第43話【穏やかな朝】
朝起きて、食堂に降りると、テーブルで朝のミレットスープをたべているリオンと目があった。
「あ、おはようザート」
輝くような笑顔で始まる朝、悪くない。
いや、ちがう、そうじゃない。
「ここの朝飯がたべられるのは泊まり客だけだった気がするんだけど」
なんでリオンがいるんだ?
見回しても今日はマスターもフィオさんもいない。
「ああ、それは私が宿替えしたからだよ」
「宿替え?」
食事をしながら昨日の出来事を聞くと、おおよそ話が見えてきた。
予想通り、リオンのスキルは両手剣に特化しているらしい。
強い敵と戦い位階を上げるには高価なロングソードが必須になる。
一方で子鹿亭に泊まっている冒険者は、ビビの様な生産職志望の人が多い。
生産職志望の人はブートキャンプはこなしているけど、製作したものを売って生活するから、積極的に強くなる必要はない。
方針が違う人達とパーティを組むことは出来ないので臨時パーティを組んだりしていたということだ。
状況を変えようと戦闘職が集まる宿に移ろうと考えたけど、どこが良いとか、女将さんに悪いんじゃないかとか悩んでいたらしい。
「それで、元冒険者のフィオさんに相談したわけだ」
「うん。そしたらウチに来なさいって。私も、コロウ亭ならザートと予定も合わせられるし良いなと思ったんだ。宿替えの時って宿屋同士で客を融通しあうらしくて、フィオさんと子鹿亭に行ったらフローラおばさんもあっさり了承してくれたよ」
「あ、フィオさん、ザートも起きてきましたよ!」
リオンが入り口に向かって手を振ったので振り返ると、市場にいってきたのか、かご一杯の野菜をもってフィオさんが入ってきた。
「あ、おはようザート君、ちょっと待っててー」
厨房に入り、籠の代わりにスープを持ってきてくれた。
「はい、おまたせー」
澄んだ琥珀色のスープに色とりどりの雑穀がしずんでいる。香辛料の壺からフェルシードをひとつまみ入れてたべると、野菜の滋味と丁度良い刺激が口に拡がる。
「あ、そうだザート君、さっきギルドにも行ってきたんだけど、リズが呼んでたから後で行ってあげて?」
リズさんが? 昨日の件は終わっているし、なんだろう。
「リオンちゃんも一緒にね!」
リオンと一緒? なんか嫌な予感しかしない……
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