第9話 中庭での戦闘
「おい、そこで何してんだ!」
(見回りの人間か)
「おーい!侵入者だ!」
声を発した見回り以外に四人の人間がすぐ駆けつけてくる。
「あいつらブツを盗む気だ!殺せー!」
「みんな中庭へ走れ」
レオニードが皆に指示する。
一行は中庭の中心に来ると各々の武器を構える。
(戦いは避けたかったが覚悟を決めたんだ)
カイルもショートソードを構え戦闘態勢に入る。
「おい、いったいなんの騒ぎだ! こんな夜中にうるせぇぞ!」
城の中から一人の男が出てくるなり、ひと際大きな声を発する。
「なんだ、ブツを取り返しにきた連中か。……いや違うなー、俺たちの商品を盗みに来た盗賊団だな!」
「ドルゴス様、ここは俺たちが何とかしますんで!」
「うるせぇ! 最近むしゃくしゃしてたから、たまにはぱーっと遊びてぇんだよ!」
「あのうるさいのは、私が相手する。君たちは取り巻きを頼む」
レオニードが皆に指示する。
「あー、わかった」
「こちらが片付いたら加勢に入ります」
ベルクとサザーンが答えると盗賊たちの方へと向かう。
カイルはベルクとサザーンのいる方へ駆け出すと横に並ぶ。
「あまり無理するなよ」
ベルクがカイルを気遣う。
「あぁ」
カイルが短く返事する。
ロミリオは後方に下がり弓矢で援護する。
――レオニードとドルゴスが対峙する。
「ほー、いい装備してるじゃねぇか、ちったぁ自信があるのか? それとも飾りか? まー、すぐにわかることだがなぁ!」
ドルゴスがレオニードの頭上目掛けて勢いよく片手斧を振り下ろす。
レオニードはロングソードを頭上で構えて斧を受け流すと金属のぶつかる音が中庭に響き渡る。
「へー、挨拶ぐれぇはできるようだな。ならこいつはどうだ?」
ドルゴスは背中に背負った斧をもう片方の手に持ち、それぞれの手に斧を持った状態になった。
「そらそらそらー!」
次々に叩き下ろされる斧の連打にレオニードは全て受け流して対応している。
攻撃が止むと同時にレオニードは一旦ドルゴスとの間合いを取る。
「そういえばおめぇ、最初暗くてよく分からなかったが、どっかで見たことあるな」
ドルゴスはレオニードをじっくりと観察する。
「……おいおい、誰かと思えば雷光のレオニードじゃねぇか! ほー、どうりで……こいつは楽しくなってきやがったぜぇ!」
――カイル、ベルク、サザーン、ロミリオは五人の盗賊と対峙していた。
「よし!こっちは一人倒した!」
ショートソードを装備したベルクが吠える。
「こちらも!」
サザーンは正面の盗賊を見事な槍さばきで倒した後に返事する。
盗賊は残り三人である。
カイルの正面にいる盗賊が間合いを詰めるとカイル目掛けて横斬りを繰り出す。
カイルは後ろに下がって避けると、ショートソードの斬撃で反撃しようとする。
だが斬りかかる直前、一瞬ためらってしまった。
その隙に盗賊はカイルにもう一度斬りかかろうとする。
(避けられない!)
――直後、盗賊は体勢を崩して前のめりに倒れ込んだ。
倒れ込んだ盗賊の背中には矢が突き刺さっていた。
そのまま視線を正面に向けると矢を放ち終えたロミリオが立っていた。
「カイルさん、大丈夫ですか!」
「あぁ、助かった!」
「何してんだカイル!躊躇ってたら、やられるぞ!」
ベルクがカイルへ檄を飛ばす。
カイルは迷いを振り切ったつもりだったが実際の状況を目の当たりにすると、まだ覚悟が足りなかった。
「や、やってらんねーぜ……」
残った二人の盗賊は戦いを放棄して逃げ出す。
逃げ出した直後、カイルから見て右側の盗賊の背中に斧が命中すると倒れ、そのまま動かなくなった。
「ちっ!一人逃がしたか。騒ぎが大きくなると厄介だが、今は仕方ねぇか」
ドルゴスは取り逃がした盗賊の方を一瞬見て、軽く悔しがる。
「貴様に構っている暇はないのでな。そろそろ終わりにするぞ」
レオニードはロングソードを両手で構える。
「つれねぇなぁ。もっと遊ぼうぜ!」
レオニードはドルゴスの言葉を無視し、斬りかかる。
しかし、斧で受け止められる。
ドルゴスが反撃に移ろうとした時、急に彼の体から鮮血がほとばしる。
レオニードから見てドルゴスの左からベルクがショートソードで斬りかかり、右からサザーンが槍を突き刺したのだ。
「てめぇら……邪魔すんじゃねぇ!」
ドルゴスは負傷してもなお、吠えながら両腕を拡げて薙ぎ払う。
「ぐぁぁぁ!」
「うわぁぁ!」
ベルクとサザーンは吹き飛ばされ地面に体を打ち付けながら転がる。
その隙に再度、レオニードが雷光の如き素早さでドルゴスに斬りかかる。
「がぁぁぁ!レ、レオニードォォ!」
今度は斬撃を防げなかった。
ドルゴスは後へ仰向けになって倒れる。
「……へへ、なかなか……楽しかったぜ……」
仰向けのまま動かなくなり、それ以上喋ることはなかった。
ロミリオがベルクとサザーンの元へ駆け寄る。
二人とも負傷したが歩くことはできた。
「ただの盗賊団かと思ったら、あんなのがいたとはな。……あいたたた」
ベルクがわき腹を押さえながら話す。
「これであとは町へ運搬するだけだな」
レオニードがそう言うと、一行は互いの顔を見ながら喜んだ。
朝になるとメルフィスが道の途中まで来て合流する。
それまでに中庭の角に集めた盗まれた商品を、城外の台車へ運ぶ作業を済ませる。
一行はさっそく作業に取り掛かろうとした時――光の矢と形容すべきものに上半身を背後から貫かれベルクは崩れ落ちた。
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