第09話【ライ山ダンジョン攻略】
大森林を抜け、ギルベルトさんからもらった地図を頼りに岩の隙間を進んでいくと、アルバトロスとの合流地点であるライ山のふもとについた。
「お前等おっせえよ! こっちは待ってるあいだずっと寄ってくる魔獣をたおしてたんだぞ!」
「もうかってよかったじゃねぇか。こんだけありゃかなり遊べるだろ」
小高い岩場から降りてきたショーンの抗議をアルマンが気安い調子で受け流した。
アルバトロスとカンナビスはともに異界門事変を生き残った戦友らしい。
「魔弾を使ったから言うほどもうかってねぇよ……ザート、偵察は言ってきたけど、俺達の記憶どおり、空からは魔獣がみえなかったぞ」
「そうですね、バルド教の発表とはちがい、やはり魔境となっているようです」
ショーンの横で、一緒に歩いてきた王国軍士官のギルベルトさんがため息をつく。
ライ山の異界門封印については、以前から疑問視されてきた。
封印の役目を負うバルド教はかろうじて封印に成功したと主張しているけれど、それまでしてきたような、跡地の上に聖堂を建てる事をしていないなど不審な点が多いらしい。
そのため、実は封印が出来ていないか不完全なのではないか、という説がささやかれていたのだ。
「それじゃ、やっぱ地上から火口をめざすしかねぇな」
「うーん、ビーコちゃんに運んでもらうのはむりかぁ」
「残念ですが、計画通り徒歩で行きましょう。ここで休憩してから火口をめざします」
ギルベルトさんのかけ声で、皆それぞれに休憩のしたくを始めた。
―― ◆ ◇ ◆ ――
休憩を終えた後、僕らは火口を目指して進んでいる。
進む先で出てくるのは第四長城外や大森林ででてきたマンティコアやスケーリーウルフ、それに加えて魔物も多数見られるようになった。
もう地図の上では三分の二以上を踏破している。
【白狼の聖域】の三パーティは後ろをカンナビスとネフラに任せて、行く手を切り開く役目を担っている。
「オークの集団に中位土弾ロックニードル斉射! 防御陣形を崩せ!」
今戦っているのはオークの大集団だ。
長城の内側にわくオークよりも強力で、全体の数も一個小隊、四十を超えている。
しかも魔鉱銃で攻撃しても、統制のとれた動きで大楯をつかい防御陣形をすぐに再構築してしまう。
「効率が悪いな……リオン、しばらく指揮をまかせていいか? 後ろの指揮官を叩いてくる」
「わかった。気をつけてね」
団員を残し、オーク達の頭上を駆け抜けて集団の後ろに飛び降りると、後ろで指揮をしていた小山が素早く向き直った。
オークの三倍はあるだろう
同じ牛の特徴は持っていても、以前に倒したオーロクシオスは魔獣だ。
巨体を生かした攻撃と通常の刀剣では致命傷をあたえられない点が脅威だったけれど、複雑な駆け引きをするような相手ではない。
ミノタウロスは大森林の他のダンジョンでも深部にしかいない危険な魔物だ。
他の魔物を従える強さと知能を持っている。
人間をだます偽計も使うやっかいな相手だ。
『ギュオオオ!!』
甲高いミノタウロスの咆哮と同時に魔鉱銃を構える。
ミノタウロスとオークの集団の間に土弾で空堀を作り両者を分断する。
これで一対一。
退路を塞がれたミノタウロスがこちらに突進してくる。
「ファイアジャベリン・デクリア!」
火魔法をうつけれど、強靱な皮膚で防がれ、まともなダメージを与えられない。
人の胴体ほどもある足で一歩大地を蹴るごとに巨体を加速し、もはや鉄塊といえる山刀を横薙ぎに振るってきた。
『ヴェント・ディケム!』
凶悪な暴風をともなって左から迫る山刀を右に移動することで避け、それでも追いかけてくる武器に落城の岩をぶつける。
「加速させるのはまずいな……」
浄眼を発動させ、ミノタウロスの周囲に十発の土弾を一気に打ち込んだ。
初見の相手に出し惜しみをしてはいけないとわかりつつも、やはりもったいない。
発現した十発のモートがミノタウロスの周囲十ジィに空堀をつくる。
一瞬足を止めたミノタウロスの背後をロックパイルで襲う。
「魔力感知か……! やはり魔物はやっかいだな」
ロックパイルは寸前でかわされていた。
空堀を飛び越え、魔法を感知する知能をもち、普通の人間が身体強化したくらいでは届かない力を振るう、人間サイズの武器では瞬殺できない巨体が迫ってくる。
『ヴェント・ディケム!』
縦横に繰り出される鉄塊の暴風を避けながら隙をうかがう。
大技をだせば倒せても、それだけ体内魔力を消費する。
先の長いダンジョンであまり派手な戦いはできない。
ボスと戦うだけ、せめて安全に離脱するだけの余力は残さなければならない。
「
浄眼の視界から千の鋼糸を発現させ、ミノタウロスの全身を拘束する。
「——発火、絶叫する
千条の鋼糸は加熱され溶融し、ミノタウロスをつつむ一枚の布と化した。
『——ュオオオ——』
ミノタウロスの絶叫は再度作られた空堀の中に響くが、次第に聞こえなくなった。
後に残ったのは凝血石——だけではなく骨。
まるで普通の人や動物と同じような白い骨がその場に残っていた。
――◆ 後書き ◆――
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