第17ニャ【やっぱり大好きニャ〜!】


「す、すばり」


 遅れて追い付いて来たのは、真剣ニャ面持ちのお母ちゃんと、いつも通りのすばりだったニャ。暫くの沈黙を切るようにお母ちゃんが、


「ぬ子、本当に行くのね?」と漏らしたニャ


 その声は少しだけ震えてるニャ。お母ちゃんの目の下が真っ赤に腫れて痛々しいニャ。いつもは怒ってばかりのお母ちゃんだけど、本当は大好きニャ


 でもでも、ぬ子は行くニャン。もう決めたから、すばりと一緒に十二支の頂点に立つって!


 それに、外の世界に行けば、お姉ちゃんにだって会えるかも知れニャいんだ。きっとお姉ちゃん、猫だけに途中で目的を忘れて昼寝してるニャ

 ぬ子が行って起こしてあげニャいと


 だから、ちゃんと言わニャいと、


「ぬ子は行くニャ。ぬ子は知りたいニャ、この世界の事、もっとちゃんと知りたいニャ」


「そう……わかったわ。でも一つ、ぬ子? 一つだけ約束して。絶対に帰って来るって」

「お母ちゃん……も、勿論ニャ! ぬ子は絶対に帰って来るニャ、約束!」

「はぁ、暫くぬ子のお尻を叩けないなんて、淋しいわね。代わりにお父ちゃんのお尻でも叩こうかしら? ぺんぺんって!」


 お母ちゃんは悪戯に笑って見せたニャ。お父ちゃんがかニャり怯んでたけれど、直ぐにお腹をポリポリしてぬ子に向き直ったニャ。そして、



「ぬ子、身体には気を付けて」



 えっ!? 喋ったニャ!? お父ちゃん、


 めちゃくちゃ久しぶりに喋ったニャーーーー!!


 お、お父ちゃん、おにゃかポリポリして可愛いニャ。橙色の全身を覆う毛に白いお腹、口元のお髭がチャーミングなお父ちゃんがぬ子の身体を案じてくれてるニャ。おにゃか掻きニャがら

 ——可愛い過ぎるニャーーッ!!


「お父ちゃんっ、ぬ子、お父ちゃんもお母ちゃんも大好きニャ〜!! さっきはごめんニャさいニャ〜うニャァァ〜」


 ぬ子ダイブ!!

 お父ちゃんのお腹ふかふかだニャ〜!

 お母ちゃんも、ぬ子の頭を撫でてくれるニャ。二人とも本当に大好きニャン!


「くっくっく、ぬ子よ。我は猫神の所へ帰る。今夜は家族水入らずで過ごすがいい」

「えっ、すばり行っちゃうのかニャ!?」

「明日の朝、ここへ迎えに来る。寝過ごすんじゃないぞ?」


 すばりはそう言って町の門を潜っては外に出て行ったニャ


「すばり!!」


「……ん」


「あ、ありがとニャン!」


「ふ、何の事だ?」


 その眼鏡クイクイするのは、多分すばりの癖だニャ。そのまま背を向けて手を振りながら、すばりは雪の中へ消えてったニャ

 ぬ子達はすばりが見えニャくニャるまで見送り、仲良く我が家へ帰ったニャ




 今夜はお父ちゃんとお母ちゃんに挟まれて眠るニャ。久しぶりだニャ〜、仔猫にニャったみたい


 ありがと、すばり——


 すばりがお父ちゃんの説得の為、地面に頭を擦り付けてまでお願いしてくれたおかげだニャ

 その行為の意味はわからニャいけれど、必死さは伝わるニャ。おやすみ、すばり——



 すばりが一人、すばりが二人、すばりが三人、ついでに猫神様も一匹、すば——



 ——



 はっ!! 気が付けば朝が……!


 遂にぬ子は旅立つニャ、お姉ちゃんの意思をついで、神様に会いに行く為に!!

 寒っ、も少しだけ寝ようかニャ、いや駄目ニャ!


 今こそ、あったかいベッドから出る時ニャ!


 とう!


 ぬ子は勢いで飛び起きて着替え、すばりにもらった真っ白ニャマフラーを首に巻いたニャン

 すると、お母ちゃんとお父ちゃんがぬ子を起こしに来てくれたみたい……寂しいけれど、暫くのお別れニャ


「お父ちゃんお母ちゃんっ、ぬ子、頑張って頂点を目指して来るニャ! きっとお姉ちゃんも見つかるニャ! だからっ」

「わかったわ、ぬ子。いってらっしゃい」


 はニャ、くすぐったいニャン。でも、お母ちゃんに頭を撫で撫でしてもらうのは気持ち良いニャ

 お父ちゃんは号泣してるし、逆にぬ子がよしよししてあげるニャン! ニャふ、お父ちゃんかわい〜♪


 さ、すばりが待ってるニャ


「お父ちゃんお母ちゃん、行ってきます!」


 二人はぬ子にお弁当を持たせてくれたニャ。お父ちゃんの青い瞳と、お母ちゃんのピンクの瞳はとても優しく、そして力強くぬ子を見ているニャ

 ぬ子は二人から貰った瞳で、決して忘れニャいようにその姿を焼き付けて、

 ——————遂に、家を出たニャ!


 十二支……他の動物達の代表はどんニャ奴らなのかニャ。どんな奴らでも、猫が勝つ!



 だって、

 ぬ子は二歳! 成猫おとにゃだから!










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