第63話【調査報告2:古城封鎖】


「倒したって、古城の主を?」


 まだ動きがぎこちないリズさんが念を押してくる。


「ええ、リオンと二人で、倒しました」


「その……強い魔物とか魔獣だからといって魔境のボスとは限らないのよ?」


 かぶりを振りながらリズさんが指摘する。

 確かに、必ず洞窟の最奥にボスがいる階層型のダンジョンと違って、魔境の場合はボスがわかりにくい。


「どの道に入っても一箇所にしか向かえない魔境は”閉じられた魔境”ですよね? 僕らは沼の巨人の大群から古城の方に逃げていたら、いつの間にか古城にしか向かえなくなっていたんです」


 精霊の炎刃やジョアンの書庫をつかった戦闘など、話せない所はとばして、逃げたルートから脱出ルートまで地図を使って説明していった。


「その”ボス”を倒したから脱出できた、と。凝血石は、たしかに大きいわね」


 リズさんが取ってきた凝血石を持ちうなり黙り込んでしまった。確かに信じがたいことなんだろう。古城が魔素だまりどころか魔境になっているなんて。

 一方でマーサさんはいつの間にか鎧を着ていた。ララさんも冒険者を招集しにいったのか、いなくなっている。


「リズ、さっき別のパーティから沼の巨人の群れを確認したと報告があった。ボスがいようがいまいが、あたしは古城封鎖に出発しなきゃならない。ザートの言うことが正しいかどうかは子爵の奴にきいといてくれ」


 戦闘用の額当てを巻いたマーサさんが赤い斧を担ぐ。


「まあ、確かにジョージしか知らされていないこともあるし、きいてみるわ」


 ”子爵の奴に”って、すごい呼び方するねマーサさん。ここの力関係ってどうなってるんだ?


「マーサさん、下の調査隊準備できました。リズさん、鑑定機もってきましたよ」


 扉を開けてララさんが鑑定機を持ってきた。

 鑑定機は人間のスキルやSP、アイテムの特性、由来を確認できる。法具を再現した数少ない魔道具なので厳重に管理されている。


「ありがとララ、気が利くわね」

 ひょいとララさんがリズさんに鑑定機を手渡す。厳重な管理どこいった。


「じゃあいってくる。後は頼んだぞリズ」


「ひさしぶりだからってはしゃがないでね」


 引退冒険者のドワーフは楽しげにスキップして出て行った。


「まったく、けがしなきゃ良いけど。それじゃ、あらためて子爵のところに行きましょうか」


 リズさんが両手にものを持ったまま扉を開けようとしたのでリオンが慌てて扉を開けた。だから雑だってばリズさん。


「さっき子爵の事をジョージって呼んでましたけど、リズさん達と子爵ってどういう関係なんですか?」


 廊下を歩く間、さっきから気になっていた事を聞いてみた。


「そうねぇ……元部下か同僚? 私たちはジョージのクランにいたのよ」






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