第46話【絡まれイベント(1)】
「もどりましたー!」
上機嫌な声が夕方のコロウ亭に響き渡り、早くも飲み始めていた冒険者達の視線が僕らに集まった。
「リオンちゃん首尾はどうだった? ってきくまでもないわね」
満面の笑みのリオンと、パーティ結成に際して借り受けた道具を背負った僕を見てフィオさんが苦笑する。
「ばっちり捕まえましたよ!」
そういって僕の背中を叩いてくるリオン。僕は魔物か。
リオンとカウンターについてため息をついていると、後ろから唐突に声をかけられた。
「なんだよ、キレイめな女の子が来たってみんなでテンション上がってたのにザート目当ての押しかけだったのかよ」
振り返った先には三つのがっかりした顔があった。ここで顔見知りになったパーティだ。たしか『ケルベロス』だったかな。
声をかけてきたのはリーダーのインディだ。将来本物のケルベロスと戦ったらどうするつもりだろう。
「お前誘ったときはソロ志望って言ってたのにどういうつもりだよー。やっぱ女か? セージの奴みたいにハーレムパーティ狙いだったのか?」
「狙ってない、成り行きだよ」
食堂内はいつの間にか人が増えていて、方々からブーイングが上がってくる。少しは信じて欲しい。そしてセージって誰だ。
ケルベロス達の席でしばらくじゃれていたけれど、なにか外の雰囲気がおかしいので顔をのぞかせた。
みれば三十代にみえる冒険者達が気の弱いパーティにからんでいる。
鉄級冒険者は殆どが十代で三十代はまれだ。でもそれ以前に、あいつらはなにか違う。
「あ、そう。そいつそんなに手が早いの。許せないよなぁ。俺がのしてやろうか? 頼まれたら俺やっちゃうよ?」
グループのリーダーらしいワシ鼻の男が絡んでいる相手に迫る。
「あ、いや……おねがい、します……」
依頼を聞いた時には不健康にしなびた三白眼がこちらにむいていた。
ワシ鼻の男がジョッキを片手に店内に入ってくる。身長は僕より少し低い。けれど体格が良い。肥大した筋肉と脂肪をくたびれた革鎧で締め上げているみたいだ。
「ザート君ってきみぃ? なんか、調子のってるからやっつけてほしいって頼まれてるんだけどさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます