ちょっと苦手
「さあ、今日も楽しくお勉強しましょうか」
週に二回、私は今でもヒロ坊くんの<家庭教師>をしています。もっとも、教える相手は今では三人になっていますが。
「は~い♡」
千早が明るく笑顔で応えてくれました。
そう、私の前には、ヒロ坊くん、千早、沙奈子さんの三人がいるのです。
千早と沙奈子さんがそれぞれ自身の家に帰るまでの間、彼の家で千早さんと沙奈子さんは過ごすことになっており、せっかくなのでヒロ坊くんと一緒に勉強することになったのでした。
ちなみに宿題は、いつも私がこの家に訪れる前に終わらせています。また、勉強の時間も、五時から、山下さんが沙奈子さんを六時前に迎えに来るまでの一時間弱ということになっています。
なお、私は今では毎日この家を訪れていて、勉強がある日以外は、彼や千早や沙奈子さんにも手伝ってもらって夕食の用意をしていますが。
と言うのも、実は千早が、沙奈子さんの家でホットケーキ作りを学び始めたことをきっかけに、今では様々な料理を作れるようになっているのです。そしてそれは、ヒロ坊くんも同じでした。
沙奈子さんは、絵里奈さんとまだ一緒に暮らせていた時に料理を習ったそうです。しかも結構な本格的な料理を。
しかも沙奈子さん自身にその才能があったのか、小学五年生とは到底思えない料理を作ってみせるのです。カレーやシチューに至っては、市販のルウを用いず、一からルウやホワイトソースを手作りするという凝りようで。
私も沙奈子さんの作業を見倣い覚えようと思うのですが、残念ながら私にはそちらの才覚がないらしく、手作りハンバーグまでは作れるものの、一からルウやホワイトソースを作るカレーやシチューは上手くできそうにありませんでした。手順そのものは頭に入るのですが、その通りに体が動かず、危うくルウを焦がしそうになったりしたのです。
「ごめんなさい…」
見かねた沙奈子さんに手助けされてしまい、私は落ち込んでしまいました。沙奈子さんは決して怒ったりしないので、余計に申し訳なく感じます。
するとしょげ返ってる私に、
「大丈夫だよ。ピカちゃんはいっぱいすごいことできるもん。だからお料理がちょっと苦手なくらいのがカワイイって…!」
と彼が優しく声を掛けてくれたのです。さらには千早も、
「へっへっへ~♡ お料理の腕じゃ私の方がお姉ちゃんより上ってことだね~♡」
などと胸を逸らしながら自慢げに言ってきますが、それは千早なりの励ましでした。
『料理くらいは私にも勝たせてよ』
ということなのだそうです。
こうして、千早やヒロ坊くんの料理の腕もメキメキと上達していったのです。
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