第6話 本日主役の誕生日でーす!
「…………だって」
本日主役の誕生日!
と、書かれた立て看板を見て一言呟き、姉であるカヨカは後ろに控えていた弟のトロンへと振り返る。
「一番に誕生日お
そうでしょ? と言うように、トロンは
「書こうと思ったのは思いつきなんだけどね~」
作者の化身であるスノーマンはゆったりとした口調でのほほんと、のたまう。
「最初のお祝いがユスティーかぁ。まあ、ある意味最初の一番が、あのヒトでも問題なかったかもね」
ユスティーと、親しげに呼ぶ彼女の瞳は優しさに満ちていた。未だ出番のない彼について語るかのように、カヨカは意味深な笑みを浮かべる。
「けど、まだまだアイツの出番は来ないよ」
そんなにユスティーと呼ばれる彼の話をするのが嫌なのか、反発するかのようにトロンは意地の悪いことを言う。
「……と、想定しつつ? 意外と早いかもしれないよ?」
出番。そう続けようとするスノーマンの
「はァ?」
「まあまあ、今日はユスティーの話題じゃなくて、君たちのおめでたの日なんだからもうちょい楽しんでくれても良いのでは?」
機嫌を損ねるのは本意ではないという意思を伝えるため、スノーマンは
「夏が来る前に溶けちゃえ」
そんなスノーマンの機転を察しつつも憎らしいことには変わりないようで、トロンは可愛くない一言をボソッと口にする。
「ひどい! こんがり焼けるだけかもしんないじゃん!?」
こんがり焼けた夏仕様のスノーマン。そんなイメージも悪くないかもしれない。そう思いつつも、やはり溶ける方が早いのかなとちょっぴり目に涙を浮かべるスノーマン。
「夏の日差しにこんがり焼けたスノーマン……有りかも。でもこんがり焼ける前に、そんなバテバテで軽く溶けかけてる今の状態で、夏……乗り越えられるの?」
「ううっ……!」
そんなスノーマンを眺めつつ、会話に入ってこなかったカヨカまでもが事実を突きつける。ぐさりぐさりと、真実という名の大きな矢印が胸に突き刺さる。というイメージを頭に描き、心の痛みに呻くスノーマン。
「今ももう
夏中心の誕生日にしとけば、その日お祝いついでに、一応生存報告も済ませられるもんねー。
わざとらしく、とぼけた口調で裏事情の嫌味を言うトロンに……作者の化身は、全力でそれを──否定する。
「違うよ! それは違う! だって気づいたら夏中心の誕生日のコが多くなっちゃっただけで、意図的なんかじゃ決してないよ! むしろ僕は冬中心にしようとしたくらいだもん!」
私は冬が好きだ!
と、目をかっぴらいて宣言するスノーマンの魂の叫びを聞いたトロンは、やれやれと言いたげに肩を落とす。
「作者さん、好きな季節は冬だもんね」
「昔っから変わらず冬一択。雪降っても未だに喜んでる」
カヨカとトロンが、スノーマンの冬好きに呆れている横で、作者の化身であるスノーマンは遠い目をして過去を振り返る。
「子ども心を忘れない、ステキな大人になれたらなって。そう、なりたかったんだ……」
「過去形?」
「そろそろ、入っても良いだろうか」
「あ~あ~!」
カヨカが作者の化身にツッコミを入れると、タイミング良く現れたふたり。ひとりは部屋の扉を幽霊のようにすり抜けて、もうひとりは扉の隙間から上手く入り込んで、
「そうだ! 忘れてないけど忘れちゃいけないこと忘れてた!」
「意味わかんない」
ハッと意識を取り戻したスノーマンがわけが分かるようでやっぱり分からないようなことを言う。それに律儀に反応するトロン。そんなふたりのやり取りを微笑ましそうに見つめるリアン。
「
「あぁあ~♪」
ふわふわと宙を漂いながら、彼らは愛しいコらに向かって彼女たちの誕生を祝う。
「…………誕生日パーティーなら、
照れているのか、戸惑っているのか、それとも作者の都合によりカットされたパーティーのことを悔やみ拗ねているのか、カヨカはそっぽを向いた。そんな姉を
「こういうのはケースバイケース。時と場合によりけり。ぶっちゃけ作者の都合ってことで飲み込んでちょうだいな」
そんなカヨカに、ごめんねお願いと言うように作者の化身であるスノーマンは
「早く
「忘れずにちゃんと書いてよ? リアンとあーちゃんは、もう一回お祝いありがと」
主役であるふたりからのお許しが出たところで、
「ふふっ。どういたしまして」
「あ~あぁ~♪」
宴もたけなわですが、
「もちろん! それでは改めまして……」
カヨカちゃん、トロンくん、お誕生日おめでとうございます!!
蛇足として。
ふたりの誕生日プレゼントは、ヒトをダメにする巨大あーちゃん型クッション。あーちゃんクッションは、クッションの上でトランポリンも出来る優れもの! このプレゼント……ふたりには、そこそこ喜んでもらえましたとさ♪
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