第33話 聖剣
疲れ切った俺たちは、その場に座ってしばし休憩を取ることにした。
「なあユウト、報酬は?」
「ああそうだ。まだ確認してなかった」
ヨシアキに言われ、メニューウインドウを開いてストレージを見る。
【エリアボス討伐報酬 聖剣カーテナ】
「聖剣? なんかすごそうだな……」
俺はそれをタップし、実体化させる。
カランコロン。
剣が地面に落ちる。
「お兄ちゃん、この剣欠けてるよ?」
「まさか、今の衝撃で切っ先が折れてしまったか?」
カナミとアカリが剣を眺めながら呟く。
聖剣カーテナという名前のこの剣は、刀身が短く切っ先が無い形状をしていた。
「でも、今欠けたって感じでもないよね?」
聖剣をまじまじと見つめるミサキに対し、レナが口を開く。
「加州清光みたいに、昔に折れてしまったんじゃないかしら」
「なるほど、そういう剣も無いことはないか……」
聖剣というくらいだし、欠けているのにも何か伝説があるのではないか。
そう考えると、とても貴重なものに思えてくる。
その時、ホノカが急に大声をあげた。
「そうですよっ! カーテナってどこかで聞いたことあるなって考えてたんですけど、イギリス王家に代々伝わる伝説の剣ですよっ」
「あ? イギリスオーケー?」
ヨシアキが首を傾げる。
それを聞いたミサキは呆れた表情で返す。
「入谷さん、イギリス王家です! もう、この世界のこと何も知らないじゃないですか。イギリスは西側にある島国ですよ」
「ああ、そうかそうか。ってことは、海外の剣ってことか?」
ヨシアキの疑問に、ホノカが頷く。
「そうなりますねっ。ただ、なぜここにカーテナがあるのかは謎ですけどっ」
確かに、イギリス王家に伝わる伝説の剣がこんな洞窟でドロップしたのは謎だ。さっきのドラゴンとイギリス王家に繋がりがあるとは思えないのだが。
「で、お兄ちゃんがそのカーテナ? を使うの?」
質問を投げかけてきたカナミに、俺は少考してから答える。
「いや、これはホノカが使ってくれ」
「へっ? 私ですかっ?」
驚くホノカに、聖剣を手渡す。
「包丁で戦うのはそろそろ限界だろ? 俺は傘があるし、まずは戦力を均衡させることが重要だろう」
「そうだな。ユウトの言う通り、我々がウィークポイントにならないようにする必要がある。ホノカが持っておくべきだ」
アカリが続けて言うと、ホノカは戸惑いながらも聖剣を受け取った。
「じゃあ、使わせてもらいますねっ。上手く扱えるかは分からないですけどっ……」
俺はホノカの肩をポンと叩き、立ち上がる。
「そろそろ行こうぜ。まだ洞窟の半分くらいしか進んでないだろうし」
「うん、行こっか」
ミサキも立ち上がると、笑顔でこくりと頷いた。
ランタンで照らしたところ、洞窟はずっと先まで続いていそうだ。
これなら向こう側に抜けられる可能性が高いと考えていいだろう。
少し希望が見え始めたその時、奥の方で何かが緑色に光った。
「ストップ」
手を広げ、後ろのみんなを制止する。
ミサキは洞窟の奥に目を凝らして呟く。
「またモンスターね……」
「ああ。だが、あれはそんなに強くなさそうだな」
ゆっくりと近づくと、そこにいたのはコウモリ型のモンスターだった。
「これならホノカでも倒せるんじゃないか?」
「わっ、私ですかっ!?」
「大丈夫だって。こいつは弱そうだし、聖剣なら一撃で倒せるだろ」
「そっ、そういうものですかねっ……?」
俺がやってみなと促すと、ホノカは《聖剣カーテナ》を両手で握り、一歩前に出た。
「ホノカさん、カッコいいところ見せて下さい!」
カナミの応援を受け、ホノカは大きく深呼吸をする。
「……それじゃあ、行きますよっ」
聖剣を頭上に持っていき、コウモリに向かって思い切り振り下ろす。
「やぁっ!」
「キキキキキ……!」
しかし、コウモリは甲高い鳴き声をあげながらそれをひらりと躱した。
これは案外手強いかもしれない。
「ユウトさん、全然当たりませんっ」
「何度もやってればコウモリも疲れてくるはずだ。諦めるな」
「わっ、分かりましたっ」
ホノカは何度も何度も聖剣を振るう。
最初のうちは嘲笑うように簡単に斬撃を躱していたコウモリも、次第に動きが鈍ってきた。
「ホノカ、そろそろ行けるはずだぞ」
「やっちゃえホノカ!」
アカリとヨシアキの声に、ホノカの手に一層力が入る。
その瞬間、聖剣がブーンと音を鳴らし黄色く発光した。
「ソードスキルを取得したようね」
レナが呟く。
「よし、行けるぞホノカ」
「はいっ!」
俺の声に、ホノカは力強く頷いて聖剣を振り上げた。
コウモリは気配を察したのかホノカの背後へと移動する。
直後、ホノカは素早く体を反転させ、コウモリ目掛けて聖剣を振り下ろした。
「キキキッ」
ズサッ!
聖剣がコウモリを縦に真っ二つに切り裂く。
コウモリ型モンスターは光の粒子となって弾け散った。
【霧島ホノカのレベルが23に上昇しました】
【単発剣技スウィングダウンを取得しました】
「たっ、倒せましたっ……!」
ホノカはその場に座り込み、ホッとした表情を浮かべる。
「よくやったな、ホノカ」
「ホノカちゃん、おめでとう!」
俺とミサキが歩み寄って声を掛けると、ホノカはニコッと笑って言う。
「ユウトさん、ミサキさん、ありがとうございますっ!」
「大丈夫? 立てるか?」
「すみませんっ」
ホノカの手を握り、彼女を立ち上がらせる。
するとそこへ、目を輝かせたカナミが突進してきた。
「ホノカさん、最後のズバってところ、めっちゃカッコよかったです!」
「おいカナミ、急に来たらびっくりするだろ……」
興奮気味の妹に、呆れつつも注意する。
だが、カナミは全然聞く耳を持ってくれない。
「あのスキル、一体何ですか!?」
「えっとっ、あの、そのっ……」
妹の圧に、ホノカは少し引いているようだった。
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