第21話【第二の地下祭壇】
平らな地面の前に立ち、青く光る大楯を地面と平行に沈めていき、埋まっているものを回収していく。
タブレットに表示されるものは石、石、石、水、石。
「ここで四ヶ所目か……」
首を回したついでに空を見上げても、目に入るのはアイヒの枝ばかりだ。
見飽きた光景についため息がもれる。
僕はポールがバーベン領の地図に書き込んでくれていた”遺跡らしき場所”を一人で巡っていた。
一人というのは他の皆が忙しいからで、けっしてハブられているからではない。
リュオネは熱は下がったけれどまだ療養中で、病床で仕事をしている。
衛士隊はそのお世話だ。
クローリスはバーベンに続き、ロター子爵からも地図作成とインフラ整備の仕事を受注していて、現在はグランベイ男爵と交渉中だ。
クローリスって実は有能なのか……?
コリー達は街道と砦づくりをすすめている。
ハンナとポールが率いる測量部隊は早速ロター領で活動を開始している。
ジャンヌ、オットー、バスコ、エヴァの部隊を再編して作った冒険者パーティ(ホウライ一番隊〜四十番隊)は順調にニコラウス領のマンティコアを倒して銀級十位にあがっている。
ただ、彼らはニコラウス領ではなく、コズウェイ領で活動するように指示している。
これも敗走時を考えてのことだ。
内陸よりは沿岸の状況を把握しておきたい。
竜騎兵隊にも埋め切っていない空図を仕上げてもらっている。
クランに入団を希望してきた一般の冒険者も戦時には重要な戦力になる。
バーベン領の詳細地図をもつゾフィーさん達文官がギルドの仕事を割り振る事で、依頼を効率的にこなし、少しずつ位階をあげている。
まあ、そういうわけで、僕と一緒に来てくれる団員が今いないのだ。
哀愁を感じるのはアイヒに混じるオークの枯葉のせいだろうか。
それにしてもだよポール。
確かに少しでも怪しければ記入してくれと言ったかも知れない。
でも少しにも限度ってものがないか?
あといくつあるんだよ。
今度ポールに指示する時は注意しよう、と心に決めながら五ヶ所目の候補地にやってきた。
開けた草地の場所なのに、何かに見られているような、嫌な感じの場所だ。
気配を探っても何もいないので、きのせいではあるんだろう。
「……当たったら血殻がたくさん、当たったら血殻がたくさん……」
現金な方法でやる気を出しながら大楯をつかって地中をトロールしていく。
「石、石、石、んっ……」
時間当たりに石が入る数が減った。
これは基石層に当たったかよっぽど巨大な岩に当たった時に起きる現象だ。
「じゃあ、掘ってみるか」
三ヶ所目の時も掘って空振りしたのであまり期待はせずに土を収納する。
すると、これまでの苦労が嘘のようにあっさりと人工の石室が現れた。
ちょっと固まってしまう。
出る時はあっけないものだな。
四角い石室の一画には、まえにみた地下祭壇とおなじく四ジィ四方の扉がある。
ただ、前とは何か、雰囲気が違う。
「いや、雰囲気とかいう話じゃないな、これ」
降りてみて、地上からでは見えなかったデザインをながめて思った。
人を喰らう醜悪な小人、巨大な豚、筋骨隆々とした鬼。
木の隙間からのぞく女、からまる触手から血をしたたらせるなにか。
圧迫するような骨と血管でできた巨人、薄い膜から抜け出ようとする骸骨の群れ。
右の扉には醜悪に強調された魔獣が
かろうじて平面は保っているけれど、扉にあるレリーフは明らかに異質、異形だ。
この石室は、本当にアルバ人がつくったんだろうか?
疑問を解くには中に入る他はない。
何が起きても良いように、今度は神像の右眼を離さないようにしっかり持ちながら僕は扉を開けるための棚の奥を見た。
「やっぱりつくったのはアルバ人じゃないな」
十字街の北の地下祭壇と同じように、扉には掘り込み棚があり、その奥には文字が見えた。
”精霊の友である証をみせよ”
僕はリュオネのように古代魔法文字が読めない。
だから魔法文字の控えをリュオネからもらってきた。
でもそんなものはいらなかった。
なぜなら棚の奥の文字は現代の文字とほぼ変わらなかったからだ。
「これは、めんどくさい事になったな……」
精霊の友、というのはエルフが自分達自身を呼ぶときに使う言葉だ。
つまり、この遺跡はエルフ関連の遺跡ということになる。
これから戦う相手の遺跡を見過ごす、訳にはいかないよな。
「それにしても証、か……」
神像の右眼は当然のように反応しなかった。
エルフが大事にしているもの……
「精霊、か。これならいけるか?」
しばらく出していなかった、精霊のノームを宿した刀。
精霊の炎刃ならどうだ?
『”精霊の炎刃”を確認しました。扉を開きます』
やはりそうか。
僕は
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