第3話 おじゃまします。
「俺、一応、勇者なんで、モンスターとはバトルが基本なんすよ。だから、勝負しません?魂かけた勝負。」
俺のバトル提案に鬼っぽい奴がうっすら笑みを浮かべて、腕を上げた、なんか、爪から電気がビリビリ出て、ちょっとヤバそうな雰囲気してきた。
「ちょ、まてまて!早い早い!その前に相談あるんだよ。電気出すの止めて聞いてくださいよ。うちの赤ちゃんが疲れてるから、そろそろ寝かしつけしたいの。だから部屋に入れてくんない?」
と、言いながら俺はドラゴンベイビーに乗ったまま、二階の天井に空いた穴にツッコミ、三階の鬼の部屋に着陸した。
鬼の部屋はゴシック様式でキマっていて、なんか悪魔っぽい雰囲気がある。巨大なパイプオルガンもあり、ちょっと演奏したくなってきた。けど、まあ、はじめにやることは自己紹介か。俺はドラゴンベイビーからさっそうと降り、
「俺の名はエドワード・キヨスケ。勇者として悪を退治にきた。お前の名を聞かせろ!」
とカッコつけた。
「愚かな。人間ごときがワシに刃向かうとは。魂を失う前にお主の望みを叶えてやっても良かったのだぞ。至高の快楽を味わう機会を、自ら放棄し、ただ苦しみながら死に至る道を望むとは。何たる愚かな……」
こんな感じの演説を鬼っぽい奴がはじめた。なんか、話が長そうだな。時間がもったいないから、このすきにベイビーの寝かしつけしよう。夜ふかしさせたら可哀想だからな。
俺はパイプオルガンを演奏した。ベイビーの為に子守唄を弾いてあげたんだよ。こう見えてもガキの頃からオルガンは習っており、腕前はプロ級だ。
パーララー パーララー♪
ピラピラピラピラ リーラ♪
即興にも関わらずモンスターの演説にピッタリハマった子守唄に仕上がり、ベイビーも落ちついて横になったんだけどさ。モンスター、まだ演説してんの。なかなか終わらない。赤ちゃんを寝かしつけ中なんだから、早く終われ。サッサと終われ。頼むからさ。
「おい、そこのモンスター。手っ取り早く名前を教えろ。そして、しばらく黙れ」
とお願いした。
「たかが二階の勇者が大きく出たものだな。まあ、よかろう。ワシの名は魔界の貴公子ギリンジ!」
ブアーーーーー
大音量でパイプオルガンが鳴り響いた。バトルの開始の合図だ。
……ってな感じで、ギリンジさんっていう三階のヤバいモンスターとバトルになったんだけどさ、ホントはバトルしたくなかったんだよ。赤ちゃんを寝かしつけてる最中で、武器も何も装備してなかったからな。でも、仕方ないよな。魂失いたくねーし。あと、俺の舐めた態度からギリンジさんを雑魚だと誤解する奴もいるかもしれないが、そんなことないぜ。精一杯余裕あるフリをしていたんだ、その時はな。
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