第3話 奴は、増殖している……!

 リアンは呼ばれた。四つ在が便宜上、彼を思い出したことにより、リアンは目覚め、また起きることができた。

「ありがとう。四つ在が思い出してくれたのか」

 リアンは呼ばれた。四つ在の住み処に。辺り一面が、四つ在で溢れかえるその場所に。

「これはまた……たくさん増えたのだな」

『あ~』

 たくさんの四つ在が、一度にたくさん返事をする。リアンは思う

「こんなに大勢の集団で、もしも発狂するがごとく叫ばれては堪ったものではないな」

と。

 そんなリアンの心境に欠片も興味がないのか、四つ在は思い思いに水を得たり太陽を浴びたり、呑気に日向ぼっこに興じている。

「あああ~♪」

 四つ在はリアンを思い出した。ただ、そこにいてもらうために。きちんと、そこに存在していたのだと、忘れないために。何も考えていないようで、よく考えている四つ在の心境は、リアンに伝わるはずもなかった。

「四つ在は、いつでも幸せそうだな」

 互いの気持ちを知らなくとも、今日もまた、彼らは共にいる。きっと明日も、共にいられる。

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