「……おい、朝から何の用だ?」

「つれないな、東屋。せっかくオレが飲みに誘ってやろうとしてんのに」


 遠くの空に入道雲が見え始めた日曜日。俺の携帯に、突然電話をかけてきた奴がいる。

 そいつの名前は西村ソウタ。俺とキリコの同期で、現役の心臓外科医だ。ちなみに、キリコに手術道具一式を供えたのもこいつだ。


「今日は仕事だ。少なくとも今日は相手出来ない」

「あら、インチキ霊能者は随分忙しいのね」

「何だその口調は。だいたい、インチキで三年も飯が食えるかよ」

「わかってるって。冗談の通じない奴だな。よく考えろ、オレはキリコが見えてんだから」

「はいはい……そういえば、最近どうなんだ?」

「オレ? 今准教授」

「ほう。一体いくら積んだ?」

「腕だよ、腕! 『神の手』の……キリコの再来って言われてんだぜ?」

「よく嫉妬されないな」

「出る杭も突き抜ければ叩かれないんだよ」

「そうか。まあ元気そうで何よりだ。今度うちに来いよ。キリコも一緒の方が楽しいだろ」

「そうするよ。じゃあな」


 電話を切って、俺は朝飯の支度を始めた。俺は食べなくてもいいが、キリコが拗ねる。

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