第5話【辺境の歴史解説】
この世界には魔力の素たる魔素をため込んだ魔素だまりが点在している。
魔素だまりには魔力をためこむ魔獣が棲む。
魔獣は通常の獣とは異なる影のような存在だ。殺すと身体の一部やアイテム、血が固まったような凝血石を残して泥となり大地にしみこむ。
凝血石は魔素とほぼ同義であり、魔法をつかうための重要な資源だ。
冒険者は凝血石を得るため、魔力をため込んだ魔獣を狩る事を生業としている。
アルドヴィン王国の北東部は特に魔素だまりが多い土地であり、強い魔獣の発生源として古来より恐れられていた。
八代前のアルドヴィン王は、災害をもたらすこの地を問題視し、ある貴族の三男に問題の解決を任せた。
貴族の名はカール=ソフィス。土地をブラディアと名付け、新たに家を興し、初代ブラディア辺境伯として開拓を始めた。
それがブラディアの歴史のはじまりとなる。
辺境伯はまず、魔獣の中央への侵入を阻むため、北のブラディア山から東のレミア海まで長城をつくった。
そして、その長城の中央に城塞を建設した。
今では長城は第一長城壁と呼ばれ、城塞は都市の核となっている。
辺境伯領領都ブラディアはこのように誕生した。
凝血石が貴重な時代になると、辺境伯は冒険者とともに、新たな長城壁を作った。これが現在の第二長城壁である。
側壁を加え、第一と第二長城壁に囲まれた地帯で冒険者が強力な魔獣を倒した結果、その一帯の魔力は乏しくなり、弱い魔獣しかでてこなくなった。
これにより安全な農地が確保された。
後はこの繰り返しだ。最も強い冒険者達が城外の脅威を取り除き、壁を作る。
壁の内側で中堅・駆け出しの冒険者が小型の魔獣を狩る仕組みができあがった。
現在ブラディアには街のすぐ外側の第一城外から最前線の第五城外まで、フィールドが五つある。
冒険者は強くなるほど外側のフィールドに行くことが許される。これがランク制の始まりであり、王国の冒険者ギルドの基準となった。
「――なっが」
宿でくつろぎながら冊子を眺めていたけれど、気がつけば夜になっていた。
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