セレブガール・ミーツ・ボーイ その3
彼との出逢いは、今年の夏休み。私の別荘に、イチコ、フミ、カナの三人を招待する日程等を決めようと、イチコの家に訪れたことがきっかけでした。
一学期の間に私とイチコ達の間でちょっとした<事件>があり、イチコ達との出逢いについては必ずしも好ましいものではありませんでしたが、お父さんによく似たイチコの懐の深さに救われ、私はイチコ達に友人として認めていただけることになったのです。なので、別荘への招待は、そのお礼という意味もありました。
しかし、その打ち合わせ当日、
「これは……」
と、イチコの自宅前で立ち尽くしてしまいました。
門もない玄関前に雑然と自転車が並び、それどころか掃除さえちゃんとしてるのかどうか疑わしいその家の佇まいに、私は何か近寄りがたいものさえ感じてしまっていたのです。
そんな私の様子に気付いたのでしょう、たまたまイチコの家の近くまで来た時に偶然合流したカナがニヤニヤと笑いながら言いました。
「玄関前でそんなにビビってたら、イチコんちには入れないぞ? どうする? 今からでも集合場所変えるか?」
まるで挑発のような物言いに私の背筋が伸びます。
一体、この家の中には何があるというのでしょうか?
いいでしょう。ここまで来たら後には引けません。受けて立ちましょう。
私が意を決して、いかにも手作りと思しき<やまひと>と描かれたネームプレートが掛かる扉横のチャイムを鳴らそうとした時、また声が掛けられました。
「あ、二人とも今着いたとこ? 丁度良かった」
フミでした。カナの自転車の隣に彼女も自転車を並べます。そのフミに向かってカナが、
「フミぃ、聞いてよ。ピカったらイチコの家見てビビってるんだよ? さっすがセレブなお嬢様だよな」
と。それに対してフミも、
「へえ、そうなんだ?」
と思わせぶりな表情を見せます。
何でしょう? 大したことじゃないはずなのに、何か悔しい気がします。いいでしょう。その挑発、合わせて乗って差し上げましょう。
改めて意を決し、チャイムを押しました。するとチャイム音の後に、「はーい」と家の中から声がしました。どたどたと何か騒々しい音もします。すると扉が開き、そこには小学三年生くらいの小さな子が立っていました。その姿を見た瞬間、私はきゅうんと体の中で何かが締め付けられる感じがしました。
「か、可愛い~!」
思わず声が漏れてしまいます。女の子? いえ、男の子のようです。髪は短いですがすごく優しい顔立ちの、一見すると女の子にも見えてしまう男の子でした。
それが、彼、
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