコミは出さないけど、ネットにはぶおりの名前もぶおりの家族の名前も全部さらされてた。ざまーみろ! やっぱ正義ってネットの中にしかないんだね。
クラスの雰囲気もなんだかおかしいし、みんな私を避けてる気がするけど、ネットを見てたら平気だよ。みんな私の味方だから。
それからまた一か月くらいして、ぶおりが転校したらしいっていう話を誰かがしてるのを聞いた。転校って、おかしいよな。あんな奴、死刑にしなきゃダメだよな。
だけど家に帰ったらお母さんがなんかますます機嫌が悪くなってた。お母さんが働いてる病院にクレームが来たとか言ってた。イジメの加害者の親がなんで看護師とかやってんだよとか言われたって言って、私を叩いた。
だからなんで私を叩くの!? 私イジメなんかやってないよ!? そんな言いがかりつけてくる奴が悪いんじゃん。
なのにそれから後、お母さんはもっと私を叩くようになった。
やめてよ、お母さん! 私はそう思ったけど、やめてくれなかった。
そんな感じのが続いて、ある時お母さんが急に言った。
「京都に引っ越しするから。あんたらも転校ね」
京都って、関西じゃん!? なんでそんなとこへ!?
「あんたのせいだよ!!」
私、その時は何にも言わなかったのに、お母さんは私の顔を見てまた叩いた。
「引っ越しとかイヤだ~」
とか泣き出した。
それから一週間で私たちは本当に京都に引っ越しすることになった。学校も転校することになった。なんで私たちが転校とかしなくちゃいけないのか全然分からなかった。
でも転校したら誰も事件のこと知らなくて、余計なこと言ってくるのもいなくて思った程は悪くなかった。普通にしてられた。だけどこの学校、私がちょっと他人に注意したら先生が、
「注意する時は言い方を考えましょうね」
みたいなことをいちいち言ってくる。ふざけたことしてるのがいたから叩いてやったら、
「叩くのはダメです。言葉で注意してください。それでもダメな時は先生に知らせてください。先生の方から指導しますから」
なんてのも言ってた。何かウザいな~とか思ったけど、それさえ我慢したら平和だった。
家に帰ってネットとか見ると、もうぶおりの事件のことはほとんどアップされなくなった。他にも事件がどんどん起こるから、みんな新しい方に行くんだなって思った。でも似たような事件が起こるとやっぱりぶおりみたいなことやった奴が叩かれるから、私は正しいんだと思えた。だから別にいいや。それだけ確認できれば。
それにぶおりの名前とかはちゃんとまださらされてるし、それを見るとざまーみろって思える。ちゃんとネットにはまだ私の味方がいるんだって感じる。正しいのは私だもん。間違ってるのは他の奴らだよ。だからきっと、ぶおりのことをいつか誰かが死刑にしてくれるって私は思ってた。あんなことする奴は死刑。それが正義だと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます