第16話【弾丸と銃の複製】
書庫内の弾丸についてはあっさり取り出すことができた。
活躍したのはクローリスだ。
「まさかこの世界でダブルタップとかすることになるとは思わなかったです」
クローリスの世界では一人一台、タブレットを持っていたらしい。
収納機能などはないけれど、主に情報をやりとりするのに使っていたという。
クローリスが書庫のタブレットを操作した結果、弾丸が
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名称:火属性弾丸(ファイア)
状態:飛翔
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このように表示され、『状態:飛翔』を分離できるようになった。
分離のほかにもいくつか出来るようになったことがあるので、順次つかっていこうと思う。
「弾丸表面の紋様の解読はリオンに頼むよ」
「うん、まかせて!」
クローリスの見つけた操作『状態分離』をした弾丸を書庫からだしてテーブルの上にのせると、リオンが楽しそうにうなずいた。
「じゃあ私もリオンの手伝いをしますねー」
「いや、魔道具修理が先だろう? 手伝いはそれが終わってからな」
歯ぎしりするクローリスにため息まじりに釘をさし、工房の書棚から魔法陣用例集を取り出して広げる。
オリジナル法具と思われるサイモンの銃と僧兵から得た六丁の銃に入っていた魔法陣と比較するためだ。
プレートは書庫に入れて鑑定もして、分かったことをノートにまとめていく。
結果、オリジナル法具の銃は、やはり魔法陣も古代のものだった。
弾丸を飛ばす理屈も今の僕にはまったく想像出来ず、未知の部品もあった。
もしかしたらこれが魔力制御転換装置、というものかも知れない。
あとでパーティ全員で考えようと思う。
そして法具の銃にくらべれば複製品の方はわかりやすかった。
プレートの魔法陣も用例集の亜種程度なので、研究者の意図と銃の中でどんな現象を起こしていたのか、あるていどは理解できた。
例えば一番単純なもので言えば、土属性魔法陣と火属性魔法陣の組み合わせだ。
ある種の土は加熱するとはじける事が知られている。
狭い筒の中で土を生み出し、加熱して爆発させれば弾丸を押しだす事は可能だろう。
他にも風属性魔法陣をベースにしたものや、同じ現象を連続させるもの、水蒸気を利用したもの、などがあった。
けれど、ロター港で体験した限り、法具銃の威力が段違いに強かった。
研究者はなんとかオリジナルに近づけようと試行錯誤していたのかもしれない。
「当分は背伸びしないで、弾丸が完成したら試射して、一番安定している立体魔法陣を再コピーするのが妥当か」
研究者が今までできなかった事をいきなりやろうとしてもしょうがない。
我ながら普通の結論に落ち着いたな。
振りかえると二人が熱心に作業に打ち込んでいた。
よし、もうすぐ昼だし、リクエストを聞いて何か軽食を買ってきてあげようかな。
――◆ 後書き ◆――
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