第8話【イノシシ】


「武器は……ない?」


 僕の発言にモルじいさんは面倒そうに耳をかいている。


「ほかの新人の身になって、農作業をするそばで誰かが武器を持って歩き回る姿を想像して見ろ。いらつくだろ?」


 まあ、確かに、自分がその立場ならいらつく。


「でもさすがに丸腰はないですよね?」


 旅の途中では護衛の人たちから何かしら武器を借りていた。

 ボアが出てくるのにバックラーだけというのはさすがに厳しい。


「森の掃除にはこいつを持って行く」


 モルじいさんは小屋の軒下から二本の農具を持ってきて片方を渡してきた。

 一ジィ半の長柄の先にゆるい内反りの鎌がついている。


「鎌? ですかね」


「枝打ち鎌だ。ふだんは木の枝打ちやヤブ払いといった森の掃除に使う。加えて丈夫だから、ヤブの深い森から魔獣がでてきてもこいつで倒せる」


 なるほど。比較的武器に近い農具か。

 でもこれでボアやスネークに対応できるんだろうか? さすがに鎌は使ったことがない。


「深刻な顔すんな。魔獣がでたら俺が倒すんだ。お前のその鎌はお守りくらいに思っとけ」


 そう言ってモルじいさんは森へ歩き出してしまった。



 しばらく後ろをついて行くけど、モルじいさんは所どころにある森を無視して通り過ぎてしまう。


「あの、森の見回りですよね? 通り過ぎていいんですか?」


「ああ、あのあたりはまだ魔獣がわいてないから良いんだ。お前もいっぱしの冒険者になればできるようになる」


 確かにいないみたいだけど、気配察知だろうか?

 そんな事を考えているうちに、ひときわヤブが深い森の前に来た。


「今日はこのヤブを払っちまうぞ。こういう場所は普通の獣もねぐらにしやすいからな」


「え? 壁の中なのに普通の獣もいるんですか?」


「いるぞ。この広い第一壁外には野生のもいるし、野良の家畜もいる」

 

 モルじいさんはそう言いながら、持ってきた鎌でおおざっぱに下草を払う。

 僕も教えられた通り、ツタをかき切ったり、木から伸びる余計な枝を打ち払ったりする。


「おいザート! ちょっとこい!」


 しばらく作業をしていると、モルじいさんの呼び声がした。


「なんです?」


 作業を止めて坂の上で作業をしていたモルじいさんの所にむかうと、結構大きいイノシシが倒れていた。


「でっかいですねぇ」


 体長なら一ジィ半、重さなら二百ディルム(※キログラム)あるんじゃないかこれ?


「まだ死んで間もねぇな。これなら食えそうだ。近くの奴らを呼んでくるから森の外まで道をつくっておけ」


 そういうとモルじいさんは外に走って行ってしまった。


 下草を刈り込んで、イノシシを引きずっていく道を作って待つ。


「遅い……」


 そもそもどこにいっているんだ? ここに来るまで人はほとんどいなかったけど。


――モゾ


 あれ、今イノシシ動かなかった?


…………


 じっと見ていたけど、動かない。モルじいさんも死んでいるって言ってたしな。


「ひっくり返してみるか」


 特に何と言うこともないけど、下からワームか何かが食べようとしていたら、嫌だし。


――土よ。我が意に沿って事を為せ


 右手を前に出し、魔力を込めると土が盛り上がっていく。

 低位スキルの土魔法だ。


 スキルが無くても魔法は使える。

 そもそも起こしづらい行為を身体が記録したのがスキルだ。

 スキル無しなら一割の確率でしか成功しない魔法も、スキルがあれば十割成功する様になる。

 なので、僕でも”頑張れば”魔法は使える。


 ゆっくりと土を盛り上げてイノシシを転がす。

 イノシシがあった地面には長細い赤芋くらいの虫がうずくまっていた。


「ん? なんだこいつ?」


――バツ、バァン!


 虫が跳ね上がった瞬間。あたりに光と何かが炸裂した音が広がった。





    ――◆ 後書き ◆――


いつもお読みいただきありがとうございます!


【お願い】

★評価、フォローをぜひお願いします! 

理由は以下の通り!


評価★やフォローが入る

 →作者のモチベーションが上がる

  →話のストックがたまる

   →毎日更新が途切れない


エピソードの安定供給のため、なにとぞお願いいたします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る