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第10話 イケメンな朝だ

「朝早くから、何の用だ?勇者キヨスケ……」


俺の家に居候している魔界のイケメン、ギリンジさんが眠たそうに朝の挨拶にやってきた。俺は爽やかに答える。


「ギリンジさん!腹減ってない?今から朝飯だから席に着いて、早く。」


食事ルームにはデカいテーブルがあり、俺とドラゴンベイビーは既に着席して料理ができるのを待っていた。そこにギリンジさんが合流。


俺の家はダンジョンの二階にあるデカい屋敷だ。知っての通り、ここは戦場。ゆっくり休んでいられない。朝食は手早く済ませたい。


「ギリンジさんって鬼だから、メシ食べるスピード、速い方でしょ?」


「勇者よ……前にも言ったはずだ……我は鬼ではない。種族名は…」


「イケメンな鬼だから、イケメン鬼族でしょ?」


「違う、種族名は…」


「どうでもいいッス、そんなことより腹減った。メシ早く持ってきてー」


「お待たせしました。勇者様」


若い下僕が食事を運んでくれた。俺の下僕じゃないぞ。ギリンジさんの下僕。昔、ギリンジさんに勝負を挑んだ魔法使いで、負けてギリンジさんに魂奪われて、下僕になったらしい。


「ご苦労、イケメン!」

 

「勇者よ……前にも言ったはずだ……我が下僕の名はイケメンではない。名前は…」


「イケメンな下僕だから、イケメン下僕さんでしょ?」


「違う。下僕の名は……」


「どうでもいいッスよ。名前なんて。そんなことより、今日のベイビーのドリンクは何?キモいんですけど?」


下僕が答えた。


「本日捕れたてのグリーンスライムです。」


 テーブルに、骨つき肉と野菜が並んでいるが、これは俺とギリンジさんが食べる分。ドラゴンベイビーの分はドリンクのみ。哺乳瓶でドリンクを与えている。赤ちゃんとはいえドラゴンだから、哺乳瓶はデカい。俺の身長とほぼ同じ大きさだ。あと、哺乳瓶の中身、緑色で泡立っていてる。

 俺はデカい哺乳瓶を両手で頭上に持ち上げ、ベイビーの口元まで持っていった。ベイビーはチュパチュパ飲み始めた。


「サンキュー、イケメン。ついでに肉食わせてくれよ、俺にな!」


下僕は骨つき肉を手に取り俺の口元まで持ってきた。俺の両手は哺乳瓶を持ち上げるのに必死だ。そこで、俺は特殊能力、口だけで器用に骨つき肉を食べるスキルを使った。

 俺はデカい哺乳瓶を両手で持ち上げ、バンザイの姿勢を維持しながら、口にくわえた骨つき肉をムシャムシャ食いつつ、ギリンジさんに話しかけた。


「モグモグ…ギリンジさんも…モグモグ…速く食って…モグモグ…」


ギリンジさんは着席し、ナイフとフォークを使い食事している。食うのが遅くて見てらんない。速く食べろよ、って思うけど、まあ、仕方がないか。ギリンジさんはダンジョンの三階に住んでたから。


このダンジョン、

1階は雑魚の棲家

2階は戦場

3階は地獄

4階以上はよく分からないがヤバいらしい。

 このダンジョン、天井がものすごく高い。床が地面で天井は雲の上にある、そんな高さ。俺の屋敷は二階に建っていて、その上空の二階の天井の上、つまり三階の地面にギリンジさんの屋敷が建っていた。

 まぁ、訳があってギリンジさんは今、俺の屋敷に住んでるけど、元地獄の住民。地獄といっても悪人が死んだ後にイタぶられる場所じゃないぞ。地獄みたいにスゲー怖い場所って意味。あくまでも比喩ね。んで、地獄には強いヤツがゴロゴロいる。でも、戦場よりはヒマらしい。ギリンジさんの日常生活は、地獄っぽい屋敷に住んで、アホな敵が戦いを挑んで来るのを待つ、って感じだったそうな。まあ、お気楽な身分だな。

 でも、ここは二階。戦場だ。ゆっくりと休んでいられない。いつ戦いが起こっても不思議ではない。俺は骨つき肉3本と米と少しの野菜を手を使わずに食べながら、ドラゴンベイビーに哺乳瓶に入ったスライムを飲ませていた。そのとき、


ドーン!


と、スゲーでかい音がした。誰かが俺の屋敷を砲撃してきた!

 厄介なことになってきた。これはヤバい。マジでカンベンして欲しい。俺の屋敷壊す気か?ほんと、やめてくれよ。まだ、ベイビーの授乳、じゃなく、授スライムが終わってねーんだぞ!

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