第7話【森の掃除人】
「そいつは楯の法具かもしれねぇ。どこかに凝血石の装填口があんだろう? これを突っ込んでみろ」
確かに裏側を見ると持ち手だと思っていた太い棒の根元に穴があった。
法具と言われて一気にテンションが上がる。
法具。それは一般に使われる魔道具とは一線を画す失われた文明の遺物だ。
複雑な魔力制御転換なんとかというからくりがあって、今の人間が使う属性魔法とは比べものならない複雑な現象を起こせるという。
いそいそと受け取った凝血石を穴に入れてみる。
「後はでかい楯を展開するイメージをしてみろ」
でかい楯、でかい楯……
「……あの、なにもおこらないんですが」
魔道具を起動した時みたいな手応えもないし、そもそもバックラーから魔力を感じられない。
「うん? しかし素材は昔見た法具のそれなんだがなぁ」
渡したバックラーをひっくり返しながらモルじいさんは首をひねっている。
「壊れてんじゃねえの?」
監督が身もフタもない事をいった。へこむよそれ。
壊れている場合、直せるのは国の魔法考古学研究所か、一握りの技師だけだ。
しかも直ってもサンプルだ何だのといって持って行かれる場合が多いらしい。
技師は持って行かないけど、直せるかわからない上に高額な金銭を請求してくる。
どちらにしてもろくな事にならない。
「ま、まあ、バックラーとしては使えるんだ。ないよりましだろ?」
モルじいさんが気まずそうにバックラーをかえしてくる。
うーん、たしかにバックラーとしては問題なく使えるしな。
「じゃあ、話を戻すがいいか?」
「あ、別の仕事があるっていう話ですよね」
「そうだ。お前は見たところ衰弱もしていないし、戦えるらしいな。ここに来る間も護衛の冒険者と一緒に戦っていたと商人のテッドから聞いている」
そう言われるとちょっとうれしい。
ありがとうテッド。
誰か知らないけど。
「モルじいさんは畑近くにある森の掃除が仕事なんだが、助手が必要でな。お前にそれを頼みたい」
魔獣は魔素に富んだ土地にひそむ。そして魔素の多い土地はヤブになりやすい。
農作業より一歩先に進んでいるし、魔獣と戦えるのは大きい。
一ヶ月も農作業とか正直嫌だったし断る理由なんてない。
「魔獣も出るが、このあたりは最低位の魔獣しかわかねえ。風系のブッシュボアか水系のウェトスネークぐらいだ。後は虫の類いだな」
モルじいさんが指を折りながら解説していく。
「特に注意しなきゃならんのはバウンディングバグだが、奴らはもう冬ごもりの季節だからきにしなくてもいいんじゃないか? ま、とにかく預けたぞモルじいさん。じゃあな」
監督が本来の仕事に戻ってからもモルじいさんのレクチャーは続いた。
「……と、まあこんな所だ。後は実地だな。質問あるか?」
「はいモルじいさん。僕の武器はなんでしょう?」
学院で一通り試したけどどれもそこそこ扱える。器用貧乏というか、スキルは取れなかったけど……
「武器なんかねぇよ。ここにあるのは農機具だけだ」
はい?
――◆ 後書き ◆――
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