第4話 遊ぶ髪

 リアンの髪はよく遊ぶ。遊ばせているわけでもないのに、ふわりゆらりと手を振るかのようによく揺れる。一房、二房、まるでさよならと言うように揺れる。足首まで伸びた髪がちょうど真ん中から二手に分かれ、リアンの感情を反映するかのようにふわりと浮かぶ。しかし、誰もその髪を手に取ることはできない。見えるお化け。そのような存在であるリアンは、誰の手にも、触れることはない。

「僕には、何も出来はしない。触れることも、触れてもらうことも。何も出来ないのだ」

 むき出しの足で地面に降りる、振り。裸の手で、すっ……と撫でる、振り。どんなに手を伸ばそうが、するりと容易くすり抜ける。便宜上、彼に敵うものはいない代わりに、彼は誰かに何かをしてもらうことも叶わないのだ。

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