第27話【新装備試験ー空中戦闘用】


「よし、討伐完了、ですね!」


 ショートカットにした暗青色の髪をゆらし、オーガーの泥が消えた場所からヒョウ獣人のレイが凝血石を拾いあげると、彼女のパーティのメンバーが歓声を上げる。


「うん、これなら銅級中位に推薦できるな」


「そうだな」


 隣のデニスとうなずき合う。


 元クラン【伏姫】のパーティ【ライ】は鉄級二位の冒険者だったので、銅級中位に上げて良いのか不安だった。

 けれど、刀術と槍術のスキルを持っていたレイとクマ獣人のトモがあっという間に銃剣になれたおかげでパーティの戦力が強化されたのだ。


「大型の魔獣に対しても刀術が使えるのは大きいです。ヨハンナの攻撃魔法が着弾する前に離脱できますし、攪乱かくらんしているニルのフォローもトモと二人で出来るようになりました」


 本人達も手応えを感じているみたいでなによりだ。



 第三十字街に戻る途中、湿原の側を歩いていると、空から破裂音がした。


「な、なに!?」


「あ、アルバトロスの竜が追われているぞ!」


 【ライ】のメンバーが見る先にはビーコと、それを追う翼を持つ魔物、ハーピィの群れがあった。

 数は十匹程度、ハーピィは目標に急降下して足の鋭いかぎ爪を敵に食い込ませる攻撃をする。

 ビーコはハーピィと絶妙な距離を保ちつつ上下左右に逃げている。


「クランリーダー、アルバトロスはなぜ逃げ回っているのですか?」


 レイの質問はもっともだ。

 真竜がハーピィ程度に追われるなんて状況は普通なら起こらない。


「対空戦闘の訓練だよ。その銃剣は徒歩用だけど、今アルバトロスのショーンが持っているのは空を飛ぶ敵を倒すための武器なんだ」


「空を飛ぶ敵なんて、真竜なら大抵の敵は倒せるのではないですか?」


 さらに怪訝けげんな表情を浮かべるレイに対して、書庫から三ジィを超える槍のように長い銃を取り出した。


「魔物や魔獣ならね。でも複数の飛竜種や同格以上の真竜だったら?」


 言ったとたん、レイを含めた【ライ】のメンバーの顔が青ざめた。


「先の異界門事変では数体の真竜が投入されたらしい。異界の飛行魔獣と相打ちになったという話もあるけど、まだ王国の竜使いが真竜に乗ってくる可能性もある。それに王国はワイバーンに乗る竜騎士部隊ももっているんだ。竜だけじゃなく乗る人間も攻撃できれば戦闘では優位に立てる」


 現在ブラディアにいる竜使いのほとんどは王軍か六爵領軍に所属している。

 戦争に突入すれば彼らは友軍になるけれど、彼らの中に真竜はいない。

 これから到着する皇国軍小隊がティランジアで傭兵を募集する予定だけど、優先的に竜使いをスカウトしてもらうつもりだ。


「ザート、解説もいいが、つくった魔弾の効果もちゃんとみてくれ」


 デニスに怒られたのであわてて上を見る。

 ビーコを追いかけているハーピィは半分に減っていた。

 にも関わらずハーピィは攻撃の手をゆるめない。

 ハーピィはテリトリー意識が強いからだろうか。


「破裂のタイミングがあってないな」


「空中でつっこんでくる敵との距離を把握するのはやはり難しいんじゃないか?」


 クローリスが提案してリオンが魔法文字を組んだ、時間をおいて魔法が発動する魔弾の成果はかんばしくないようだ。


「となると戦法でどうにかするか……」


 なにかヒントがないか、クローリスから話をきこう。


「ザートさん! ハーピィが一体むかってきます」


 レイの叫び声で上を向くとハーピィが僕めがけて爪を広げている所だった。


「グガッ!」


 書庫からとっさに出した石壁にぶつかったハーピィが泥に変わる。


「……やはり急降下されるのに距離を測るというのは難しいな。面で攻めるというのもありなんじゃないか?」


「そうだな。リオンに相談してみる」


 ハーピィをなんとか全滅させて第三十字街にもどるビーコを確認して再び帰途につく。


「ザートさんの戦闘をはじめてみましたけど、とんでもないですね……」


(あぶな、あぶなぁー!)


 レイ達が尊敬のまなざしをむけてくるのでなんでもないように振る舞うけれど、内心は全然、心臓がバクバクいっている。

 クランリーダーらしく振る舞うのも大変だよ本当!




    ――◆ 後書き ◆――


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