第50話【竜になる種】
リオンが三刃の鞘を手にいれるという目的は、途中アクシデントはあったものの達成できた。
一件をのぞき、大きな損害もなかったので、グランベイにもどる船旅はとてもおだやかなものだ。
「では、リヴァイアサン撃退におけるアルバトロス方の報酬は百五十万ディナ、という事でよろしいですかな」
「ああ、文句はねぇよ」
襲撃を切り抜けた直後の興奮も収まり、現在戦艦の会議室でムツ大使、ショーン、僕の三者で、今回得た金品の分配について話し合っている。
「プラントハンター方については凝血石等、リヴァイアサンより得たもの一切、それに海底より引き上げた武器防具類、加えて二百万ディナ、という事でよろしいのでしょうか」
「はい。討伐した竜に加えて、新たにつくるクランのための武器類と、海底からの引き上げ料として今提示された額をいただきたいと思います」
リヴァイアサンから得た主なものは
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・凝血石(異界産)×1
・凝血石(最高位)×1
・凝血石(高位)×24
・凝血石(中位)×50
・血殻(砂状):大量
・竜の種×1
・ウトスロトの鍵
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こういったものになる。
どうやらリヴァイアサンが多くの魔獣を取り込んでいたから大量の凝血石が入っていたらしい。
そのほかに二、三個、扱いを考えなくちゃいけないものがあるけれど、今は保留にしている。
「承知いたしました。最後に、我ら皇国軍については海底より引き上げた武器防具をのぞいた換価できるもの一切……ザート様、やはりこれは我々がもらいすぎかと。旗艦にあったアルドヴィン王への献上品だけでも二千万ディナは越えるものがあるのです。ザート様のスキルがなければ引き上げることはかなわなかったのですよ?」
「いえ、引き上げはついででしたので、気になさらないで下さい。それより同盟の維持のためにこれから多額の費用が必要になるでしょう。同盟を維持していただく方が結果的にクランの負担軽減になるのです。どうぞお納めください」
このやりとり何度目だよ!
本当はリオンにもらって欲しいけど受け取ってくれないからリーダー権限で受け取ってよ! という無言の圧を感じる。
だが引かない。引けば後でリオンが不機嫌になるのは目に見えているからだ。
「わかりました。では金品の分配の話は以上といたします。皆様お疲れ様でございました。軽食を用意しましょう。甲板にて他の皆様とお待ちください」
さて、懸念の一つが解決したので、後一つだな。
「ショーン、船尾楼に行く前にちょっといい?」
甲板から階段を上ろうとするショーンを呼び止めて、近くの船縁にさそう。
丁度帆が日差しをさえぎっている場所で足を止め、話を切り出した。
「ビーコって、やっぱりもう飛べないのか?」
「……ああ、多分な。事変の時に痛めた左の翼をかばって飛んでいたが、今回の件で右も痛めちまったらしい。滑空くらいは出来るだろうが、冒険者の仕事はできないな」
「そうか……」
船縁に背中を預けてつぶやく。
今回の件で唯一の被害というのがビーコだった。
無理して飛んでもらったので翼を痛めてしまったのだ。
「ビーコをほっとくわけにもいかねーし、アルバトロスはちょっと早めの引退だな。グランベイ領で一番高い丘のふもとにランスという村があってな。ビーコも高い所がいいだろうし、そこに落ち着こうって話になってる」
海に向かって今後の予定を話すショーンの口調はさっぱりしている。
でも本当はもっと先に行きたいはずなんだ。
そのために、できることがプラントハンターにはある。
僕はタブレットに浮かぶ文字をみつめた。
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【竜の種】
・取り込んだものは竜になる。
・共食いにより複数の種を取り込んだ竜は複数の属性を持つように身体が変化する。
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「ショーン、きいて欲しい話があるんだ——」
――◆ ◇ ◆――
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