第12話【買い出し結果確認 in ブラディア】




 ヌマル亭に着いた後、食堂でホウライ酒とエールを樽で買った。

 ハイネと女将さんが対応してくれたので明日一番の馬車で出る事を伝えると、残念がってくれた。たった二泊でも、ここにお世話になって良かった。


「さて、それでは今日の買い出しの結果を見てみようか」

 ロター領を野営しながら行く予定だったので、結果的に不要なものも買ってしまった。でも書庫に入れておけば悪くならないから必要になった時にたべるようにしよう。

「うん、じゃあバックパックの中身を床に広げていくよ?」


「いや、ここに投げ込んでくれればいいよ」


 そういってリオンの目の前の床に、大きさがドアくらいの大楯を広げた。


「ああ、そっか。じゃあ入れるね」


 黒パン、白パン、ポーション、リナル……。細かい物は全部リオンにお願いしていたんだったか。


「うわぁ、どんどん吸い込まれていくねぇ」


 そういって最初は目を輝かせていたリオンだったけど、途中で眉間にしわが寄ってきた。


「これじゃいつまでたっても終わらないよ! それっ!」


 そういってバックパックを逆さにしてしまった。リオンさん豪快ー。


「はい、おしまい」


 リオンは満足げな顔をしてバックパックを床に置いた。

 

「よし、後はこれを並び替えすれば、バックパックに入れ直さなくてもよくなる」



〖収納品〗


【武器】

名剣×2

刀匠のナイフ

朽ちた槍 ×5

朽ちた鎧 ×16

朽ちた剣 ×14



【魔法】

ファイア

ウォーターショット

ブリーズ

ストーンショット

……


【貨幣】

15万ディナ


【凝血石】

凝血石(低位)×125

凝血石(中位)×81

凝血石(魔砂)×30094


……

……


「綺麗にカテゴリごとに並んでる。光る板も、まるで幻想物語に出てくるタブレットだね」


 画面を見たリオンはしきりに感心している。

 うん、確かにファンタジー小説に出てくるな。

 今後はタブレットと読んだ方がいいかな。

 たしか、アライアというこの世すべての知識に接続する道具だったっけ。

 鑑定のスキルってそういえば位階がないんだったな……、いや、今は置いておこう。


「確かに。それで、このままじゃ見づらいから」


 そういって、指で【武器】の文字に触れる。


「あ、中身が消えた」


「実際は見えなくなるだけなんだよ。本に例えるなら見出しがみえるだけになるんだ」


 こういった機能は、毎晩コツコツと下位魔法を書庫に注ぎ込む作業の合間に見つけている。

 知れば知るほど便利な法具だと思う。


「じゃあ、確かめながらカテゴリを閉じていくからね」


〘収納品〙


【武器】

【魔法】

【貨幣】

【凝血石】

【装備品】

純ミスリルの指輪

ジロールのペンダント

地母神のカメオ

マチルダのロケット

指輪(付与:MP増加)

指輪(付与:SP増加)

指輪(付与:力)

指輪(付与:なし)


【スクロール(使い切り)】

浄化



【魔道具】

ルチル製の薬研(鉱物破砕用魔道具)


【素材】

蔵玉層の石塊(三十二ディルム)

練重層の石塊(五十三ディルム)

光帯層の石塊(二十五ディルム)

石木層の石塊(八十三ディルム)

流積層の石塊(六十八ディルム)

蔵玉層の石塊(四十一ディルム)

基石の石塊(九十四ディルム)

城壁のがれき(五万ディルム)


【特殊魔道具】

蛇眼の祭壇(長城壁築城用:小破。使用可能)


【衣類等(リオン)】

シャツ

上質なシャツ

乗馬ズボン

部屋着

下着

レースの……




「なーーー!! ちょっ、みないで!」


 リオンが僕の左腕に飛び込んで両足の間に挟んでしまった。

 必然的に見上げる形でリオンの顔を見る事になったけど、これ以上ないくらい真っ赤になっていて、しかもおこっている。当然ですよね。

 でもそれより、ちょっと、その、左手が……困った。


「って、なにしてるの?」


 僕がどことはいえないけど柔らかい感触からどう逃れようか考えている間に、リオンはうーうーとうなりながら光る板、タブレットをいじっていた。


「何って、見えないようにしてるんだよ! もー、わざとじゃないよね!?」


 理不尽ないいがかりは即座に否定させてもらった。

 でもリオンがバックパックの中身をぶちまけたせい、とは怖くて言えない。

 そして僕が指定して取り出せば……とも言えない。

 僕はさっきの文字は見てない、という設定だから。


「あれ?」


「どうしたんだ?」


「ちょっとこれみて」


 ようやく拘束から解かれた左腕を持ち上げて見ると、リオンがまた真っ赤な顔でにらみつけている。

 理由について察しはつくけど、今はスルーさせてもらおう。



【素材】

蔵玉層の石塊(三十二ディルム)

練重層の石塊(五十三ディルム)

光帯層の石塊(二十五ディルム)

石木層の石塊(八十三ディルム)

流積層の石塊(六十八ディルム)

蔵玉層の石塊(四十一ディルム)


城壁のがれき(五万ディルム+九十四ルム)



「【素材】の『基石の石塊』が『がれき』に吸収された?」


 数字の上では九十四ルム分、がれきが増えている。


「こう、スイッと指が滑ったと思ったら文字が消えたんだよ」


 重ねたら消えたってことか?


「じゃあもしかして……」



 【武器】のカテゴリを再び開いて、インゴットにするつもりだった『朽ちた槍』に指を当て、『朽ちた剣』に向かって滑らせる。


【武器】

名剣×2

刀匠のナイフ

鉄塊 

朽ちた鎧 ×16


 新たに表示された『鉄塊』を外に出す。

 ゴトリ、とリオンの空のバックパックの上に荒々しい鉄の塊が現れた。


「また、新しい機能をみつけちゃったな」


 この機能ってもしかして製薬とかする錬金術師のスキルなんじゃないか?

 どういうことだ? 毎晩色々やっているけど、今までこんな事起きなかった……


「文字を重ねると新しいものが生まれる、か。ちょっとこれは色々検証してみるよ。今は残りの荷物を確認しようか」


 今は考え込んでも時間が過ぎるだけだ。


【衣類等(リオン)】

【衣類等(ザート)】


(これは、僕の下着もみたんだよね……まあいいけど)



【食材】

ジオード豆

グースシェード

シガール茸

ウルソ茸

レタピコ


【調味料】

リンガベラ

フェルシード

ファンマ(鎮痛用)

ホーリーワーツ(鎮静用)

オーレン(解毒用)

メティ(茶)


【主食】

黒パン

白パン

ポルト

ミレットの干し飯


【食料】

レイヨウ鹿のロースト

モスマトンの煮込み

縞イノシシのステーキ

帽子ウサギのシチュー


【果物】

アンラの薄干し

オリジア

リナル

ソミア

ミュスカ

アンラ

タオリ


【飲み物】

エール

ホウライ酒



 無心に指を動かし、カテゴリだけみえるようにしていく。


【食材】

【調味料】

【主食】

【食料】

【果物】

【飲み物】


【本・道具】

実践・魔方陣作成手順書

術用筆記具

羊皮紙

ノート

色つき筆記具


【道具】

毛布

炊事用品

水筒


【消耗品】

ポーション

メンタルポーション

キュアポーション


「魔方陣の本?」


 リオンに魔道具づくりの事を説明すると喜んでくれた。

 やっぱり浄化魔法みたいな希少魔法は魔道具で再現してしまった方が効率がいい。



【本・道具】

【道具】

【消耗品】



【思い出の植物】

アストマの苗(グランドル)



「「あ……」」


 最後のカテゴリで指が止まった。


「【思い出の植物】って……ふふ。このカテゴリ名、ザートが付けたんだよね?」


 リオンがいたずらをみつけた子供をみるような目でのぞいてきた。


「……そうですけど? 思い出は、思い出ですよ」


 なんか、当たり前の事なのに、そういう顔をされるとまるで恥ずかしい事をしたみたいに思えてくる。


「書庫の中身……時々、見せてくれるとうれしいな」


 リオンはそう言って嬉しそうに笑った。間近でそんな顔されると、その、困る。


「そうだね、時々なら大丈夫かな」


 毎日そんな顔されるとこっちの心臓がもたないけど時々なら、こちらこそお願いします。








    ――◆後書き◆――


いつもお読みいただいている方、新しく目を通して下さっている方、ありがとうございます!


今回はアイテム確認かと見せかけて、書庫の新機能解放と見せかけて、甘く仕上げました。ラブコメ作家さんみたいな筆力がほしいと思う所です。




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今後もどうぞよろしくお願いします!






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