七
「来たね、リョウくん」
「お前も一週間付きっきりで見ててくれてありがとな。ご苦労様」
「大変だったけど、これでなんとかなりそうだね」
「良かったな、ソウタがいてくれて」
「まあ、わたしに言わせればまだまだだけどね……ふふん」
芽ヶ沢さんに紹介状を手渡してから一週間後、彼女の手術を担当すると、ソウタから連絡があった。その知らせを聞いて、俺たちも行動を開始した。
「こんにちは、芽ヶ沢さん。今度こそ、あなたの痛みを治しに来ました。これでもう最後です」
「……塩水の準備出来たぞ、早くやろうぜ」
「了解。それじゃあ麻酔かけますね。大丈夫、すぐ終わりますよ」
再び訪れた平田さんの家で、俺たちは最後の準備に取り掛かっていた。キリコが付きっきりで見ていたから、芽ヶ沢さんの霊は相変わらずそこにいた。
キリコがカテーテルを繋ぐと、ペットボトルから少しずつ塩水が流れ出す。
しばらく場が沈黙に包まれた。
「……よし、眠ったみたい。あとはソウタからの連絡を待つだけだね」
「ああ、そうだな」
さて、手術の計画はこうだ。まず、ソウタが先に芽ヶ沢さんの手術を始める。ソウタには一足先に、芽ヶ沢さんの左心室にある患部を除去してもらう。
そっちが終わり次第、看護師を通じて俺たちに連絡、残った大動脈瘤をキリコとソウタで同時に除去する。これなら、互いに何の影響も無く手術を終えられるはずだ。
「…………」
「…………」
またも沈黙。時計の針の音だけが聞こえる。キリコは目を閉じて集中しているようだ。とても話しかけられる様子ではない。
外の日も傾きかけてきた、その時だった。
「──!」
俺の携帯が鳴った! 急いで応答する。
「もしもし、東屋先生ですか?」
「そうです! 西村先生の方は?」
「今、左心室の血栓を除去しました!」
「了解! 残った方は?」
「十六時から始めるそうです!」
「手順は?」
「大丈夫! ソウタもわたしも北野先生の流儀だから、細かい所まで全部一緒!」
「キリコ……! わかった。手順は西村先生にお任せします! それでは!」
電話を切り、キリコの方を見ると、既に彼女は医者の顔になっていた。
時計を見ると、あと一分を切っている。
「……それではこれより、大動脈瘤切除術を開始します。はいメス──」
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