第11話 食事中です

ドカーン!


 俺の屋敷砲撃されてるけど、結構頑丈。赤ちゃんとはいえドラゴンが住むことができるレベルの頑丈さ。簡単には壊れない。


ドカーン!


簡単には壊れないとはいえ、放っておくわけにもいかない。砲弾がぶつかるたびに壁がミシミシいってるし、売られたケンカは買わなきゃな。でも、俺はドラゴンベイビーにスライム飲ませている最中だ。俺は両腕で哺乳瓶を持ち上げながら、口だけで器用に食事をしつつ、ギリンジさんに話しかけた。


「ギリンジ…モグモグ…さん。大砲の…モグモグ…音うざくない?…モグモグ…ゴックン」


ここで俺の食事は終了。しかし、ギリンジさんは「ドカーン!」いう音にビビることなく、マイペースに食事中。ナイフとフォークを使い、貴公子っぽい食べ方してる。


ドカーン!


うぁ、壁がギシッた。あ、天井のシャンデリアも揺れてる。ヤバいぞこれ。なんとかしなきゃ。お願いしよう。ギリンジさんに。


「ギリンジさん。大砲打ってるヤツ倒してきてくんない?」


「勇者よ……我は食事中だ」


「助けてくんないの?居候でしょ。ここに住んでるんだから、屋敷壊されたらイヤじゃね?」


「我は思うぞ。屋敷を壊されたら不快だと……」


「でしょ。屋敷壊すような外道を許せないっすよね」


「我は思うぞ。床に穴を開け侵入し、ツボや絵画やパイプオルガンを破壊するような外道を許せぬと」


「エッ?」


下僕がついだワインをギリンジさんが一口飲み、


「外道の屋敷が壊れるさまは、滑稽であろう」


と、憂いのある表情で語った。朝からワインとはいい身分だな、とか思うけど、そんなのどーでもいい。ギリンジさん、助けてくんないっぽい。

 まぁ、こないだだもんな。ベイビーがギリンジさんの屋敷をぶち壊してから7日位か。示談になったけど、根に持ってたんだな。ギリンジさん、表情がクールだから、分かりづれえ。


「屋敷壊したのは悪かったけどさ……。示談したし、ギリンジさんの屋敷が建て直るまで居候してもいいって、俺、気前良くOKしたんだから、気前良くが砲撃している奴を倒してくんない?」


「勇者キヨス…ドカーン!

屋敷を壊され…ドカーン!

示談するのも…ドカーン!

居候するのも…ドカーン!」


砲撃されまくりで、ギリンジさんが何言ってんのかよく分からない。


「何言ってんの。つまりどーいうこと?」


ギリンジさんは厶ッとした表情で


「コーヒータイムだ。静かにせよ」


下僕がコーヒーを二つ持ってきた。俺とギリンジさんの分だ。ギリンジさんはコーヒーの香りを堪能した。俺もコーヒー好き勇者だ。手を使わずにコーヒーを飲むスキル「哺乳瓶に入れてもらい下僕に飲ませてもらう」を発動した。


チュパチュパチュパ


俺がコーヒーを飲む音。


チュパチュパチュパ


ベイビーがスライムを飲む音。親子で哺乳瓶。この微笑ましい光景を、イケメン下僕が優しく見守っている。ギリンジさんはクールにコーヒーの味を堪能している。幸せ家族だな。ほんと、幸せなひととき。でも、今、砲撃されてるんだよ。


ドカーン!

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