第4話【冒険者ギルド登録】



「これが冒険者ギルド……でいいんだよな?」

 門は横に広がって城壁とつながっている。なるほど、城壁の外に行くのは冒険者しかいないんだからギルドが門番というわけか。


「依頼、新規登録は右?」

 近づいて紋章を見上げるとその下に案内書きが貼り付けてあった。


 門の下に入ると両側にはコの字型のカウンターが広がっていた。

 図書館ほどでは無いけれど、広場の喧騒よりは静かな空間が広がっている。

 なんか思っていたのと違うな。もっと殺伐としていると思っていた。


「ご依頼ですか? それとも冒険者ギルドへの新規登録でしょうか」

 入り口近くに立っていた案内役っぽいおばさんが聞いてきた。

「あ、新規登録です」

「では番号札の番号で呼ばれますので、しばらくお待ちください」


 番号が書かれた板を受け取り適当な長椅子に座ってまつ。

 なにこれ銀行?


「ブラディア冒険者ギルド本部にようこそ。登録手続きを担当しますリザです」

 美人だけど、キリッと整えたブルーの髪や服装で距離感を感じるリザさんに促され、椅子についた。手続きは淡々と進んでいく。


「では他ギルドの身分証、または西大門で発行された仮身分証をいただけますか?」

「はい」

 おじさん兵士から受け取った紙を手渡す。


「ザート様、ですね。ザート様は読み書きはお出来になりますか?」

 うなずくと、向こうもこちらの身なりで察したのか、『ですよね』と苦笑した。


「では詳細は冊子を見ていただくとして、重要な点だけ話しますね」


 しばらくリザさんの説明を聞いた。かいつまむとこんな感じだ。

 冒険者資格については、取得について条件は無い。

 取消要件については、殺しなど重罪は一発アウト。資格を失って犯罪奴隷堕ちとなる。

 情状酌量、軽微な違反についても三回で実質アウトだ。

 階級については鉄、銅、銀、金、白金がある。

 そして各階級の中でも一位から十位まで細かく分かれているらしい。


「では登録のため、血をいただけますか?」

 血に残る魔力で本人特定ができるため、重要な契約では血の登録が必須だ。

 黙って指を差し出すとリザは失礼しますと言って針のついた魔道具でパチンと指を挟んだ。


 リザはテキパキと手を動かし、子供の手の平ほどの鉄板を渡してきた。

「こちらがザート様の冒険者としての身分を証明するプレートです」


 今日の日付の後に”ザート”とだけ刻まれた鉄板を見る。

 このプレートが今の僕なんだな。


 新しい自分を手に入れるという人生一大イベントは、こんな風にあっけなく終わった。





    ――◆ 後書き ◆――


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