第3話 『偽りの入れ物』

もしも・・

この世界が俺の思い通りに想像出来る世界であるならば!!


『クリスティーナをこの世界に連れてこられるんじゃ?』


そんな思いが心の中から湧き上がってくる!!

でも・・

それが出来るのならば、俺は元の世界に戻れるんじゃ?


そうか!!

その考えがあった!!

『俺はもしかしたら、事故の影響で時間の狭間に飛ばされてしまったんじゃないのか?』


太陽を作る事が出来るのならば帰る事だって出来るんじゃないのか?

俺はそう思い


「元俺が居た世界へ俺を運べ!!」


そう大声でこの世界に向かって宣言した。


俺の発した言葉は虚空を揺らし・・



・・・・



・・・・


5分ガ過ぎ・・


・・・・


・・・・



30分が過ぎ・・・



・・・・


でも何も起こらなかった。

俺の力はこの世界だけ有効なんだろうか?

そう思ったが諦めきれない!!


俺はもう一度

期待を込めて!!


「元の世界のクリスティーナをこの世界に顕現せよ!!」


と手を上げながら高らかに宣言!!


その言葉を言った瞬間!!

物凄い羞恥心に押しつぶされそうになって身悶え


うをぉ~~

これって素に戻ると超~恥ずかしいぞ!!

『中二病丸出しの痛い奴・・』


こんな世界に来てまで

俺何やってんだよ!!

『超恥ハズイ!!』

・・・

・・・


クリスティーナをこの世界に呼び込もうとしたけれど・・

予想通り失敗に終わってしまった。


まあ自分自身が元の世界に戻れないんだから、クリスティーナをこっちの世界に呼べなくて当然だよな。


解ってはいたけど、実際にやってみて無理だったのを現実に突きつけられると、正直キツイ・・・


こうなったら!!

クリスティーナを創造するしかないか!!

この俺1人しかいない世界で1人きりで生きてゆくなんて気が狂いそうだ!!


クリスティーナと・・

今まで感じた事のないこの気持ち

クリスティーナはただ一人の運命の人


そう確信出来る!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!


何故!!



何故なんだ!!


もう少しで・・


もう少しで・・



ただ一人の運命の人と・・・


俺の何がいけなかったんだよ!!


クリスティーナ!!


クリスティーナ!!


俺の運命の人・・・



作ろう・・・

俺の愛しい人をこの世界に!!


・・・


でも生き物なんて作れるんだろうか?

もし出来たら・・・


怖い気は・・するな・・・


本当にそんな事を俺がして良いんだろうか?              



・・・


・・・


・・・


俺はおかしくなっていたんだろう・・・

この何もない世界で、確実に狂ってしまってたのだろう・・・

そんな禁忌を犯しても、クリスティーナをこの世界に想像させたいと思った。


『一人では、この何も無い世界では辛すぎる・・』


俺は天井に輝く太陽を見上げながら覚悟を決め


あのクリスティーナが言ってくれた

「私達の出会いは此れはもう運命だね。このまま私達付き合っちゃおうか?」

という言葉を思い浮かべながら!!




力の限り声に力を込めて


この何もない世界に向かって思いっきり叫んだ!!







「クリスティーナ!!」







その瞬間


俺の目の前に!!



青山高校の制服姿をした女の子



透き通るような腰までありそうな金色の長い髪


大きな薄青色の瞳


スラっと通った鼻筋


小さな桜色の唇



そんな


『クリスティーナが姿を現した!!』



俺はその姿を見た瞬間大声で


「クリスティーナ」


と叫んだ瞬間にクリスティーナの体を抱き締めた。

でも・・


クリスティーナの反応が全くない!!


抱き締めたクリスティーナの体は・・


柔らかくって


暖かくって


甘~~い女の子特有の香りが漂ってくる



でも・・・



表情が全く無い・・



まるで・・・


『クリスティーナそっくりの人形』


俺は完璧にクリスティーナの体を作る事に成功した!!


ただ・・



それは入れ物だけ・・・



心までは作る事は出来なかったのだ!!


俺は、その事に気づいた瞬間


『心の無い入れ物だけのクリスティーナの体を抱いたまま涙が枯れるまで泣きたのだった』


つづく・・・



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