第33話【ノーム(盗掘現場)】

 あれから別の坑道に向かい、流積層の閃藍石、光帯層の白針石、蔵玉層の蛇眼石と順調に採掘していった。

 これで木、水、金、土がそろったので残るは火属性の灼炎石がある練重層だ。


「あれ? この辺りのはずなんだけど……」


 ビビが困惑しつつ周囲の岩壁を見回している。

 僕も見てみるけど、細かい光が星空のように見えているだけでまったくわからない。

 これらすべてが何らかの石ではあるんだろうけど、このままじゃ知識が無ければ見分けられない。


「これは、根こそぎやられたか……常識知らずの新人か、マナー知らずの冒険者くずれが来たようね」


 ビビが悔しそうに、というか相当嫌そうにため息をつく。どうやら採掘しつくされているらしい。

 岩なんていつか掘り尽くされるものだし、また新しい所を掘ればいいんじゃないの?

 なんて言えない。だって相手がビビだもの。


「普通はどうするものなの?」


 平静をよそおって訊いてみる。


「ダンジョン化した鉱山は普通のとはちがって自己修復するの。簡単にいえばチマチマとってさえいれば同じ場所で半永久的に採掘ができるのよ。だから一カ所につき一回に取る量は一ディルムまでとギルドできめられているわ」


 え? ヤバ、そうなの?


 今ジョアンの書庫には十五ディルムくらいの鉱物資源が入っている。

 『石木層の塊』みたいにざっくりとした名前だけど、多分細かくしていけば特定の名前が出てくる。

 自分でコツコツできない分、後で楽しもうと適当に大楯ですくいとっておいたんだけど……


「これをやった冒険者って特定できるかしら? ギルドに買取を依頼していればすぐつかまってペナルティだけど、商人がグルだった場合……」


 ブツブツとつぶやくビビの隣で常識知らずの新人はいやな脇汗をかいている。

 ビビと一緒に来て良かった。知らずに第二層で採掘していたらアウトだったな。


「ハハ、まるでキノコみたいだね」

 

「のほほんと言っている場合じゃ無いわよ!」


 場を和ませようと話題を振ったらビビに相当な剣幕で怒られた。

 オレンジ色の瞳が真剣にこちらをにらんでいる。

 これは、かなりまずい状況?


「ごめんビビ、今僕らがすべき事は?」


 情けない話だけど、事前の調べで『鉱床が根こそぎやられていた場合の緊急対応』なんていうものは無かった。


 

「今の私たちじゃどうしようもない。全力で、なおかつ静かに第二層から脱出することよ」



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