第44ニャ【すばりのことニャ】


 ここからはレースに勝つことを意識していかニャいと。せっかくチャンスをもらったんだ、ぬ子が猫の街を豊かにする!

 お母ちゃんもお父ちゃんも、きっと喜ぶニャ


 今、ぬ子達が歩いているのは、見渡す限り氷の世界。めちゃくちゃ寒いニャ

 すばりからポンチョを返してもらって、マフラーもしっかり巻いたけど、それでも寒い


「すばり〜、あたためてくれニャ〜」

「断じて断る!」

「もうそろそろにゃれてもいいニャ〜」

「いや、すまんが……」

「しゅん。ねぇすばり? 何故にゃぜ、猫アレルギーに? 聞いてもいい?」

「それは……」


 すばりは神妙な面持ちで眼鏡のズレを調整してる。聞いちゃいけないことだったかニャ?


「我には、妹がいると、この前話したな?」


 妹、そうだ、すばりの家族だニャ

 すばりは優しいから、きっと妹にも優しい。ぬ子やみんにゃにするように

 ぬ子は小さくうにゃずいたニャ


「うん、妹がいるのは聞いたニャ。家族だよニャ、ぬ子にもいる、大事ニャ家族。そうだ、すばりの家族のはにゃし聞きたい!」

「我の家族は……妹、だけだ」

「へ? お父ちゃんとかお母ちゃんは?」



「……死んだ。妹が二歳の頃に、事故だ」



 あ、どうしよう


 ぬ子って本当に馬鹿だニャ。両親、いニャいんだ、すばりは、ずっと一人で妹を育てて……

 それじゃ、こんニャことしている場合じゃ


「何を神妙な顔をしている? 気にするな、昔のことだ」


 知りたい、すばりのこと、


「すばり、ぬ子はすばりのこと、もっと知りたい」

「猫アレルギーのこと、か?」

「……うん」


 本当はもっとすばりにスリスリしたい、

 それニャのに、アレルギーで出来ニャい、


「断っておくが、我は動物が、いや、猫が好きだ。それは昔からで、今も変わらない」


 え! ぬ子が好き!?


「だが、我は猫に対して拒否反応が起きるようになった。それは、あの事故と関係していると、医者は言った」

「ご両親の、事故……」

「そうだ。我が小学生の高学年の時だ。道に捨てられた仔猫を見つけた。我はその猫を連れて帰り、親に飼うと進言した。だが、

 二人は飼えないから元の場所へ返せと言った。我は食い下がったが、マンション住まいなのだから無理なものは無理だと、遂に怒鳴られてしまったのだ」


 すばりの小さな頃か……


「逆上した我は、その猫を連れて家を飛び出した。雨の降る日だった。当然、二人は我を追いかけた。妹は近所のおばさんに預け、二人で、だ」


 すばりは黙々とはにゃ


「結局見つかった我は、二人に諭され猫を元の場所へ返した。猫は我を見ていたが、箱から出ようとはしなかった。道路を挟み、別れを告げた我が去ろうとした時だ、猫が、道路に飛び出した」

「道路に……」


 最後まで聞かニャくてもわかる。ご両親は、飛び出した猫を守って死んだんだニャ

 その日から、猫を見るだけで拒否反応が起きるようになり、今までそれを引きずり生きてきたと


 そうすばりは教えてくれたニャ


 その後は親戚に引き取られ過ごしていたみたいだけど、中学生になってからは二人で生きてきたみたい。勿論、援助はしてもらっていたみたいだけど


「すばり、ごめんニャさい」


 ぬ子はすばりに嫌な思いをさせたニャ

 反省して頭を下げると、その頭に大きな手のひらが乗ったニャ? その手は優しく、ぬ子の頭をにゃでてくれたニャ


「気にするな。我は、ぬ子、お前のことは好きだからな!」

「にゃぴっ!?」

「勝つんだろ? ならば、無駄話はここまでだ! 走るぞ、ぬ子! 猫の下克上を成す為に!」


 うわ!? すばりが走り出した!?

 ぬ子は慌てて追いかけるニャ。それにしてもはやいニャ、ぬ子の四足ダッシュフル回転でも追いつけないくらい


 ひとしきり走ると、見晴らしのいい場所に出たみたい。そこで、空に向かって叫ぶすばりの頬に、見てはいけニャい輝きが見えた気がしたニャ


 ぬ子は、そんな彼が、すばりが落ち着くまで、後ろを向いて待ったニャ


 すると、


「ふはははは!」

「ニャ!?」

「見よ! ぬ子よ! 牛と馬を見つけたぞ!」


 すばりが指差す方に視線をやると、確かに前を歩く牛と馬が! 追いついたニャ!

 ぬ子とすばりは坂道を滑るように駆け下りた


 このまま全力で追い抜いちゃうニャ!!


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