第46話【砲撃再開から反撃へ】
リオンが船中を駆け巡り、翠色の光をまとう牙狩りの剣を鎧袖一触に振り抜くたびに血殻の砂が舞い散った。
マガエシの力は白い魔獣にとって天敵だったらしい。
リヴァイアサンを警戒している僕をふくめ、目の前の敵をリオンに倒された味方はリオンの動きを目で追っていく。
マガエシの力を魔獣にたたき込んでいくリオンへの賞賛が徐々に船に満ちていった。
——ドクリ。
安心した直後、なんの前触れもなく、ひどいめまいに襲われた。
僕の身体とつながるバックラーの魔導回路になにか異物が混じった。
流れる水に砂が混じったかのような違和感が断続的に感じられる。
なんだ、これは。身体の内側でなにかが脈打つ。
拍動が、何かが現れる先触れであることを示すように次第に間隔は短くなっていく。
「どうしたザート! おい!」
駆け寄ってくるショーンに見下ろされた事で、いつのまにか自分が壁際で倒れ込んでいる事がわかった。
痛みは強くなる一方だ。その前に原因を見つけないと。
「書庫に、なにか異常があるはずだ……」
震える右手でタブレットを開くと、右下に明滅する一文があった。
==
コトガネの骸を排出しますか(Y/N)
※排出しない場合、あらゆる悪影響が生ずる可能性があります
==
コトガネって、三刃の鞘と一緒に収納した牙狩りか。
死体を収納するのは初めてじゃないけど、この人には何かあるのか?
どっちにしても、警告されている時点で排出一択だ。選択の余地なんてないだろ。
痛みのなかで毒づきながら排出を選択した。
「うわっ、なんだこれ!」
ショーンの悲鳴とともに、皇国の鎧をきた骸骨がイカリに身を結ばれた姿で現れた。
もしかして沈没船の骸骨みたいに起き上がりでもするのかと警戒したけど、動き出す気配はない。
「ザート、大丈夫!?」
もう敵を全部かたづけたのか、リオンが船尾楼に戻ってきた。
「大丈夫、そいつを取り出したら平気になったよ」
ショーンに手を引いて起こしてもらった。
もう痛みは最初から無かったかのように引いている。
船尾楼にいた他のメンバーも駆けつけてイカリと骸骨に目が釘付けになっていた。
「その骸骨は話にあった二人目の牙狩りだ。鞘のついでに回収してきた。マジックボックスのスキルでね」
ショーンの目の前でこいつを吐き出した以上、ごまかすのは無理だ。
僕はマジックボックスが使えることを正直に話した。
こうでも言わないとこの場は収まらないだろう。
「そうか……理屈は分からねぇが、こいつを吐き出して元に戻ったなら大丈夫か」
「うん、ただ、出す必要があったからには何かは起こるはずだ。それが何か見極めないと……」
「ザート……!」
デニスが僕の肩越しに何かを見ていたと分かった瞬間、僕は船の中ほどまで跳び、ふたたび全力で書庫の大楯を展開した。
リヴァイアサンは蛇のようにもたげた鎌首を海面にたたきつけた。
刹那に一筆の直線が海面を走る。
先ほどと全く同じく、大楯がひかり、轟音が空気を震わせた。
さっきより魔砂の消費がすくない。
相手を見ると、次の予備動作に入っている。
ほどなく、再び大楯の発光と轟音が響いた。
「ザート! 後どれくらい耐えられる?」
下を見るとリオンとオルミナさんがこちらを見上げていた。
なるほど、そういうことか。
「ビーコと敵に突っ込んでリオンを届けるくらいはできる」
戦艦のみんなを守りながら敵を叩くにはそれしかないと僕も思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます