第16話【船主からの護衛依頼】
――◆◇◆――
袋が一杯になったので港へ帰る途中、チャドからシルトについての話をきいた。
シルトが同期より早く位階を上げたのは商船の護衛を主な収入にしていたかららしい。
数回の護衛で荷運びよりずっと高い報酬を得て装備をととのえながら、湿原や河口の討伐依頼を次々とこなしていたという。
対人のけんかも強く、妬みから絡まれても返り討ちにしていたそうだ。
「あいつそんな事をしていたのか。トラブル続きじゃないか」
ギルドがいわなかっただけで、シルトは護衛の実績を重ねていたらしい。
ならその延長でトラブルにあって行方不明になった、というなら自業自得じゃないか。
なんだか心配した自分がバカみたいに思えてきた。
「それで、チャドは何をみたんだ?」
「ああ、シルトと船主がもめてたんだ。『自分を急いでシドに連れていってくれ』と何度もたのみこんでた。最後にはシルトがすごんで船主は首を縦に振ったよ」
シルトはなんでそこまでして、急いでシドに行きたがってたんだろう?
「シルトが悪い奴じゃないってのは俺も分かってる。たぶん奴の『事情』ってのがからんでるんじゃないか? だからそう怖い顔するなよ」
チャドが首をすくめてみせる。
顔がこわばっていたか。僕も思いきり深呼吸をして気持ちを切りかえた。
「ごめん、大丈夫だ。じゃあシルトは今シドにいるって事か」
「多分な。この間難破した船団は第四港まで回って行く便だったし、たぶん奴は生きてシドに着いてるだろう」
チャドの言葉にあらためてため息がでたところで丁度ギルドについた。
確か搬入口からゴミ捨て場に入れって言われてたよな。
「うぉ!」
先を進んでいたチャドが急に止まったのでぶつかってしまった。
文句を言おうとチャドを見ると、なにやら入り口の向こうを指さしている。
こっそりとのぞいてみると、ゴミ捨て場の前に不似合いな、ジュストを着てステッキをついている男が部下らしき男達を従え、男性のギルド職員と話していた。
目の前では先を歩いていた冒険者と部下が袋からブロックを取り出して見せている。
「あの金持ちだよ。シルトがかけあってた船主は」
改めて金持ちを見てみた。
ジュストを綺麗に着こなし、大商人の船主らしく顔つきも丸顔だが抜け目なさがある。
なかなかにあくの強そうな船主にかけあったもんだ。
ただわからないのはなぜ彼が直々に来て、しかもステッキを神経質そうにカツカツならしているか、ということだ。
状況からして、今僕たちが担いでいる袋の中身に用があるんだとわかる。あんなに気を遣うほど価値のあるものだったのか。
書庫入れた大量のブロックの事を考える。
今更持ってますとは言えないな。落ちていたものを拾っても罪にはならないけど、大量にどうやって拾って、どこに持っていたのか。答えなくちゃいけない。
自動でものを拾える高性能のマジックボックスを使いました、なんて言おうものなら、商人だったらいつまででも食らいついてくるだろう。面倒なものに関わったな。
リオンに目線を送る。
うなずいてくれたけどかるくジト目だ。
今のところ困る事はなさそうだけど、後で謝っておこう。
「次、袋の中身をみせなさい」
前の冒険者が去った後、職員にうながされて僕ら四人は袋の中身を広げた。
船主の部下達が中身を改めてうなずく。
よし、ブロックだと確認が終わったので後は受付によって帰るだけだな。
「彼らがそうです」
帰ろうとしたやさき、ギルド職員が僕とリオンを見て船主に告げた。
なんだ? ギルド職員に不審の目を向けると同時に船主から声をかけられた。
「君らが今このギルドにいる銅級パーティか。我々はこれからシドまでこの荷物を運ばなければならない。ついては護衛を頼む」
そういうのは受付で言って欲しい、と言ってもこの手の人は聞き入れないんだろうな。
うんざりしながら僕はとなりで固まっているチャド達を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます