第66話【第三回、発掘調査結果 in 古城】


「第三回、発掘調査湖水地方&古城、結果発表ー」


「わーい、なにそれー」


 パチパチパチパチー


 ここはコロウ亭の僕の部屋だ。

 意味が分からないまま乗ってくれたリオンに説明する。


「僕が書庫を使って土の中の魔砂をこし取っているのは伝えただろ? あれをやると魔砂のほかにも色々なものが勝手に回収されるんだよ。リオンに渡した精霊の炎刃も元はぐうぜん発掘したものだし」


「へーつまり宝探しだね! ずるいよザートそんな楽しい事してたなんて」


 隣で床に座ったリオンがむくれる。


「まあまだ三回目だし。今回は古城のがれきを回収したから量はたくさんあるよ」


「でもあんながれきここに出せないよ?」


「鑑定機の画面みたいな光の板に中身が書き出されるんだ。実際見ていこう」


……

凝血石(低位)×125

凝血石(中位)×108

凝血石(魔砂)×30094

……


 やっぱり中位の水棲魔獣がおいしかったな。普通なら相当苦労するのに、とどめを刺して回るだけなんて楽すぎた。

 マーサさん達はまだ帰ってきてないけど、きっと向こうで大笑いしているだろうな。


 低位だけで十二万と五千ディナ。

 中位で四十三万と二千ディナ。

 後は書庫稼働用の魔砂がたくさんだ。枯れかけとはいえ、魔素だまりをさらったからな。


「売れる凝血石だけで言えば、合計五十五万と七千ディナ。金貨と銀貨が五枚ずつ、それと小銀貨七枚になるね」


「本当に五十万の大台超えたねぇ」


 リオンが光る板の数字を見てため息をついた。


「依頼の成功報酬も二十万ディナもらったから、相当余裕ができたな。これでリオン用の粗製ロングソードが買える」


 精霊の炎刃もあるし、二、三本買っておけばリオンの武器は十分だろう。


「ところでなんでギルドですぐ売らなかったの?」


 あ、そういえば説明してなかったな。


「僕らはこの後リオンの武器を買いに港に行くだろ? あっちのギルドはティラアンジア諸国に凝血石を輸出しているから相場が高いんだ」


「ギルドの支部で買取値段が違うってこと?」


「いや、中小規模の個人商人が高く買ってくれるんだ」


 ブートキャンプの頃にシルトが言ってた事だ。

 海っていったことないんだよな。王都は王国の中央にあったし、実家も山に近かったし。


……

朽ちた名槍 ×1

朽ちた名剣 ×3

朽ちた刀匠のナイフ×1

……


「このあたりは古城から帰る途中でリオンに仕分けしてもらった物だね」


 でも剣を一本取りだして見てみるけど、なぜ名剣なのかがわからない……


「この錆だらけの剣ってどうやったらつかえるの?」


「錆といっても黒さびだから、鍛冶屋で研いでもらえば使えるようになるよ」


 リオンが受け取った錆剣の刃を確かめながら答える。

 じゃあ後で研いでもらって、使えそうなら書庫に入れておこう。次だ。


……

純ミスリルの指輪

ジロールのペンダント

地母神のカメオ

マチルダのロケット

指輪(付与:MP増加)

指輪(付与:SP増加)

指輪(付与:力)

指輪(付与:なし)

……


 などなど……。

 小さい物だから一気にボロ袋の上に出してしまった。

 価値もピンからキリまである。


「使える付与アクセサリーはもらうとして、それ以外はどうしようか」


「うーん、下手に売りさばけないよね。古城由来ってばれたらおおごとだ」


「じゃあギルドにまかせちゃおうか」


 その方向で、ということで再び書庫にしまった。


……

朽ちた槍 ×5

朽ちた鎧 ×16

朽ちた剣 ×14

……


 この辺りはインゴットにするけど、資金に余裕ができたから、暇な時に出せばいいか。鎧はすてよう。次。


……

ルチル製の薬研(鉱物破砕用魔道具)×1

……


「これは後で使うから売らないでおこう」


「え? 自分で鉱物を壊す機会なんて……ザートちょっとこれ!」


……

蔵玉層の石塊(三十二ルム)

練重層の石塊(五十三ルム)

光帯層の石塊(二十五ルム)

石木層の石塊(八十三ルム)

流積層の石塊(六十八ルム)

蔵玉層の石塊(四十一ルム)

基石の石塊(九十四ルム)

……


 リオンが薬研の下に表示されている石塊の表示に目を見開いている。

 なるほど、ソートしたときに道具と材料は並ぶんだなー。優秀だな書庫ー。


「ザート、これ盗掘……」


「いや、ね? 採取制限があるって知る前に書庫の中にいれちゃってさ、その後に色々あってね……ごめんなさい」


 反省の心が伝わったのか、リオンはため息をついて許してくれた。




「さて、一番面倒くさいのがこれなんだよ」


…… 

蛇眼の祭壇(長城壁築城用:小破。使用可能) ×2

……


 光の板に表示されるものものしい名前。括弧の中にある用途のスケール感。非常に扱いに困る。


「辺境伯しかもってないだろこれ。絶対外に出せない」


「だね……ちょっと保留にしよう」



……

城壁のがれき(5万ディルム)

……


「これで最後か。ザート、改めて聞くけど、書庫ってどれくらい入るの?」


「わからない。海に行ったら一度試してみようか」


 堤防の修繕でかなり使ってもこの数字だ。本当にどれだけ入るのか。

 そんなことを考えて床の上のボロ袋ごと書庫にしまった。



「はあー。驚きすぎてちょっと疲れた」


 リオンがうなりながら長い手足を伸ばす。

 食事にしようという事になり二人で部屋を出た。


「そうだ。今日はコロウ亭名物ポーション蒸し風呂に入れるんだった」


 風呂についてリオンに説明しながら階段を下りた。

 リオンもあの気持ち良さにぐにゃぐにゃになることだろう。






   ――◆ 後書き ◆――


いつもお読みいただいている方、新しく目を通して下さっている方、ありがとうございます。


今回は一話まるごと「調査結果」に当てました。

やっぱりこういうものは相方がいるとたのしいんじゃないかなと想います。



本作を気に入っていただけたら、是非「評価★やフォロー」して応援してください。

作者のモチベーションがあがります。ぜひよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る