第48話【第二回遺跡調査結果】
部屋の照明をつけ、ベランダに出る。
置きっぱなしで、すでに定位置となりつつあるデッキチェアに身をあずけ、一つ大きな伸びをする。
リオンとも明日の打ち合わせをすませ、酒も良い具合にまわった所で一足先にあがらせてもらった。
建物の隙間から見える夜空を見上げる。月明かりに照らされた雲がゆっくりと流れていた。そろそろ雨期が来るけど、明日は晴れそうだな。
明日からリオンとパーティか。
書庫については問題ない。法具についても、絶対に秘密にしなければいけない、というわけじゃないんだ。
それに、パーティを組めば銅級を狙う上で有利になれる。
今のリオンは鉄級冒険者そのものだけれど、素地としての剣術が抜群にうまい。あれなら練度も高いはずだから、スキルが使えるようになれば相当強くなるはずだ。
そんな打算をしながら僕はまた床にボロ袋を敷く。
「第二回、キッケル遺跡発掘調査、結果発表ー」
タイミングが悪く、遺跡から脱出した後できていなかった書庫の中身を確認する。
ジョアンの書庫を起動すると光の板が出てきた。二日ぐらいしかたってないのに、なんだか久しぶりな気がする。
「さて、なんといっても鉱山だもの、良いものとかはいっているんじゃないかな、と」
……
コボルトの槍 ×2
コボルトの短剣×10
コボルトの手斧×3
……
コボルトは、まあ普通だな。殆ど第一層で倒した奴の武器だし、後で鍛冶屋に売りに行こう。
……
凝血石(低位)×15
凝血石(魔砂)×294
……
んー、魔砂の集まりが悪い、かな? 書庫にウォーターショットをぶち込んだ時にほとんど魔砂がカラになったから補充しないとな。
明日から土さらい、もとい沼さらいをしよう。良い具合に魔素だまりがあればいいんだけど。
……
蔵玉層の石塊(三十二ルム)
練重層の石塊(五十三ルム)
光帯層の石塊(二十五ルム)
石木層の石塊(八十三ルム)
流積層の石塊(六十八ルム)
蔵玉層の石塊(四十一ルム)
基石の石塊(九十四ルム)
……
あー、石塊ってこういう表記になるのか。
それぞれ一個ずつ取り出してみる。
蔵玉層の石塊は茶色で、ところどころに丸い粒が入っている。魔道具の素材につかったり、意外と使いどころのある鉱石だ。
練重層の石塊は灼炎石を含んでいるから所どころが発光している。
光帯層の石塊はとなり練重層の光をキラキラ反射させている
石木層の石塊は木が石に変わったものだからか、風の属性と相性がいい。
流積層の石塊は流れるような文様が特徴的だ。
基石の石塊は、まあ固いだけっていうイメージなんだよな。錬金術次第で使い道があるらしいけど。
文字を押してもまとまらないのは重さが違うからだろうか。
これは砕くのも面倒だな……後回しだ。
光帯層の石塊(二十八ルム)
石木層の石塊(六十三ルム)
流積層の石塊(七十八ルム)
折れたツルハシ
砕けたナイフ
溶けたショートソード
精霊の炎刃
溶けた銀貨
……
この辺はきっとノームに殺された冒険者の遺品だな。
「……ん?」
慌てて指を止めて戻る。
「精霊の炎刃?」
板の右側に鑑定結果を表示させる。
種類:刀剣
位階:——
属性:火
特殊攻撃 精霊の延べ
:灼炎石の力を使い、炎をまとった刃を伸ばせる。
由来:炎の精霊の力で炎のナイフが変化したもの。
精霊の力が封じられている。
……とりあえず、取り出してみよう。
ボロ袋の上に現れたのは白いナイフだった。
刀身は両刃で、よくみれば地肌でゆるゆると赤い筋が踊っている。いつか見せてもらった高位魔法に似ている気がする。
そして、柄頭だけではなく鍔元のあたりも灼炎石で出来ているみたいだ。
やっぱり逃げる時に回収した炎のナイフだ。
灼炎石の紅色と刀身の輝くばかりの白、そして炎魔法が付与された刃が伸びるという応用がききそうな特性。
これはすごいものを手に入れてしまった。問題は……
「これ精霊の力だよ絶対、結果的にシャールが言ったとおりドロボウだよ僕……」
今から謝りに行けるはずもなく、こうして新たな秘密を手に入れてしまったのだった。
――◆後書き◆――
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